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『サンマルクに巣食う吉良吉影』 2023年4月13日


『デニブラン チョコバナナ(税込み490円)』
これを選んだということはまた私は敗けたことになる、サンマルクに巣食う吉良吉影に。

ドア前には期間限定の『いちごみるく』や『シン・仮面ライダーコラボ』メニューが書かれている小綺麗な看板。今日こそはと、揺らぐことのないケツイを胸に、コナンのCM明けレベルの勢いでドアを開けて入店。
しかし、いつも結果は変わらない。

結局私はまた『デニブラン チョコバナナ(税込み490円)』を選ぶ。過去の私にメールを送ろうと変わらない。千回繰り返しても千回『¥490』と印字されたレシートを握りしめるだろうと断言できる。
そう、私はサンマルクに潜む吉良吉影に勝てたことがない、一度足りとも。


ほぼデニブラン

ケツイを固めた私の眼前にレジが近づくほど、レジ横ガラスケース内に潜むサンプルのデニブランはシアーハートアタックのように着実に私に近づいてくる。
そしてゼロ距離。無限にも思える逡巡の後に「ソレ」を告げると、店員さんは「てめー今確かに、『デニブラン チョコバナナ』っつったよな~!!」と満面の笑みでデニブランを手渡してくれる。そうなると私ももう「うっ…うぐ…!?」と笑顔で受け取らざるを得ない。
そう、近づけば必然、爆発するのだ。シアーハートアタックに弱点はない。

そして毎回、慰めに今の私の状況とは対極に位置する歌詞の『戦う男』を聴きながらデニブランを口に運ぶ。味はこれでもかという程に絶品。
しかし、政治を重んじる中国詩人が『美しいだけ』の四六駢儷体を完全に好きになり切れなかった(諸説あります)のと同様、ただ『おいしい』だけで心はがらんどうである。
何故なら敗けたから。

「あまりおいしくなかったらどうしよう」、「失敗するくらいならいつもので良くね?」
失敗して心に荒波を立てたくない、常に植物のような心でいたい。されど、毎回挑戦する気概を消しきれない。そんな、吉良吉影のような呪いを抱えている。結局どちみち荒波立つんだから挑戦すりゃあいいのに。

この悩みを寄越す吉良吉影がサンマルクに巣食っているのか私に巣食っているのかは定かではない。ただドトール、タリーズでは何故か迷わず注文できる。
「何なんすかね、これ、プロデューサーさんは何だと思います?」


そんなことをぼーっと考えていたら、アイスクリームが半分溶けてしまった。溶けてもアイスが染み込んでウマいんだこれが。

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