「最強戦の魔物」から伝わる瀬戸熊さんと人気雀士の矜持と情熱

　「卓上の暴君」と人気雀士の矜持と情熱が伝わる素晴らしい一冊です。

　麻雀最強戦2024がいよいよあす、2024年３月17日(日)の女流新スター決戦を皮切りに始まります。

　麻雀ファンの皆さんに、必ず読んでもらいたいのが、竹書房発行の「最強戦の魔物」です。

　最強戦を連覇したTEAM雷電・瀬戸熊直樹さんはもちろん、瀬戸熊さんと深い縁のある10人の人気プロが、麻雀にどのような姿勢で臨み、力を注いできたのか、熱い思いを語っています。

　それぞれの話を通じて、30年超の歴史を誇る最強戦や麻雀界のさまざまなエピソードもふんだんに盛り込まれています。

　何度読んでも魅了されます。すでに購読された方も今季の最強戦に合わせ、ぜひ、もう一度ご覧になってほしいです。

☆どこから読んでも楽しめる

　最強戦の魔物は異色の作品です。

　近代麻雀戦術シリーズの一冊ですが、瀬戸熊さんの最強戦連覇について牌譜で振り返り、打牌などを解説した戦術書ではありません。

　最強戦で印象的な闘牌を繰り広げ、瀬戸熊さんとかかわりのある10人のプロに、ライターの木村由佳さんがインタビュー。

　10人の話をそれぞれ分け、まず、木村さんがまとめた文章を載せています。次に、それに対する瀬戸熊さんの思いを紹介しています。

　瀬戸熊さんについて語ったのは、掲載順に長村大、井出洋介、宮内こずえ、一瀬由梨、多井隆晴、伊藤優孝、内田みこ、岡崎涼太、前原雄大、黒沢咲の各プロです。

　掲載順ではなく、応援しているプロを先にするなど、どこから読んでも楽しめる構成になっています。

☆聞き手・木村さんの引き出す力に感心

　10人のプロは瀬戸熊さんの打ち筋や人柄だけではなく、麻雀に関する自身の考えをざっくばらんに述べています。

　瀬戸熊さんを一流プロに導いた日本プロ麻雀連盟の優孝さん、タイトル戦で厚い壁となって立ちはだかった前原さんの言葉は、含蓄に富んでいて引きつけられました。

　瀬戸熊さんの盟友の多井さん、チームメイトの黒沢さんの話には、瀬戸熊さんとの深いつながりと信頼関係をひしひしと感じました。

　それぞれのインタビューが興味深い内容になったのは、聞き手を務め、分かりやすく文章としてまとめた木村さんの言葉を引き出す力にあったと思います。

　10人それぞれが、楽しく本音で話している姿を想像できました。

　相手の懐にしっかりと入りこみ、麻雀ファンの知りたいことを話してもらった木村さんに感心させられました。

☆瀬戸熊さんの深い麻雀愛

　そして、最も魅せられたのは木村さんのまとめたインタビューに対する瀬戸熊さんのそれぞれのプロに対する思いです。

　レジェンド・井出さんへの尊敬の念、デジタル雀士の先駆けとして知られる長村さんへの対抗心は面白かったです。

　瀬戸熊さんの奇跡の倍満で最強位の座にあとわずかで届かなかった宮内さんの攻めの麻雀について、高く評価していることがよく分かりました。

　最強戦で瀬戸熊さんを苦しめた若手の岡崎さんへの期待にも、うなずくものがありました。

　そして、女流プロ同期の一瀬さんと内田さんの打ち筋について、先輩女流プロをたとえにした対比についても「なるほど」と思いました。

　10人の人気プロへの一つ一つの言葉から、瀬戸熊さんの深い麻雀愛を感じます。

　また、この本を通して瀬戸熊さんが若手からベテランまで、多くのプロから慕われ、信頼されていることをあらためて強く実感しました。

　麻雀ファンを大切にする瀬戸熊さんの真摯な姿勢もよく分かりました。

　「麻雀最強戦 the movie」の上映など最強戦がここ２年盛り上がったのは、連覇した瀬戸熊さんの存在が大きかったです。

　瀬戸熊さんは昨年末、惜しくも最強位３連覇を逃しています。

　今年はぜひ、前人未踏の３回目の最強位獲得を成し遂げてほしいです。