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茨城県北の協力隊たちの活動現場② 芸術文化のスキルを活かして活動する2人の協力隊

県北地域で活動する隊員たちの様子をお知らせしていくシリーズ。今回は、芸術文化の領域で活動してきた経歴を持ち、そのスキルを活かしながら地域おこし協力隊の活動に取り組む2名の隊員を紹介します。

市からフレイルに関する作曲を頼まれて、楽譜への落とし込みをされている橋本さん。

移住・定住PRを行う協力隊の正体は…プロの民謡歌手!?

常陸太田市の地域おこし協力隊の「移住・定住PR」担当として活動する橋本大輝(はしもと・ひろき)さん。実はもともとプロの民謡歌手として、東京を拠点に活動されていた方なのです。新型コロナウイルス感染症の流行にともない、コンサートなど演奏活動などが以前のようにできなくなり、多くのアーティストが影響を受けました。橋本さんもそのような状況に直面したことと、子育ての環境を考えて奥様の故郷である常陸太田市へ移住されました。
現在は、ラジオ・SNS 等による情報発信活動をするほか、市民の方々との交流の中で、「空き家バンク登録促進」のための情報提供を呼び掛けています。移住当初はなかなかしづらかった演奏活動も、少しずつできるようになり、現在は市内施設や飲食店等での演奏活動も増えてきているそうです。それを通して交流した市民の方から空き家情報をヒアリングするなど、もともとの経歴と現在のお仕事をかけ合わせながら活動されています。

津軽三味線・細棹三味線・民謡太鼓・銭太鼓・胡弓と、数多くの和楽器を演奏する「民謡マルチプレイヤー」の橋本さん。現在でも、全国各地や多数のメディアにて、プロの和楽器奏者・民謡歌手としての活動を継続されています。ぜひチェックしてみてくださいね。
地域から「音楽家だからこそ頼みたい」とお願いされることもあり、先日は市からフレイル(心と体の働きが弱くなってきた状態のこと)に関する作曲を依頼される、ということが。三味線で音を確かめながら、楽譜へ落とし込みをされていました。
ちなみに、最近は、「都々逸(どどいつ)」をはじめられたそうですよ(実は、都々逸は常陸太田市が発祥の地なのです!)。

橋本さんの活動はFacebookでも発信中

箕浦さんが企画した「みんなでお話会」にて。左端が箕浦さん

日常のなかに芸術を。「芸術によるまちづくり」を考える

岡倉天心、横山大観、野口雨情などの芸術家と縁のある北茨城市。そんな北茨城市で今年の5月から活動する唯一の地域おこし協力隊が、箕浦妃紗(みのうら・ひさ)さんです。箕浦さん自身が、高校生から続けているという「演劇」や「舞台表現」といったジャンルを軸に、北茨城市が推進する「芸術によるまちづくり」に向けて何ができるか模索しながら、活動しています。
最近は「北茨城市アートプロジェクト」を始動させ、企画の第一弾として、「みんなでお話会」を実施。会の後半では、毎回テーマを決めて葉っぱ型のカードを書き、それを集めて「芸術の木」をつくるというワークを行いました。初回のテーマは、「やってみたい芸術や今自身がやっている芸術、身近の人がやっている芸術について」でした。

このテーマは、箕浦さんが協力隊の活動を行っていく上での姿勢ともつながっています。それは、自分一人でアートプロジェクトの方向性を決めるのではなく、色々な市民の方と一緒に、「何が地域に必要か/何をすると面白そうか」、を話し合いながら進めていきたいという思いです。
箕浦さんは、役者や衣装の担当として、大学内外で様々な演劇のプロジェクトに関わられたのち、東京から北茨城市へ移住。大学時代、箕浦さんの日常の中には、常に芸術や演劇が中心にありました。そんな箕浦さんは、「日常のなかに演劇は立ちあがる」と言います。つまり、芸術は非日常の特別なものだけではなく、ふとした日常のなかにもある、と感じているのです。それは「お話会」のように、他人と話すことで新しい考えやアイディアが生まれたりすることなのかもしれません。そういった「身近な芸術」の存在を感じられる企画を積み重ねながら、どんなアートプロジェクトがかたちづくられていくのか、楽しみですね。

日々の活動の様子は、Instagramでも発信中

暮らしとともにある「芸術・文化」

「芸術的なものに触れる」というと、どうしても美術館に行くとか、ホールに演劇や伝統芸能を見に行くとか、といったちょっと特別なイメージがあるかもしれません。もちろん、そういった体験もとても豊かな体験になるでしょう。
一方で、橋本さんや箕浦さんのような、芸術文化をライフワークとしている方が、地域の身近なところに暮らしていて、その方と交流し合うということ自体が、自身の視野や世界観を拡げるきっかけになることもあると思います。一人ひとりの人生をちょっと豊かにするような、ささやかでも大事な出来事が起きる芸術。

お2人の活動に、ぜひ今後ともご注目ください。また、イベント等にご興味ありましたらぜひご参加ください!

(執筆:岡野恵未子)