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【翻訳記事】商品に金を払ってもユーザーは商品にされたまま(後編)

承前


何をタップしたのか、どんなアプリを検索したのか、どんな広告を見たのか、どのアプリをどれだけの時間使用し、どのようにしてそのアプリを見つけ出したのか。iPhoneが収集するデータは異常なほどに細分化されている。

事態はそれにとどまらない。ユーザーとそのデバイスの情報についてもアプリは送信していたのだ。そこに含まれていたのは、IDナンバーやユーザーの電話番号、画面解像度、キーボードの設定言語、インターネットへの接続方法──とりわけ、一般的にデバイスを判別する"指紋"として用いられる情報の類だ。

Appleの嘘を暴くため、研究者はiPhoneを脱獄(訳注:セキュリティを解除し、ストア外の野良アプリをインストールできるようにする処置)しなければならなかった。脱獄を違法化するために、Appleは途方もない労力を費やしてきた。Appleが主張するところでは、ユーザーがスマートフォンのロックを解除してしまうと、欺瞞的で強制力のあるソフトウェアをインストールしようとする悪意ある人物に対してユーザーが無防備になってしまうとのことだ。

この主張は正しいが、Apple製のソフトウェアが欺瞞的で強制的であるかどうか判断できなくなっているのはこのロックのせいであるという主張もまた正しい。第三者からユーザーを守る壁に囲まれた要塞は同時に、要塞を所有する将軍のお慈悲でユーザーが生かされる監獄でもあるのだ。

一定の規模を超えると、企業はユーザーを閉じ込めておけないほど大きくなってしまう。すると、企業はどんな手を使ってもユーザーを金に変えるようになる。もしテクノロジーの未来にGoogleとAppleの戦いが待ち受けると思っているなら、考え直したほうがいい。本当の戦いは、テクノロジーがどのようにユーザーへ働きかけるか決める自由と、テクノロジーに対する企業支配との間で起こるのだ。

AppleとGoogleは、オーウェルの『動物農場』に登場する豚と人間のようなものだ。両者は憎き敵同士であるはずだが、その実、見分けがつかない。Googleもオプション画面に"プライバシー"スイッチを設けているが、何の役にも立たないのだから。

もちろん、Googleの位置情報設定には位置情報をスパイされないようにするチェックマークがたくさんある。そしてそのどれも機能していない。Googleで働くとあるシニアプロダクトマネージャーは、三つの異なる設定で位置情報の共有を切ってもなお追跡されていたと同僚に訴えている。

いまやAppleは、カリフォルニア州のプライバシー侵害法に違反する欺瞞的行為をめぐり、カリフォルニア州の集団訴訟の被告となっている。

Appleには──利己的ではあるものの──ユーザーを監視するにあたって十分な理由があるとGizmodoのトーマス・ジャーメインは書いている。Appleは自社の広告ネットワークを立ち上げており、ユーザーのアクティビティに基づいて顧客を特定する機能を広告主に売りつけているのだ。

企業がユーザーのプライバシーを守るのは、守らないより守ったほうが利益になる場合だけだ。プライバシーに関する約束を潜在顧客にむけて宣伝することで企業は利益を増やすことができる。その約束をこっそりと反故にすることで、その利益をさらに増やすことができる。そして、競合他社の監視をブロックし、同意なく集められた個人情報の唯一のサプライヤーとなるためにプライバシーポリシーを利用することで、よりいっそう利益を増やすことができるのだ。

Googleが"プライバシー保護の強化"をいつも提案し続けるのはこのためだ。この機能によりGoogle Chromeは第三者によるユーザー監視をブロックし、その一方でGoogleはプライバシーを侵害し続けられるようになる。

もし我々が自らのプライバシーを望むなら、(企業によるプライバシー保護の主張を第三者が調査できるようにするための)透明性と、(第三者に尻尾をつかまれた欺瞞的な企業がしかるべき報いを受けるための)規制の両方をも求めるべきだ。

だからこそ、連邦取引委員会FTCがプライバシー侵害を反トラスト法違反として扱う意図を発表したことがとても面白いのだ。

企業がテクノロジーを利用して自らの反道徳行為を隠蔽したり権力を用いてその報いから免れることが可能であるかぎり、"財布と一緒に投票"(訳注:自分が支持する企業の商品を買い、支持しない企業の商品は買わないという消費者行動のこと)はiOSのトラッキング機能のオフと同じくらい無意味だ。

広告料に支えられ、大規模な監視を行わないメディアは数世代にも──数世紀にも──わたって存在し続けている。広告に関して問題なのはインセンティブではなく、罪を免れていることだ。

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