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抗てんかん薬が効かないてんかん発作は、実は自己免疫性かもしれない

はじめに


医療従事者向けの内容です。
てんかんの患者さんの中には、抗てんかん薬が効果をきたさない場合があります。中には自己免疫性脳炎(autoimmune encephalitis: AIE)によるてんかん発作である場合があります。実際、AIEによるてんかん発作を診断することは難しいですが、免疫療法が奏功する可能性があり、診断することは重要です。
自己免疫性脳炎によるてんかん発作の特徴を解析し、score を作成した論文を読みましたので、記載します。

論文


Antibodies contributing to focal epilepsy signs and symptoms score
Ann neurol 2021;89:6980710

要旨


目的

原因不明の焦点性てんかん発作の患者さんにおける自己免疫抗体の測定を行い、自己免疫抗体を測定する必要がある患者さんをあらかじめ選択できるスコアをつくる
方法
前向き多施設コホート研究。自己免疫性脳炎と診断されていない原因不明の焦点性てんかん発作の成人をリクルートした。2014年12月から2017年12月までで、1年間のfollow-upとした。血清と、可能なら髄液も採取して調べた。Autoimmune etiology of seizures (AES)にふさわしい項目で作った新たなACES scoreを作成し評価した。
結果
582人リクルートし、その平均てんかん期間は8年であった。20人(3.4%)がautoimmune etiology of seizures(AES)であった。20人の自己抗体は、anti-LGI1抗体 3人, anti-CASPER2抗体 3人, anti-NMDA抗体 1人, anti-GAD65抗体 13人であった。AES である危険リスクは、
temporalのMRI高信号(odds ratio 255.3, 95%CI : 19.6~3332.2, p<0.0001),
autoimmune diseases (odds ratio13.31, 95%CI : 3.1~56.6, p=0.0005),
behavioral changes (odds ratio 12.3, 95%CI : 3.2~49.9, p=0.0003),
autonomic symptoms (odds ratio 13.3, 95%CI : 3.1~56.6, p=0.0005),
cognitive symptoms (odds ratio 30.6, 95%CI : 2.4~382.7, P=0.009),
speech problems (odds ratio 9.6, 95%CI : 2.0~46.7, p=0.005)
であった。
各々に1ポイントを割り振るACES scoreを作成し、2ポイント以上であれば、感度100%, 特異度84.9%となった。


解釈
特定の徴候があればAESの診断に導くことができる。ACES score 2以上は、抗体測定を必要とする患者さんの選択に有用である。
Limitation
抗体陽性例が少数であった。ほとんどの患者さんで血清で抗体を測定した。


論文を読んでみて


抗体陽性の自己免疫疾患によるてんかん発作では、髄液検査が正常なことも多く、また脳MRIでも内側側頭葉の異常が見つからないことも多いため見過ごされている例も多いのではないかと思いました。特徴を捉えることがいかに重要かと思いました。
この論文では、あらかじめてんかん専門の医師によって自己免疫性てんかんと診断されていない患者をリクルートされています。注意深く振り返ると軽微な性格変化、認知機能低下や不随意運動や低Na血症など自己免疫性の要素がみつかったと記載があり、特徴を捉えることの難しさがわかります。
実際のところは、こういった特殊な自己抗体は保険適応ではなく、病院の持ち出しで数万円払って測定をしている現状ですので、すべての患者さんで測定できるものではないのですが、てんかん発作の患者さんで今回のscoreの項目には特に意識をむけようと思いました。

参考になれば嬉しいです。
ありがとうございました。

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