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モアザンワーズ | 感想

アマゾンプライムで配信されているモアザンワーズというドラマ、前からサムネイルが好みの感じで気になっていて、SNSでEXITの兼近さんの演技が良いという評判を見て、どんな感じなのか見てみたくなってさわりだけでも…と思って見始めたが、思っていた以上に話にのめり込んでしまい、結局数日で全10話を見終わってしまった。また1話が30分程度のため比較的見やすいのもあったと思う。

全体的な所感としては、刺激的なイベントや多少強引な展開に「それでいいのか…」と納得できない部分もあったが、メインの3人それぞれにしっかりフォーカスを当てて、気持ちや行動に至る経緯を丁寧に描写しているところに好感を持ち、オープニング、エンディングやカットや音楽などの各所のそつのないあしらいが、なんとなく今っぽいスマートな演出だなあとおじさん目線ながら感心していた。あとオープニングのロゴとその演出、なんとなくluteを思い出したのですが、関係あるのかな?と思って向こうのSNSを見に行ってみたけれど関連してそうな話はなかった。

1話の出だしだと、どこかまだ演技の幼さなどが京都弁を使っているのも相まってちょっと違和感があったけど、後半になると結構自然に受け止められたので、連続ドラマで時間が長いからこそ感じられることなのかもなあと思った。関智一さんが出てきたときは最初気づかないくらい馴染んでいたし、個人的に大ファンであるともさかりえは個人的な感情を置いておいてもほんとに良い演技をされていて流石としか…。美枝子と飲みに行くシーンも良かったし、私としては家での何気ないやりとりの所作に良さが滲み出ていたと思う。気になっていたEXITの兼近さんの演技も作品に沿った良い演技だった。メイン3人の若々しい演技を周りのベテラン層の方々が支えていることで、うまくバランスが取れているのかもしれない。

本編を見ていて途中から気づいたけど、この作品には劇伴がそんなに多用されておらず、重要なシーンや必要と思われる最小限に留められていて、余計なノイズがないことによって会話や動き、または画面に集中できて、こういった思い切った演出は配信だからこそなのか、テレビドラマではあまり見られない映画寄りの演出が、作品で見せたいものの輪郭をよりハッキリ際立たせていたように見えた。エンディングでなんてことないシーンに主題歌を載せていた回も、音楽がないことに一瞬びっくりしたが、その分、そのシーンでのみんなの動きにどこか意味が含まれているような気がしてぼんやり考えていた。毎回だとちょっと寂しい感じもするけど、たまに挟むことによって良い塩梅になっているのだと思う。最近のyoutubeの編集を凝らした動画を見ていると、会話や効果音がびっしり詰め込まれていることが多く(実際そういう無音にならない編集をする傾向があるらしい)、そういう動画の後に見たからか、より劇伴が少ないことが印象的だった。

また、この作品の舞台が京都になっていて、京都だけどPR感のない日常的な京都なのが、昔住んでいたころを思い出してなんだか懐かしくなった。ただ、私は北区ではない地域で、修学院あたりのあのオシャレなエリアには憧れと嫉妬が混ざったこじらせた気持ちを抱いていたため、斜に構えて「ええとこ住んでんなあ」と思ってしまうのですが。
そんな個人的な感情はさておき、場所として鴨川や叡山電鉄、琵琶湖が出てくるのは地域性があって親近感も持てるし、その他に川、線路、湖という暗喩とも取れるモチーフになっているのが作品の物語性を深めていると思った。
1話では鴨川で美枝子と槙雄は出会い、10話では美枝子と槙雄は鴨川で再会したのち別れて別々の道を歩いていく。仮に川を人生の流れや分岐点の様なものだとしたら、美枝子と槙尾の2人の関係性は鴨川になぞらえて出会ったり再会したり、自分たちの人生(川ないしは道のようなもの)を進んで行くという解釈もできると思う。途中、美枝子と槙雄が疎遠になったときに、踏切で向かい合ったもののすれ違うシーンも二人の関係が分断されたことを示唆しているようにも感じる。こういった日常の中のモチーフが生活の変化を表しているシーンはいくつかあって、それに気づくたびに「あ、もう変わってしまったんだな…」としんみりしていた。

槙雄については、初めの頃は天真爛漫で美枝子の支えとなっていたが、美枝子の妊娠以降は大人になっていく美枝子と永慈に対して、自分の気持ちで精一杯になって一人取り残されたままくすぶっていくのが、対比として分かりやすいが悲しくもあった。というかそのへんの男子高校生がそこまで相手を理解して受け止め順応できたらむしろ成熟し過ぎているので、年相応といえばそうなのだけど。どちらかというとフラフラしていた永慈が、美枝子の選択を受け止めてしっかり寄り添っている姿はある意味理想系ではあるけれども、世の中そう上手くいくとは限らないと思うので、槙雄と永慈はパートナーでもあった一方で、美枝子への向き合い方の対比にもなっていたと思う。3人という不安定な関係をよく描いている作品だとも思った。

何よりも主題歌の各曲が本当に素晴らしかったので、サントラ出してくれないか期待しているのですが、とりあえず「タイミングでしょ」の音源の配信を切に願っています…。後半でくるりの「八月は僕の名前」もなかなか京都に所縁がありなおかつストーリーにぴったりの選曲で、ずるいけど良いとしか言えない感じだった。

ところどころ自分の思い出やコンプレックスになぞらえてしまって、勝手に怒ったり悲しんだりしていたけれども、解釈は人それぞれとして、それでもいろいろ考える余白を含んでいる作品というのはやはり面白いなあと改めて思いました。しばらく見返す元気がないのだけれど、人によって感想が違ってくる作品だと思うので、いろんな人の感想が知りたいところでもある。
私も車で琵琶湖行ってバーベキューしたいな…やったことないけど…。