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学歴という名の足枷

とある芸人のドームライブを観に行った。
長年お世話になっているラジオ番組のスペシャルイベントだ。

良いライブだった。内輪ネタたっぷりだったが、ファンにとってはそれが心地良かった。

ずっと応援してきて良かったなと思えるライブだった。


今回のライブに限らず、アーティストなどのライブに行くたびに思うことがある。

ああ、自分はこっち側の人間なんだな」と。

ステージに立つ人はあっち側の世界の住人だ。輝いている。簡単に言うと「Only one」である。
対して、自分はそのステージを見つめる大勢の内の1人に過ぎない。「One of them」だ。

ただ、勘違いしないで欲しい。私はそういったステージに立つ人間を妬んでいるわけではない。

むしろ尊敬している。
大勢の前でステージに立つ人は、芸能界という弱肉強食の世界に飛び込み、勝利した人だからである。



大学の先輩で芸人になった人がいる。
自分で言うのはアレだが、名の知れた大学である。
先輩は働いていた有名広告代理店を3年で辞め、養成所に入り芸人になった。

先輩は3年築き上げた地位とお金を捨てて、お笑いで勝負する世界に飛び込んだ。

到底真似できることではない。

就活で武器にしたであろう学歴、その就活を経て得た職種という地位、その地位で得られるお金。先輩はこの全てを捨てたのだ。

そしてそういうものを捨てたからといって必ず成功できる世界ではない。
陽の目を浴びるまでには多くの逆境があるだろう。
一生経っても陽の目を浴びられない可能性だってある。

ステージの向こうの世界は多くの人が憧れるものだと思う。「自分もあそこに立てたらな」と誰しも一度は考えたことがあるはずだ。誰だってOnly oneになりたい。

けれども、そう簡単になれるものではない。
なりたいと思いつつも、どこかで妥協し、挫折し、みんなOne of themになるのだ。

自分にも才能と勇気あるならば、芸ひとつで勝負する世界に飛び込んでみたかった。ステージの上で観衆の視線を集めることに憧れた。

私は学歴を失うことが怖かった。
中学高校大学大学院と真面目に勉強してきた。
それだけが私の武器である。
なまじ中途半端に学歴を得てしまったばかりに、それを失うのが怖くなってしまった。

先輩はいとも簡単に捨てた。
そしてあっち側の世界に挑んでいった。

その世界が「学歴を失った人たちだけで勝負する世界」ならまだ分かる。けれどもそうではない。
いっさい勉強なんてしてこなかった人たちと同列に扱われて勝負する世界」なのだ。



「なんで勉強をしなくちゃいけないの?」
何度も使い古された質問である。親は避けては通れない道かもしれない。

「大人になった時に色々な選択肢からやりたいことを選べることができるから、勉強はしておいた方がいいよ」
これも使い古された回答だろう。

この回答は間違ってはいない。
医者、宇宙飛行士、警察官などなど。大抵の職業は勉強しないとなれないからだ。

ただ私はこの歳になって感じる。
学歴なんて無い方が怖いもの知らずで、あっち側の世界に飛び込めたのではないだろうか」と。

中途半端な学歴が自分の将来の足枷になっているように感じるのだ。

ここまでの人生で得た学歴を簡単に捨てることができるだろうか。
否。

言い訳だということは自分が一番理解している。
度胸がなかった。
失敗するのが怖かった。
結局安定を求めているだけ。

全て当てはまる。

自分はそういう人間なのだ。

あっち側の世界で勝負する覚悟の無さを誰よりも自認している。ステージに立つ資格は無い。


小さい頃から自然と勉強はできた。
勉強するのは楽しかった。
良い大学に行くことが目的ではなかったが、結果としてそれは達成された。

そして辿り着いた場所が「One of them

社会に大勢いる種類の1人でしかない。

あっち側の世界で活躍している人が眩しい。
みんな輝いている。

お笑いの世界で活躍している人はみんなかっこいい。
文句無しでかっこいい。
これは揺るぎない自分の中での価値観だ。

自分の一生をかけて、芸人になった先輩を応援したいと思う。こっち側から、そのステージを観れる日を楽しみにしています。

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