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プレーの意図を、分かりやすく。タケゴラが奨める戦術視点の面白さ。【鹿島アントラーズ】

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Jリーグサポーターの中には『戦術ブロガー』と呼ばれる方々が存在する。その役割は応援するチームの試合を分析し、記事を書いて発信すること。分析にはサッカーに関する専門知識が欠かせないこともあり、戦術ブロガーの記事を読んでチームの現在地を確認するサポーターも少なくない。今回は鹿島アントラーズを応援・分析するタケゴラさんに、ブログ解説の経緯と戦術目線を身につけるメリットを聞いた。

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【プロフィール】タケゴラ。鹿島アントラーズサポーター。2000年より応援をはじめ、2013年にブログを開設。2018年よりnoteで記事を発信している。プレビュー・レビューに限らず、選手紹介、写真撮影、マスコット、スタグルなど幅広く発信。2020年より『ANTLOVERS』に参画。『タケゴラ』は本名+エル・ゴラッソの造語。Twitterアカウントはこちら。 noteはこちら。


書き手としての萌芽。


取材班:本日はよろしくお願いいたします。戦術ブロガーのバックグラウンドってあまり明かされていない気がしていて、まずはそこに興味があります!タケゴラさんはいつから鹿島アントラーズを応援しているんですか?

タケゴラ:初めて見に行ったのは2000年の開幕戦です。当時僕は6歳で東京に住んでいたのですが、親が茨城出身だったのもあって、泣きながら国立競技場に連れてかれた記憶があります(笑)。

取材班:今のハマり具合からは想像がつかないですね(笑)。

タケゴラ:多分ハマったのは、その頃からサッカーを始めたのと、あとは単純にアントラーズが強かったからだと思います。

一番印象的なのは、2001年のチャンピオンシップで小笠原選手が決めたフリーキックです。それで小笠原選手を好きになって、4年後にはユニフォームを買ってもらいました。



取材班:でも東京からだと、なかなか現地に行くのは厳しそうですね。

タケゴラ:圧倒的にテレビ派でした。大学生になってからスタジアム観戦が増えて、おととしは国内は全試合見に行きました。ただ結構大変だったので、昨年からは現地とDAZN半々くらいで見てます。

取材班:少年時代から、"タケゴラ"的な側面はあったんですか?

タケゴラ:僕、小学生の頃から選手名鑑を図鑑並みに読んでたんですよ。手前味噌ながら、選手の知識はムダに持ってました。中学校に上がって、プロになりたいとかワールドカップ出たいとか、自分の実力では無理だと気づき始めたときに、コーチから「そっち(試合を見る)の目はすごいね」って褒めてもらえたんです。

戦術のことは全く知らなかったですけど、サッカーを見るのがすごい好きで。多少なりともそういう部分はあったかなと思います。


勝てない理由を知りたかった。


取材班:タケゴラさんがブログを開設したのは2013年。私の記憶では『戦術ブロガー』ってまだそこまで多くなかった気がするのですが、何がキッカケだったのでしょうか?

タケゴラ:確かに今よりは少なかったですが、それでも一定数はいました。ちょうど僕がネットを使うようになって「戦術的な視点からブログを書く文化・やり方があるんだ!」と知って興味を持ちました。

あと大きかったのが、その頃アントラーズが勝てなくなっていたんです。僕が小さい頃はとにかく強かったのに、なぜ勝てなくなったんだろう?と疑問に思っていて、その理由を見つけたいなと。

取材班:そう思っても、ピッチで起きている事象を理解できるようになるのって大変じゃないですか?

タケゴラ:僕は完全に独学なので参考にしない方がいいと思いますが(笑)、他の人のブログを見て、「こういうところ見てるのか!」って気づいて、試合を見て、「あ~なるほどそういうことか」って徐々に理解していきました。戦術用語とかも徐々に覚えていって、それを自分のブログに反映させる繰り返しですね。今も決して高いとは思っていないですが、当初のレベルはかなり低かったと思います。

取材班:1本の記事にどのくらい時間をかけているんですか?

タケゴラ:スタジアムで見る場合とDAZNで見る場合で違いますね。スタジアムに行くときは、DAZNで1回見直して書いています。本当は2、3回見直した方がいいんですけど、時間に限りがあるので、頑張って1回で見切ってしまおうと。試合を見たあとは2時間くらいかけて記事を書いています。

取材班:構成を考えるのも含めて2時間ですか!?

タケゴラ:構成は試合中に考えています。「大事なトピックスはなんだろう?」と思いながら見ているので、書くときにはあらかじめイメージが描けていて、それに従って書いていく感じです。こんな展開だからこんな感じで書こう。と頭の片隅で考えながら見ています。



取材班:タケゴラさんの記事って誰が読んでも分かるというか、かなり咀嚼して書いているのかなと思ったんですけど、そんな狙いはあったりしますか?

タケゴラ:それはおっしゃる通りと言いますか。僕が書いている文章って、アントラーズ好き以外に読んでもらえないのは仕方ないと思ってるんです。でもアントラーズファンへのハードルは作りたくないと常々思っています。

20年以上応援している人にも、今年からファンになった人にも見てもらいたい。なかなか難しいとは思うんですけど、そこにチャレンジしたいとずっと思っていて、そのために僕ができる努力は惜しみたくないです。

取材班:あとはTwitterも含め、選手の写真やグルメなどを取り上げているのも特徴的ですよね。戦術的な視点に限らず、鹿島アントラーズへの愛がすごく伝わってきます。

タケゴラ:それは特に意識してるわけじゃないですが、僕はオンザピッチとオフザピッチの両面で、サッカー・Jリーグが好きなので、そこを外す理由はないなと思っています。決してウケると思ってやってるんじゃなくて、「好きなことを好きと言って何が悪い!」みたいなテンションで発信しています。

取材班:タケゴラさんは、アントラーズに関することを知り尽くしているスーパーマンみたいなイメージがあります(笑)。

タケゴラ:取材ってこんなに持ち上げてもらえるんですか?(笑)。

でも、「色んなものを失う可能性があるからやめた方がいいよ」とはすごく思いますよ。世の中には、もっと大事なことがある気がするので(笑)。


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戦術視点はマストじゃない。


取材班:戦術的な視点を鍛えたことで、サッカーに対する楽しみ方に変化はありましたか?

タケゴラ:僕はサッカーってスポーツには、一つ一つのプレーに必ず意図があると思っていて、それが分かるとさらに面白いんじゃないかなって。僕が考えていることと、ピッチ内で起こっていることが同じだったら嬉しいですし、それを超えるプレーを見れたら興奮します。

たとえば、一つのシュートが決まるのも、そこまでの伏線や理由があって起きています。シュートを打つのかパスを出すのか、瞬間で判断する中には理由があるので、そこを知れたりすると面白いですよ。

取材班:あえて極端な聞き方をしますが、サポーターにとって戦術理解はマストであると思いますか?

タケゴラ:極端ですね(笑)。個人的にオススメはしますが、マストではないし、分からなくても楽しめるのがサッカーだと思います。

「戦術知らないのに喋るな!」みたいなのは違うんじゃないかと。ただ例えば批判するとか、ネガティブな意見を言うなら、ある程度理解があった方がいいかなーとは感じています。

取材班:ほうほう。それはどうしてですか?

タケゴラ:サッカーはチームスポーツなので、誰か1人のせいで負けることはあり得ないと僕は思っています。でも誰かのミスが大きくフォーカスされて、矛先が向くことってあるじゃないですか。議論がそこに終始するのはもったいないし、そのせいで選手がバッシングを受けたりする流れはよろしくないなと。

ネガティブな意見はポジティブな意見以上に影響力が強いと思うので、それで間違った方向というか、中にはその意見に影響を受ける方もいらっしゃると思うので、物言いをするのであれば戦術的な視点はあってもいいかなと。普通に楽しむのであればなくても問題ないと思いますし、逆にない方がいいこともあると思いますので。



取材班:そういう意味では、ゲームを細かく噛み砕く見方が広がることで、より建設的な議論を生めそうですね。

タケゴラ:繰り返しになりますが、誰かのせいにするのはよろしくないし、色々な要因が重なって負ける部分もあるので。その説明を丁寧にするのが僕の役割ではないですけど、読んでくださる方の需要はあるのかなって思っています。

取材班:もし記事を読んだ人が、スタジアムでのリアクションを改めたのだとしたら、選手にもいい影響がありそうです。

タケゴラ:鹿島に関しては、必要以上にネガティブな反応が目立つ印象はないですけど、例えばバックパスが必ずしも消極的なプレーではないことを理解して、それがスタジアムでのリアクションに出れば、選手にポジティブな効果を与えられるかもしれないとは思いますね。去年のマリノスがそうでしたし。ミシャの時の浦和レッズも、西川選手にボールが渡った瞬間に拍手が出たり、サポーターが意図をくみ取ってリアクションができていました。

ただ、それが分かんないからダメではないんですよ。押し付けたくはないので。でも、「なんでそれが起きるんだろう?」って思う人に手を差し伸べられる存在が、戦術ブロガーの存在価値の一つなのかなと。僕らの記事を読んでくれて、理解に繋がればハッピーだなと思います。

取材班:学生時代のタケゴラさんも、そうして理解を深めていったわけですもんね。

タケゴラ:僕としてはそういう使い方をしてくれると嬉しかったりします。あと、アントラーズは今シーズンからスタイルが変わっていて、もしエラーが起きたとしても、それが必ずしも無駄な事ではないと説明できたらいいなと思っています。

取材班:逆に、戦術を学ぶことで、試合に対して変に感情移入できないことはないですか?どこか冷静になってしまうというか。

タケゴラ:戦術的なことを知ったからって、反応が薄くなるとは思っていなくて。チームの戦術がサポーターに伝わっているクラブの試合を現地で見ると、それが作り出す雰囲気の良さを感じますし。決してネガティブに働くことはないと思います。

たしかにオーバーに喜ばなくなったとは思うんですけど、アントラーズが点とったら嬉しいですし、失点したら悔しいですし、そういう感情は普通にありますよ(笑)。


『鹿島』の『戦術ブログ』を書くこと。


取材班:鹿島アントラーズは『常勝軍団』であり、勝利に対するこだわりが強いクラブ文化があると認識しています。そのクラブを題材に試合の"内容"を論じることへの難しさはありますか?

タケゴラ:クラブの立ち位置も徐々に変わってきていて、今シーズンはかなり先を見据えたチャレンジをしている分、目の前の試合に勝てなかったりすることも起きるんじゃないかなーと個人的には感じています。

ただ「勝たないと困るよ」ってサポーターも大勢いると思います。僕はそういう人の意見もすごく分かります、ウチはどんな時でも優勝を狙いに行くクラブですからね。その部分でどう折り合いをつけていくかは、もちろん勝ってくれれば何の問題もないんですけど、勝てないときにどうなるのかは今シーズンの懸念材料になりそうです。

取材班:いまはクラブにとっても過渡期なんですね。

タケゴラ:ここで変わらないと、この先勝てなくなるかなーとは思っていて。もちろん僕はアントラーズが、永遠に常勝軍団と呼ばれるクラブになってほしいと思っているので、そのために必要な変化だと受け入れています。でも、目の前の結果を求める人がいるのも分かるからこそ、ジレンマにぶつかるかもしれないなと。

取材班:ずっと応援してきたタケゴラさんから見て、そうした変化が必要な背景をどうお考えですか?

タケゴラ:多くの選手がヨーロッパに移籍しちゃって、主力が3~4年も残るクラブではなくなったのが大きいですかね。選手の質を活かして勝てるなら苦労はないですが、今はトップレベルの質を担保できなくなりつつあって。その差を埋めるために何をしなきゃいけないか?と考えたら、今シーズンのようなことに挑戦していく時期なのかなと思います。

取材班:では今シーズンの鹿島アントラーズの注目ポイントは?

タケゴラ:監督がザーゴに代わって、チームのスタイルを新たに作っていく段階になるので、それがどこまで浸透していくかが一つ。その中でアントラーズらしさというか、結果をどこまで出していけるかがポイントかなと。

個人的には、ここ2、3年はアントラーズが常勝軍団の立場を守れるのか、もしくは「昔は強かったね」と言われるクラブになってしまうかの正念場だと思うので、めちゃくちゃ大事なシーズンだと捉えています。あと若い選手が出てきていますし、逆に内田篤人選手なんかもいるので、選手に注目するのもいいですね。



1→10の架け橋になりたい。


取材班:そうしたことを、今シーズンも読者の方々に「分かりやすく」伝えていきたいんですね。

タケゴラ:はい。僕は戦術に関するカタカナ用語もなるべく使わないように意識しています。使ったとしても、前後の文脈から読み取れるような形を意識しています。書く側からすれば使った方が楽なんですけど、読者側は易しい言葉が並んでた方がとっつきやすいかなーと思っているので。

少し前に、知り合いの鹿島サポーターと食事に行く機会があったのですが、その時に「ビルドアップという言葉の意味が分からない」と言われて。ビルドアップって、カタカナ用語の中では簡単な方かと思っていましたが、確かに盲点だなと気づきました。

なので今後、ビルドアップを説明なしに使うのも避けようと思っています(笑)。もちろん他のブロガーが使うのは全く問題ないですけど、僕としてはあまりハードルを設けたくないので、もし使うとしても、フォローは入れていくつもりです。

取材班:そこまで読者目線に立って、ハードルを下げようと努力している背景には、どんな想いがあるんですか?

タケゴラ:なるべく多くの人に読んでもらいたい気持ちが大前提にあります。日本国民の中でサッカーが好きな人、その中でJリーグが好きな人、その中で鹿島が好きな人、その中で僕を知っている人の数は決して多くないと思っています。せっかく読んでくださる方に対して、さらにハードルを設けることはしたくなくて。戦術に興味がある人ってすごく少ないと思うので、その中でいかに伝えていくかを考えているつもりです。

取材班:最近は『ANTLOVERS』の立ち上げにも携わっていましたが、タケゴラさん自身がハードルを設けずに動いていらっしゃる印象です。

タケゴラ:あれは他の人の協力もあるんですけど、その中の『ANTLovers BAR』はコロナ騒動でなくなってしまったサポーターの交流を促進したいという思いで僕が立ち上げました。『ANTLOVERS』は日本全国のアントラーズファン・サポーターを繋ぎ、団結を深めるコミュニティです。僕自身もそういう機会を求めていたので、この構想に乗っかってみました。オンラインで集まったりしてるんですけど、飲み屋に集まって喋るのを家でやってる感じです。



取材班:こうしたブログやコミュニティを通じて、タケゴラさんが目指していることはありますか?

タケゴラ:アントラーズを好きになってくれる人を増やすことです。僕の記事で0→1にするのは難しいと思っているんですけど、興味を持った人をハマらせることはできるんじゃないかと思っています。試合のレビューもそうですし、選手紹介もそうですし、「アントラーズをもっと知りたい!」と思ったときに僕の記事が助けになれば嬉しいです。

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【了】

---------nest編集部より----------

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