健康診断とトマトスープと何か。
僕は今、
健康診断を目前にしている。
どのくらい目前にしているかというと、
それはそれは目前で、
少し耳をすませば、
健康診断の寝息が聞こえそうなくらいに。
少し鼻をきかせれば、
健康診断の汗の匂いが嗅げるくらいに。
その健康診断の汗の匂いで、
ご飯が5、6杯は優にいけそうなくらいに。
僕はポケットに入れて持ち歩いていたご飯を、
健康診断の会場で炊いてみた。
多くの看護師たちは慌てて僕の周りへ駆け寄り、
お椀を片手に、「私にも!」と声を揃えていった。
まるで、ソプラノ歌手たちが集まっているのかというような具合に。
ただ、看護師全員に配れるほどご飯に余裕がなかったので、
ご飯を食べられる看護師を選ぶことにした。
そこで僕は、お椀を持っている看護師にエントリーシートを提出してもらうことにした。
お椀は持ったままで。
そうこうしているうちに、
さっきまで目前だった健康診断は、
音も立てずに、
もっと目前に来ていた。
僕は慌ててバナナの皮を食べるふりをした。
そんな僕をみていた健康診断は、
バナナの皮は食べられるものなんだ!と思い込み、
1週間分のバナナの皮を一気に平らげた。
止まることなく。
健康診断は、カッパになった。
カッパになったのだ。
お皿の上にバナナの皮を乗せていた気がするカッパになったのだ。
僕は、そんな様子を横目に、
血液検査を受けた。
採血された。
採血したおじさん医師は、
僕の血を見て、
「トマトスープにしたら美味しそうだね」
と呟いた。
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