「こうふく あかの」

西加奈子著の小説。

あらすじ↓

ふたつの物語が、交互に描かれていく。ひとつは、結婚して十二年、三十九歳の調査会社中間管理職の「俺」の妻が、ある日、他の男の子を宿す話。もうひとつは、二〇三五年、小さなプロレス団体に所属する無敵の王者、アムンゼン・スコットの闘いの物語。

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「俺」こと神保は徹底した八方美人です。自分がどう評価されるかだけを考えて生きています。何でもそつなくこなす理想の上司の奥底には屈折した価値観が眠っています。

妻が寝取られたことで神保の歪んだ女性観が爆発するのですが、その中でも個人的パワーフレーズをまとめました。

詫びろ、でも、同情するな。後悔しろ、でも、同情するな。

「こうふく あかの」西加奈子

奴はいつまでも、奴のままだった。「俺のどこが悪いの?」と悪びれるのでも無い。「お前なんかに興味がない」と嘯くのでも無い。兎島は、いつだって、駄目で、どうしようもなく、何の取り得もない、ただの兎島であった。

「こうふく あかの」西加奈子

男の陰茎は、今自分がどう思っているかが大変に分かりやすく、つるりとしていて、可愛げがある。女のそれはどうだ。いつもじめじめとしていて、嫌な匂いを発し、何を考えているのかわからない。自分はさも大層なもののように鎮座しているが、言ってしまえば、ただの穴ではないか。

「こうふく あかの」西加奈子

俺はインドやそこいらに「自分」を探しに行く奴らを、心の底から嫌悪している。死ねばいいとさえ思っている。日本に無い「自分」が、海外にあるわけもない。

「こうふく あかの」西加奈子

男のセンチメンタルを笑い、膣の思うことに従って、笑いながら、泣きながら、求めながら、受け入れながら、あきらめながら、焦がれながら、生きている。

「こうふく あかの」西加奈子

妻の出産に立ち会った男が、妻とセックスが出来なくなる気持ちが、分かる。こいつはもう、自分のものでは無い。俺の理解をはるかに超えたところにいる。

「こうふく あかの」西加奈子

俺たちは、いつも戦っている。「普通」であろうが、戦っている。戦いたいと願っている。女には分かるまい。女には分かるまい。

「こうふく あかの」西加奈子


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