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トルコ土産


大学の卒業旅行でトルコに行った。一週間ほどでトルコ全土をバスで駆け巡るというなかなかのハードスケジュールだった。参加した約20名のほとんどが卒業を控えた大学4年生であった。
その中に、ぽつんと70代の姉弟がいた。姉は小柄で毛糸の帽子を被ったかわいいおばあちゃん、弟の方はひょろりと背が高く、足が不自由なのか杖を突いていた。こんなお年寄りがこの旅程に耐えられるのか?と、出発するときは全員の顔に書いてあった。
しかし、予想を裏切り、姉弟は一度も脱落することなく、むしろ誰よりも積極的にトルコを満喫していた。屋台の売り子に試食を勧められた得体の知れない何かを、その2人だけは食べていた。「よく食べられますね!」と言うと、「だって食べてみないと何か分からないじゃない」としれっと答えた。こういうお年寄りもありなのか。好奇心に任せて自由に動くことも、楽しむことを諦めないこともできるのか。それなら、歳を取ることも案外悪くないかもしれない。あの年配の姉弟の存在が、大人になろうとしていた私たちへのはなむけだった。

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