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劇場版モノノ怪 唐傘 考察など

(2024.08.22作成 追記なし)

『劇場版モノノ怪 唐傘』の考察というか、
ちょっと気になったことまとめ。

映画視聴4回以上、
パンフレット、小説入手済。

画像は公式の配布から。
劇場版、アニメ版、小説、
他ネタバレ含みます。


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【傘】

傘は人が雨に濡れないために使う道具だ。

和歌などで傘を人に差す描写があればその人に情を向けている、など恋愛や情念の比喩ともされているし、
また鳥取では雨乞いと初盆供養を願う『傘踊り』という芸能文化があるという。

傘とは、雨より人を守るもの。
されど、見方を転ずれば、人より雨を奪うものである。誰しも濡れたままで生きることはできないが、潤いなしには枯れてしまう。麦谷も淡島も、唐傘によって飲み干された。畢竟、傘は永久に乾きと結ばれている。

「小説 劇場版モノノ怪 唐傘」より

この作品の「傘」に関してはこの一文が一番わかりやすいかと思う。

他にもアサが妹を傘に見立て、
「多くの傘によって守られていた」と考える描写もあった。


【唐傘お化け】

『唐傘おばけ・唐傘小僧』は
棄てられた古傘が恨みで化け出る付喪神系の妖怪とも、
具体的な逸話のない絵だけの「創作妖怪」の一種であるとも言われている。

怪異のことについて、この動画でなかなか詳しく話していた。
今回のモノノ怪は"捨てられた側"の念も多分に含まれているようで、
捨てたものの痛みであると同時に捨てられたものの悲哀でもあるようだ。
唐傘の付喪神的なニュアンスは普通に採用してよいようす。


【水】

作品のテーマとして
「集団意志と個人意志の解離(合成の誤謬)」が挙げられていたが、
まず大義や集団としての理想には、言いだしっぺが必要である。
全員からそれぞれ染み出した一滴が海になる場合もあるだろうし、
一人の大きな意志に集団が呑まれる場合もあるだろう。
つまりはまず、
誰かひとりの意志・思想・欲が発端だと自分は捉えている。

水飲ませ合うシーンとか露骨に比喩だよね。

渦顔については、アニメのっぺらぼう回『誰を殺した?』と近いニュアンスもあるなと思った。

集団の中で生きるため、誰彼も少なからず自分の何かを蔑ろにしなければならない。
でもそれをやり過ぎると心に大きな穴が開く。
呑まれ、面を喪ってしまう。

余談だが、ゲーム『IB』では顔の無い作品に"無個性"と題付けられていた。
顔を取ることは個性を奪うことなのではないか、と。
それを思い出してて、初見時はいい表現だなと感心していた。


【渇く病】

北山のあれは鬱の時の無気力症状そのままだった。
自分も覚えがあるのだが、四六時中つらさと疲労感を引きずって、何をする気も一切起こらないような時、
確かに『渇く』という表現がしっくりくるのだ。
乾きかけが一番しんどい。たぶん井戸に飛び込むまでいったときは一周回って相当ハイになってると思う。

また、アニメ海坊主回では
モノノ怪の"怪"とは『病』のこと
だと言っている。
ヒトを病のように祟るのがモノノ怪だと。

小説ではラストの戦闘シーンで、
唐傘が"海"の水を吸い上げていた時に
「お前も、渇くのか」と神儀が洩らしていた。
病そのものでありながら、唐傘自身も病に苦しんでいるのか──ともおもったが、
モノノ怪の理は人とは違う。
渇きを奪うという行為の方に執着している可能性も普通にある。
また唐傘が渇きに苦しんでいたとして、
渇きがなければモノノ怪として成り立てないのだから難儀なものである。


【カラー配色:CMYK】

  • CMYKとは主に印刷物で使われるカラーモデルのこと。
    C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)と
    K(キープレート≒黒)の4色
    で色を表現する形式で、絵の具のように混ぜれば暗く、黒に近くなる。

    今作ではその組み合わせが沢山見られたので気になった。

    ●トラロープ
    まずは地下の御堂にあった縄。
    シアン・マゼンタ・イエローにそれぞれブラックが絡まる色合いだ。
    ラストにはマゼンタの縄が切れている。
    これ三部作らしいので、毎回1本ずつ切れたとして3作目はラスボス戦も含むのだろうか?

●ネイルカラー
*M/桃色: 歌山、麦谷、北川、麦谷
 今回の犠牲者枠
*Y/黄色: フキ
*G/緑色: ボタン、御伽草子?
 御伽草子は手先ごと緑……そもそも人間かも不明だ
*塗り無しまたは薄め: アサ、カメ、三郎丸、平基、坂下
 女の子たちは薄い桃色系とも見れる。
*K/黒色: 薬売り、天子
 胡散臭い男達……。
*K?/グレー:溝呂木?、二日月と三日月、北山を襲った怪異モブ女中達
 溝呂木家は同じ色。
 グレーなら黒と同じカテゴリに入れて良さそうだが……。

・初めは陣営や思想、人外か否かでの区分けを考えていたのだが、
こう見るとシンプルに
『この回にメインで登場するキャラ/主要人物』を表しているようにも見える。
例えば、今回切れたロープがマゼンタで、今回の犠牲者も全員ピンク系の爪色だった。
その理屈で言うなら、黒は縄3本全てに絡まっており、つまり3作全てにおいて重要な立ち位置であるという事になるが、キャラクター的にもまぁそうだろうなという感じである。

ちなみにボタンはCMYKから外れた緑系(G)だが、
この中では立ち位置がちょっと違う(RGB)というニュアンスなのか、
それとも残り2作(CとYの混色)両方でメイン扱いされるということなのか…。

*シアン系の爪色は確認できなかった。
もしかしたら次作で出るかもしれないし、爪色を確認できなかった人が役職に就いて爪色が塗られるかもしれない。

そういえば彼女らもC・M・Yだ。
フキは下半分が黄緑、爪色は補色のイエローだけど。

色彩設計の辻田さんは「爪にはキャラクターの心情や情念を反映している」とパンフレットで述べている。
歌山は「若くはないがまだ…」という気持ちが爪の紅に反映されていて、
他にも「大奥という現実の中で戦いながら頑張っている人」は赤系がいいんじゃないかと提案した、とのこと。
薬売りの「黒」基調は原案にあったアイデアらしい。

なら上記の説は完全な妄想かというとそうも言い切れない。

「実は今回、いくつかのグループに分けて、色の傾向を決めていったんです」
「色付きのキャラクターを全員集合させると『ああ、そういうグループになっているのね』と気が付いてもらえるんじゃないかと思います」

映画パンフレットより

と辻田さんが述べていたので、色分けに何かルールがあること自体は間違いではないようだ。


【3という数字】

今作にはいくつも「3」がある。

井戸下の御堂の三つの柱と縄、
唐傘の目、
鳥居三つで囲われた三角、
溝呂木の額の模様、
他三角形モチーフetc…。

また今作の犠牲者は北川含め4人だが、
『モノノ怪 唐傘(≒北川)が取り込んだ』のは麦谷、淡島、歌山の『3名』であるし、
『強力な”乾き”』を持った北川、麦谷、淡島の『3名』を取り込んだことで、唐傘は現世に出る事が可能になったとも見れる。

あの目の『三円』はあの3人の傘なのかもしれない。
もちろん、この『理』自体には数多の女性の情念が積み重なっているようだが、
特にというか、人柱的なニュアンスで。
クライマックスシーンでもあの3人の棄てたものだけ、一瞬のシーンだが強調されていた。



【日本神話モチーフ】

地下祭壇の柱には日本神話の三貴神である3柱、
天照大神、月読尊、素戔嗚尊らしき絵が描かれている。

今回切れた縄はおそらくツクヨミノミコトの柱。
よく見ると柱の絵の方、後光が唐傘の柄に見えなくもないので、
実は絵の中に各話のデザインが盛り込まれているのでは…。と思って見ていたのだけど、どちらにも獣っぽいものは見つけられなかった。

また人形の目が「唐傘化」したのは右目。
関係あるかは分からないが、
イザナギが右目を洗って誕生したのがツクヨミノミコトなのだそうだ。
アマテラス回で左目、スサノオ回で鼻が強調される可能性もちょっとある。

この目にまつわる的確な解釈が思いつかない。


●アマミさん?
またあの胡散臭いパパ司祭、溝呂木北斗の口走った「アマミ」についても調べたがよくわからなかった。
鬼太郎のアニメ5期に「アマミ一族」というのがいたけど、あれ具体的なモデルがあるわけではないからな……。
奄美大島には「阿麻弥姑神話(あまみこしんわ)」という独自の創世神話があるらしいが……恐らく関係はないだろう。
普通に溝呂木と関わりのある一人の女性の名前で、むかし悲劇やエゴによる事件があって……というのがモノノ怪のパターンによくある。


【三種の神器?】

先述の三柱の関わる日本神話といえば
三種の神器(八咫鏡、天叢雲剣、八坂瓊勾玉)を連想するのだが、
そういえば薬売りは一応、『』と『』を所持している。
(鏡 = 帯に付いてる丸い手鏡。アニメ版ではハイパー……神儀の戦闘でも使われていた)

三種の神器/想像図

鏡の模様もどこか似ている……?
疑似的に三種の神器を揃える事で、
なんらか神性を強めている、とか??

だが、『薬売り』が必ず三種の神器らしきモチーフを揃えてる、というわけではなさそうだ。
坤(劇場版)の薬売りは眉のメイクや着物の模様に『勾玉』っぽさも見い出せなくもないのだが、
離(アニメ版)の薬売りには勾玉要素がどうも見当たらないので、面白い案だとは思うが微妙である。

ニコニコDアニメが復活したら離の薬売りに勾玉モチーフないか探して見るつもり。

彼自身が神儀と陰陽になってるという意味では、
『陰陽勾玉巴』の片割れ⇒
勾玉という強引な説も一応展開はできる


【こけし】

●地方や諸説によるらしいが、
縁起物として考えられるらしい。
・「子宝を授かる」縁起物?
 麦谷の部屋の壁絵には鞠の他にキノコや絡む男女の絵のような、愛欲的なモチーフが多い。形状も含め、そういうセクシャルニュアンスのひとつである可能性。平基を気になってるようだったし。
・「健康な成長を願う」縁起物?
 子供の時に大奥入りした麦谷。
 成長に従いどんどん乾き、”心が健康でなくなってきている"と考えると、その"良くない成長"を阻止したい"願い(麦谷自身の心の軋轢)"と捉える事も出来るのか? 
●『子消し』は信憑性の薄い俗説
 その説の中では堕胎や"間引き"など子供への慰霊と言われているらしいが、『捨てられた・不要なもの』という意味合いでは唐傘お化けとの共通点とも取れるやも。

【背景絵とか置物とか】

背景の小ネタが多すぎて拾えない。

●大広間の両側の襖絵は龍虎?

多分腕に鱗があるから龍……牛ではないはず。
ここでは見えないが刀も持っている。

*龍と虎の四字熟語例
・竜驤虎視:威勢のあるものが権勢をふるって世を睥睨するさま
・竜虎相搏:強い者同士が激しく戦うこと

●狐の嫁入り
・北川や歌山の髪飾りが角度によっては狐耳っぽく見えるのは考えすぎか?
・大友が輿入れの事を話した時にやんわり後ろの絵がフォーカスされた
・眼鏡の女中さんらしき狐の絵を見たので、基本は大奥の女性全員を表してると見て良さそうだ。

一つ上の画像の方がわかりやすいかも。


●猿山のボス。

「後継ぎを成せてない」天子と
「大奥で権力を持ちすぎた」歌山、
 両名のボスを指していそうだ。

●異国のアレ
大餅曳当日の背景に
トーテムポール(アメリカ)や
イシス?(エジプト)の像があったのはどういう意図だろう。
トーテムポールには色んな意味があるようで、歓迎のニュアンスを持つタイプもあるというからそれだろうか?

他にもフラミンゴや狸、兎、犬など、動物絵はほんとに多かった。


【ヤマタノオロチ?】

エンディングで井戸下の御堂をずっとぐるぐるしているのは
絶対何か読み取ってほしい要素があるんだと深読みして、毎回目を皿のようにしている。

気になったのは壁の模様だ。
鱗のような模様が何本も伸びている

何本あるかはよく分からない……が、
蛇か龍のようだなと思った。
そこで数にも注目しながら見ていく。

・青いナザールボンジュウのような、矢の的のような『目らしき模様』が
部屋内に8柱、それが上下色違いで二対(16個)ある(オッドアイ? ちなみに大広間の絵も左右目の色が違う)。
 ⇒20240903追記:8柱のうち2柱は上段の円が違う模様だった。この説を推すなら
・水があるエリアの左壁?にも大蛇のような絵がある
・階段のうねうね模様
・蛇や龍は水とも関わりが深い
・御堂を囲う板とかも数えてみたが、64とかではない様子
・(20240903追記:スサノオの絵のあのポーズといえば八岐の大蛇なのだが、逆に柱には蛇らしき姿が無い)

普通に龍神や大蛇の類である可能性もあるが、壁の絵を見てパッと浮かんだのは
ヤマタノオロチ』だ。

もしこれがあっていたら
妖怪作品のラスボス、ヤマタノオロチ使われすぎ問題。
もしかすると『ヤマタノオロチを模倣したナニカ』という立ち位置かもしれないけど。

そんな大物が出て、薬売り一人で対処できるのかは不明だけど、
3作目ラスト大蛇復活からのプリキュアオールスターズの流れだったら爆笑する自信がある。

またストーリー順、
神格から言ってラストがアマテラス柱の縄である可能性を考えていたが、
この説の場合
スサノオ柱ラストからの
ヤマタノオロチ復活⇒討伐!
の流れが元ネタ的にもスムーズか?
火鼠はスサノオの方だと勝手にイメージしていたのだけれど。

●神話の剣と退魔の剣
スサノオとヤマタノオロチといえば、草薙の剣。
そして今作の剣といえば、退魔の剣である。

視聴3回めくらいでやっと理解したのだが、
抜刀した退魔の剣、鍔あたりの文様に触れると剣の形が変わるらしい。

七支刀のような枝分かれの剣、
鎖鎌のような節のあるムチのような形、
あとどこか国宝とかで見た形のやつ(浅学)。
草薙の剣の形もあったかは……よくわからなかったけれど。
離の剣とはちょっと違う、すごく『実物』を意識したような形のフォームだ。

これは真面目に日本神話なぞりがでてくるのでは?と邪推している。

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以上、
ここまで目を通してくれた人はありがとう。

モノノ怪のように、いろいろ隠喩を忍ばせてくれている作品は考察してて楽しい。
ただ難しいこと考えなくとも、ただアートに圧倒されてるだけでも十分満足感はある作品だ。

またなにか考えたら追記するかも。

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