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【ネット歯科大】歯周病菌は酸素がキライ

 ヒトが生きていく上で欠かせないもののひとつが、酸素です。呼吸で酸素を取り込まないと、生きていかれません。
 
 このように生き物は酸素が必要であることが多いのですが、歯周病菌はそうではありません。
 
 口の中にはさまざまな菌が生息しています。500種類とも1000種類ともいわれ、菌同士でバランスを取りながら生きています。遺伝子解析技術の進歩によって、これまで知られていなかった菌の存在が明らかになっています。
 
 口の中のすべての菌種が歯周病に対して悪さをするわけではありません。
 
 歯の二大疾患はむし歯と歯周病で、いずれも細菌が原因です。しかし、むし歯菌と歯周病菌は明確に異なります。
 
つまり、口の中の菌のうち、歯周病を悪化させるものとそうでないものがあるのです。
 
 歯周病菌の特徴のひとつとして、基本的に酸素がキライであるということが挙げられます。
 
 歯周病菌といっても多くの種類が含まれるため一言でまとめられるわけではありませんが、特に影響が大きいとされる歯周病菌の多くは酸素が苦手な嫌気性菌(けんきせいきん)に区分されます。
 
 たとえば、歯周病の主要な原因菌とされるジンジバリス菌は、偏性嫌気性といって、酸素のある環境では生育できません。実験でその菌を増やす場合、あえて酸素を除去することが必要です。
 
 この菌は、糖を栄養として利用できず、タンパク質を分解することで栄養源としています。糖を栄養源とするむし歯菌とは、こういったところでも異なる特徴を持っています。
 
 歯周病では歯周ポケットが形成され、歯周ポケットが深くなるほど歯周病が進行しているといえます。
 
 深い歯周ポケットの奥の方には、酸素が行き届きません。つまり、歯周ポケットの内部はジンジバリス菌など歯周病菌にとって生息しやすいエリアとなっているのです。
 
 なお、歯周病菌の中にも、酸素があっても生息できる菌もあります。
 
 歯周病によって歯ぐきが腫れると、歯周ポケットが深くなります。歯周病菌にとってさらに居心地のいい空間を形成することとなってしまうのです。
 
 このように細菌の観点から見ても、治療によって歯周ポケットを浅くすることで、歯周病菌がすみにくい口腔を維持することが重要だといえます。
 
神奈川歯科大学 青山典生


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