【読書メモ】ファンベース

ファンベース
人口急減やウルトラ高齢化、超成熟市場、情報過多などで、新規顧客獲得がどんどん困難になっているこの時代。生活者の消費行動を促すためには「ファンベース」が絶対に必要だ。それは、ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上や価値を上げていく考え方であり、その重要性と効果的な運用の方法を、豊富なデータや事例を挙げて具体的に紹介する。


【第1・2章】ファンベースとは?なぜ大事?

情報過多・エンタメ過多・商品過多の現代、「バズる」広告のような短期施策も重要だが、一過性で終わってしまいがち。そこで獲得した認知をいかに継続させるか。興味を持ってくれた人の「価値に対する好意」を資産化して積み上げていく(=ファンになりロイヤリティを高めてもらう)ことが重要


【第3章】”ファン”の支持を強くする~共感・愛着・信頼~

・ファンは少ない。全体の20%以下
・そのファンが売上の80%を支えている
・あらゆる人に好かれるように、色々な施策を打つとファンは離れる

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▼共感を強くする
◎ファンの言葉を傾聴する。ファンはサービスのどこを愛してくれているのか。
◇ファンミーティング
・ユーザーの20%である「ファン」に来てもらうことが重要
 ーファンになりきっていない人が興味本位で来てしまうと偏愛と発見が起こらない
 ー会場まで自腹で来てもらうことも大事
・企業側の挨拶は役職が高い人であるほど、ファンは「大事にされている」と感じる
・司会もプロではなく社員の中でも特にサービス愛が強い人に任せる
 →進行が多少下手でも、偏愛っぷりが伝わり等身大の「人」が見えた方が共感を得やすい

・継続的に行うことが大事
 ーファンミーティングはインタビュー調査ではない。ファンという支持母体と一緒に価値を上げていくことを意識する。
 ー定期的に行うことで自分たちが時代からズレていっていないか、価値観がブレていっていないかを確認することもできる。

・開催後はファンの声を元に、サービス改善をすぐに実行する
・自社サイトの改善も重要
 ーファンが求める内容が載っているか
 ーファンが楽しめる場所を用意しているか
・参加したファンのSNSの発言を追う

◎ファンであることに自信を持ってもらう・ファンは自信がない
 ーこの商品が好きな自分はイケているのか?笑われないか?
 ー友達に薦めても大丈夫か?
 ↓↓
・他のファンの声や有識者へのインタビューを
「アクセスしやすく」「共感しやすく」「シェアしやすい」コンテンツとして用意する

・メディアで取り上げられ、それがバズることも自信につながる
 ー消費者が「バズり」 に慣れている今の時代、それは新規獲得には繋がりにくい
 ーむしろファンに「ファンであることに自信を持ってもらうためのもの」として捉えるべき

◎ファンを新規顧客より大切にする
・ファンが喜ぶポイントを増やす。それはサービス改善かもしれないし、イベント開催かもしれない。大事なのは傾聴して得たファンの言葉を出発点にすること。

・新規顧客にリーチする発想から脱却する。
・「ファンを囲い込む」という施策は嫌われる
・顔の見えない新規顧客とは違い、ファンを相手にすることは顔が見えるもの同士の「人間の付き合い」

[事例]マツダは新車発表をファンミーティングで行った

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▼愛着を強くする
◎商品やサービスに物語を纏わせる
・生活者の課題を解決するためにどれほど想いをかけたのか。そこにどれほどの人や時間をかけたのか。実現に向けてどれほど努力したのか。
・それらが見えたときに愛着が生まれる
・それらをコンテンツとしてとらえ、さらにアクセスしやすくしておくことが大事
・壮大な感動秘話である必要はない。ちょっとしたことでいい。重要なのはその物語の裏に「人」を感じさせること

◎ファンとの接点を大切にする
・店頭接客、サポート窓口、クレーム対応、レビュー、SNSなどファンやユーザーと触れる機会の1つ1つを大切にし、誠実に対応する。
・SNSはファンに愛着を持ってもらうために超重要。単なる企業からのお知らせアカウントではいけない。
 ー商店街の八百屋のおじさんが毎日「奥さん、今日もいい天気だね!」と声をかけるようなことをオンラインでやる
 ー距離感を理解した上でファンと接し、他に代えがたい愛着を持ってもらう

・ファンは常にその誠実さを見ている。不誠実や手抜きは見抜かれる。常に改善を繰り返す。
・参考:顧客に愛される、カルビーのクレーム対応
 ークレームに対する受け答え、すぐに現物を回収できる仕組みから見える誠実さ
 ーデイリーでのVoCの共有
 ー発信だけでなく他部門からのフィードバックもあり、全社がお客様の言動に関心をもっている文化
 ー社内で上がった表見訪問の提案に対し、すぐに実行できる体制
 ー他エリアからの訪問依頼に快諾する顧客優先の姿勢、商品への愛情

◎ファンが参加できる場を作り、活性化する
・ファンは商品そのものではなく、商品が生み出している「価値」を支持している
 →ファンコミュニティは、プロダクトではなく価値を基軸に作る

商品はファンには売るな!?AWSマーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術
 ーファンコミュニティで稼ぐな。コミュニティにいるファンを喜ばせろ
→その喜びが外に染み出し、新たなファン候補を連れてきてくれる
 ーコミュニティが「炎上」を抑えてくれる。障害ではない場合にコミュニティのファンが「違う」と言ってくれる
 ーたくさんの多様なフィードバックがすぐに集まる

・だからといってファンコミュニティを「とりあえず作ればいい」というものではない。まずファンの声を傾聴すること。
 ー活性化施策が機能するのは、ファンが企業や商品に夢中になっている(またはその可能性がある)ときだけ
→コピー用紙などユーザーが特段こだわりをもっているわけではない商品を取り扱っている場合には有効ではない
→ビジネスは順調だが不満を持っているユーザーが相当数いる場合も有効ではない。その状態で活性化施策を打つとやぶへびになる

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▼信頼を強くする
◎それは誠実なやり方か自問自答する
・顧客接点を増やすことは大事だが、どのくらいの頻度・距離感が適切であるか見極めなければならない。
・多けりゃいいというものではなく、あまりに多すぎると反感や怒りすら感じさせてしまい逆効果。
・信頼を強くするためにはまず前提として「信頼されない要素」「反感を持たれる要素」「怒りすら感じさせる要素」をなくしていくこと
 →しつこいリターゲティング広告や毎日のメルマガなど、「認知度を上げる有効施策」かもしれないが企業側の都合
 →短期的な売上施策として有効であったとしても、ファンにはなり得ない
 →ファンを作れない(=中長期の売上に影響を与える)短期施策は得策とはいえない

・失敗や不祥事も表に出しておく
 →知らなかった人にも教えることになるが、大事にすべきは「ファン」
 →顧客の残りの80%はたいして関心もないし、知ったところですぐ忘れる
 →ファンはその過去を知った上で支持してくれている。過去の過ちを隠すのは信頼を失う要素であり、不誠実。

◎開発過程を見せる
・商品力の根拠となる研究や製造工程を見てもらい「間違いない」「ちゃんとしている」と信頼を強化してもらう

◎社員の信頼を強化し「最強のファン」にする
・外側だけ取り繕っても、いずれ漏れる。バレる。
・社員が自ら商品を愛し宣伝したくなるような文化をつくる
 →社内でビジョンやミッションについてのワークショップやグループディスカッションを行う

【第4章】ファンの支持をアップグレードする〜熱狂・無二・応援〜

◎この章のテーマ:コアファンをどう作り、どう大切にすれば、LTVが上がるのか
 ー第3章の「共感・愛着・信頼」からさらに「熱狂・無二・応援」される存在になること
 ーただし、まずは「共感・愛着・信頼」を獲得することが大前提

◎コアファンとは
・コアファンは全体の4%ほど
・「自己中心的な偏愛の人」ではなく「企業が提供したい価値や方向性を理解した上で偏愛の人」をコアファンと定義すべき
・コアファンとの関係性は「対等」
 ーコアファンとは大切にしている価値を共有し分かち合う仲間であり身内である。必要以上にへりくだらない
 ー特別扱いを要求する人は、コアファンはおろかファンでもなく、むしろクレーマーである

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▼熱狂される存在になる(共感を強化する)
◎大切にしている価値をより前面に打ち出す
・企業としてミッションをより前に繰り返し発信する
・経営者からの社会的発信やメディアへの露出

◎コアファンを身内として扱い、共に価値を上げていく
コアファンとの最初の関係性設定が肝。誤るとクレーマーになる。
「身内として役に立ちたい」「仲間として一緒に何かしたい」と思ってもらう
 →ネスカフェアンバサダーやAKB商法が好事例

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▼無二の存在になる(愛着を強化する)
◎忘れられない体験や感動を作る
・ファンイベント
 ー色々なプログラムやサプライズゲストでもてなし、最高の体験を提供するが、参加者との関係はあくまで「対等」。企業側も一緒に楽しむ。
 ーファンのロイヤリティや愛着といった、支持してくれる源泉のようなものが芽生え、色々な人に広めていってくれることにつながる
 ーお客さんが喜んでさえすれば、後からしっかり売り上げがついてくる

・ファンイベント事例
<広島東洋カープ>関東のカープファンを広島に招いた
<ネスカフェ>アンバサダー・キャンプ
<よなよなエール>超宴
ファンの熱狂は、社員の熱狂から!ヤッホーブルーイングの、「どん底」からの組織づくり

・ファンイベントは一例。クレームを真摯に対応することで「忘れられない体験」となり、コアファンになることもある。

◎”コアファン”と共創(一緒に商品開発)する
・参加者を一般公募するのはNG。参加できるハードルを設け、より熱狂的なコアファンだけに絞る。
・企業が大切にしている価値を理解している”コアファン”は、それに沿って真摯に協力してくれる

・共創事例
<マツダ>世界から熱狂的ファン5人を選びアテンザを開発
<カルビー>「じゃがり校」でフレーバーを開発
<スノーピーク>社長自らコアファンとキャンプを行い、商品が実際に使われる現場を肌で感じ、商品開発に還元

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▼応援される存在になる(信頼を強化する)
◎「人間」をもっと見せる
・人が応援するのは、モノでもコトでもなく「人」
・等身大の姿を発信し「こういう人が働いてるんだ」と感じてもらうことが応援する気持ちを強める
・有名社員を作ることも重要

◎ソーシャルグッド(社会のためになること)を追求する
・ファンはもっとわかりやすく、おおっぴらに応援したいと思っている
・応援しやすい要素を増やし、シェアしやすくする
 ーCSR / CSV / フェアトレード / SDGs など
・謙虚になりすぎず、きちんとアピールする
 ーファンが応援しやすくなる
 ー企業の社会貢献はファンが支払ったお金で行われる。アピールすることは厚かましいどころか、ファンのためにアピールする義務すらある

・でんかのヤマグチ
 ー地域の顧客宅に訪問し、家電製品に関係のない頼まれごとも全て無料で引き受ける
 ー結果、大手量販店の2倍近くに価格を設定してもヤマグチで買ってくれる
 ー100人のお客より1人の熱烈なファン

【第5章】ファンベース施策

▼中長期施策
価値を大事にしてくれるコアファンを作り、傾聴して改善しながら共感や信頼をじわじわと強化していく
・すでにそれなりにファンがいる場合
・キャンペーンなどの短期施策の予算がない場合
・地域密着型などの小規模な企業

〈参考事例〉スターバックス、スノーピーク、ザッポス、徳島県神山町

▼短期施策
・まだ無名の商品や創業間もないベンチャーは、キャンペーンやマス広告などの短期施策で認知を獲得し、その中の一部の人にファンの入り口に立ってもらう

・テレビCMなどで、話題になったとしてもタレント力で売れているだけの場合もある。タレント力で売れている間に、いかに「サービスのファン」になってもらえるかが重要

▼中長期施策×短期施策
ファンの入り口に立った人達が離脱しないように「受け皿」を用意し、中長期施策に繋げていく
 →アクセスできるサイトやイベント、ツールなど。
 →オンラインの施策に頼りすぎない

〈参考事例〉ネスカフェアンバサダー

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▼効果測定
NPSと熱狂度を組み合わせる。
NPSの推奨者の中で熱狂度で4または5をつけたファンと熱狂度3以下のファンとの間では、年間購入金額や推奨経験値に大きな差が生まれる

◎NPS(ネットプロモータースコア)
・「この商品を友人に薦める可能性はどれぐらいありますか?」を11段階でアンケート
 →スコア=推奨者(9〜10)の割合ー批判者(0〜6)の割合

・フリーコメント欄を設けることで、定性的なデータもとれる

・ファンベース施策の観点では、NPSのスコア自体は重要ではない。ユーザーの内、一部の「ファン」のための施策なのだから、批判者の割合や声ではなく推奨者の声に耳を傾けた方がいい。

◎熱狂度(トライバルメディアハウス社)
「あなたにとってこの商品はどのような存在感ですか?」を5段階でアンケート

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