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【脱東京をはばむ迷信】ゴミ出しが面倒

これは必ずしも「迷信」だとは言い切れない話です。
以前の私のような「超都心のマンション生活者」から見れば、ローカルのゴミ出しルールは確かに「面倒」です。
わが家の場合、町内のゴミステーションまで徒歩4分ほどかかるうえ、当日の朝にそこまで持っていかなければならないので、夜型の人だと「面倒くさい」と感じることも多いでしょう。

私の移住先(静岡県沼津市)だと「町内のゴミステーション」と一口に言っても様々なタイプがあり、土地に余裕のある郊外の住宅地だと、このような常設の小屋タイプです。

ゴミ小屋

土地にあまり余裕のない準市街地だと、必要に応じてセッティングして、用が済んだら片づける組み立てタイプが使われます。

組み立てゴミ前

組み立てゴミ後

それより更に土地の余裕のない市街地の場合はカラス除けネットが置かれていて、「ゴミ出しをしたら被せておく」というやり方です。
これはまぁ東京でも同じですね。

ネット

この原稿を書くために昔のことを思い出してみたら、東京で暮らした36年のうちで、私が町内のゴミステーションまで直にゴミを捨てに行ってたのは一番初めの荻窪時代(1983年~1987年)だけなのでした(といっても場所がアパートの隣だったので全然大変じゃなかったんですけどね)。

その次の恵比寿時代(1987年~1993年)は、アパートの共同玄関にどでかいゴミバケツが置かれていて、その中に入れておけば、塩沢とき似の大家さんが収集日に出してくれるのです。
「住人共有の無料洗濯機」があって「共同トイレの掃除はしなくていい」うえに「ゴミ出しもしてくれる」わけですから、今考えると至れり尽くせりの大家さんでしたね(当時はまだ未熟なガキだったので特に感謝もしませんでしたが)。

新宿のマンション暮らし時代(1995年~2019年)では、敷地内の収集場所に出しておけば管理人さんが出してくれたので、やはり自分でゴミステーションへ運ぶことはありませんでした。
一番最後に住んだのは「人種のるつぼ」として知られる大久保駅近くだったんで、ゴミ出しルールはぶっちゃけ「かなり守られてなかった」ですね。
たぶん「ゴミ」の概念そのものが国ごとに違ってるので統率なんかとりようがなく、区の側もそうした事情を承知しててハナからあきらめてたのか細かなルール設定はしてなかったですね。
焼却炉の性能がイイこともあって、他地区ならば「不燃」扱いになるだろうゴミも「可燃」として出すことができてました。

とはいえ、です。
他地区より基準が甘いからといって分別ナシでイイというわけじゃありません。
メチャクチャな出し方をされたゴミを毎回分別して出していた管理人さんホントに大変だったと思います。
特に大久保のマンションは戸数も多く、多種多彩な人間が住んでいた「THE不夜城・新宿!」という感じの物件だったので、尚のことそう思いますね。
私は一応、分別ルールを順守していたつもりでしたが、それでもいくらかはご迷惑をかけていたことでしょう。

そんな生活を経ての現在です。
「そこそこ距離のあるゴミステーションまで回収日の朝に持ち込む」という状況を「億劫」と感じている自分も確かにいることはいます。
でも反面、「人間力をつけるチャンスだな」という思いもあるのです(キレイゴトではなく)。

お世辞にも「コミュニケーション力が高い」とは言えない私ですが、昭和期のアパート時代にはそれなりにご近所づきあいができていました。
隣近所に住んでいる人の顔も見えていたし、共同電話がかかってきたら出て「○○さーん、いますかー?」と取り次いだりもしてたんです。
でも、マンションという石と鉄の箱に引きこもるようになってからはそういう機会もなくなり、隣に誰が何人で住んでいるかも分からないし分かろうとも思わなかった。
マンションの会合にも顔を出さなかったし、近所づきあいなんか御免だとも思ってました。

でも、それはやっぱり「異常な状況」なんだと思います。
「いや、東京ではそれで普通なんだよ」とか言われても。
そう思うようになると、コミュニケーション力、つまり「人間力」失われる一方の日々にものすごく不安が生じてきました。
「ヤバい! このあたりで人生変えて現状に歯止めをかけないと、自分はまともに他人と接することができないコミュ障人間になってしまう!!!!!」
こんな危惧を抱きだしたことも、脱東京を決意させた一因でした。

ちなみに、いま住んでる地域ではゴミ捨て場の管理当番がたまに回ってきますし、ゴミ出しの時には近隣の人たちと顔を合わせて挨拶も交わします。
「友人以外の他人とは極力接触しない」という東京の常識にみじんも疑いを持たなかった頃の私だったら「地獄」と思っていたかもしれませんが、人間力向上トレーニング中の現在は、こうした状況をむしろ「楽しんで」います。
「周囲との関わりを当たり前に持てるようになりつつある自分」のことを「面白がっている」わけですよ。

あ、そうそう。
ローカルのゴミ出しルールの特徴の一つに「自治体指定のゴミ袋を購入して使う」というのがあります。
ゴミ袋の購入料金がつまり「ゴミ処理料金」になるわけですね。
わが家ではこういう袋を買っています。

ゴミ袋

東京23区住まいが長かった私の場合、最初はちょっと抵抗があったんですが、調べてみたら「23区のほうが異例だった」ということが分かりました、
23区はゴミ袋に指定がなく、つまり「回収無料」なわけですが、都内であっても「市」になるとどこも有料なんですよ。
分別もけっこう厳密なようで、ネット検索してみた範囲では福生(ふっさ)市が最も厳しくて、なんと「16分別しないといけない」のだといいます。
ウチのほうは「可燃ゴミ」「プラスチックゴミ」「資源ゴミ」「埋め立てゴミ」4分別なんで、他人事ながら「家の中がゴミ箱だらけになるんじゃないのか?」とちょっと心配になります。

指定袋を使わないといけないということは「レジ袋でゴミ出しできない」わけで、30年以上もそれをやってきた者としては、それにも違和感がありました。
でも、この夏から一部の業種を除いて無料レジ袋の配布が終わりましたので、「ゴミ出しに使わないとレジ袋が溜まって困る」という心配も解消。
レジ袋有料化によって「辞退した際のご褒美ポイント」がポイントカードにつかなくなってしまったのが個人的には悲しいですが、ま、あまりケチ臭いことは言いますまいよ。

ちなみに、こちらでもマンションとか管理体制のカッチリしたアパートとかでは敷地内に住人専用の回収所がありますので、「体調的な理由で遠くまで運べない、早朝に起きられない」というような方の場合は、移住後も集合住宅に住んだ方がいいかもしれません。

集合住宅

それと、他県のことは分かりませんが、静岡県内には古紙(古新聞・古雑誌・段ボールなど)をいつでも出せる資源ゴミ専用の民間ステーションがアチコチにあるんです。
引っ越しで出た大量の空き箱などを私はそういうところに持ち込みました。

紙ステーション

民間ステーションは「紙類のみ」というところもあれば「アルミ缶もOK」「スチール缶もOK」「鍋やフライパンもOK」「ビニール袋などもOK」「ペットボトルもOK」と色々ありますので、「回収日以外だけど大量に出したい」という方にはとても便利です。

資源ゴミ

意外かもしれませんが「ゴミ出しが面倒になったことのメリット」というのもちゃんとあるんですよ。
それは「ゴミ出しの回数と、出すゴミの量が激減した」というもの。
たとえば野菜クズなどはそのまま放置すると「生ゴミ」になってしまいますので、私の場合は天日干しをしてカラカラの「乾燥ゴミ」にします。
こうすると腐る心配がなくなるので頻繁にゴミ出ししなくてよくなります。

あと、使用後にかさばるゴミになると分かっているモノも買わなくなりましたね。
昔は買うか買わないかをただ「安さ」だけで決めてましたが、現在では「使いきった時にどの程度のゴミが出るか」を判断基準にし、後処理が厄介なものはいくらお得でも買わなかったりします。
ガラス瓶入りよりペットボトル入り、ペットボトル入りよりも紙パック入り、という感じですよ。

2018年に亡くなった女優の樹木希林さん「もらい物」というのを極度に嫌がる人だったそうで、そういえばバラエティの番組の街歩きロケ中に立ち寄った店で「これ持ってって」とお土産を出されても「いらない。気持ちだけいただいとく」キッパリ断ってました。
それには「自分の納得した品しか家に入れたくない」「余計なゴミ出しをしたくない」という2つの理由があったそうです。

たとえば手土産にお菓子とかを持ってこられると「包装紙」「ヒモ」「箱」「個包パッケージ」などのゴミが出るわけですが、それをいちいち分別して回収日に出すのが本当にイヤなんだとか。
自分が食べたいお菓子があったら自分で買いに行ってたそうですが、そういう場合でもには入れてもらわず「ティッシュに包んで持ち帰っていた」といいます。
中元歳暮の類も嫌いで、知らずに贈って来た相手には「今回だけいただきますが、もう贈らないで」と釘を刺すのですが、それをジョークだと思われて再度届いたりすると「私をいじめようとしてるのか!?」となっちゃうんだそうです。

この種のエピソードは希林さんの色んな評伝本で読みましたが、昔は「変わった人だなぁ……」と思ってました。
でも、今は「うんうんうん、分かる分かる分かる」という感じですよ。
私も言ってますもん、「かさばるゴミになるようなものは持ってこないで。持ってくるなら持って帰って。ゴミ出しもタダじゃないんだよ」と。
これで何人かとは縁が切れるかもしれませんが、この程度で怒るような相手とはどのみち長続きしないでしょうからまぁいいんですよ。

そんなわけで今回の「ゴミ出しが面倒」は、「迷信だとは言い切れない」けれども「23区を出れば都内だって面倒」であるし、近所付き合い力ゴミの量を減らす力などの「面倒だからこそ身につくスキル」もあるんだよ、という結論に至りました。
「面倒なことするくらいならスキルなんか要らん!」という方にはデタラメなゴミ出しでも容認してくれる都心住まいをオススメしますが、私のような心境に至っている、または至りかけている、あるいは至るかもしれないような方はもう一度コラムを読み返してみてください。
そのうえで「チャレンジしてみようかな」という思いに至ったら、脱東京を前向きに検討してみてください。

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