(仮題)日常

Twitterで言葉を募集して作る小説
日常の一部です

「なぁ、チクチク言葉って知ってるか?」
 僕はゲームの対戦に熱中している二人に問う。

「うるせー黙れ。あぁぁ、もう!お前のせいでやられたじゃねーか!」
 啓介は僕に当たり散らす。そうそう。お前はいつもそんな感じだ。

「お前の腕がゴミなだけだよ。武志にあたるな、負け犬」
 達也もそんな啓介に辛辣な言葉を浴びせた。なるほどなるほど。

「よし!聴けお前ら」
 僕は二人に呼びかける。チンパンジー共に教育を授けなければならない。

「教養の無いお前らに教えてやるとだな。チクチク言葉っていうのは相手を傷付ける言葉らしい」
 素敵なドヤ顔を披露している僕を、二人はポカンとした表情で見ている。

「まさか武志。お前チクチク言葉を知らなかったのか?」
 啓介が怪訝そうな顔で僕に問う。そう、その質問を待っていた。

「良いか、まさに僕らが普段使っているのがチクチク言葉らしい。という事は、僕だけでなくお前らも知らずにチクチク言葉を知っている事になる」
 僕の言葉に、啓介と達也は目を見合わせている。

「いや、啓介が聴きたかったのは、多分違う意味だと思うぞ。そんな事より急にどうした?」
 達也は恐る恐るといった感じで聴いてくる。これまた待っていた質問だ。

「まぁまぁ。まずはこれを見ろよ」
 僕は可愛らしい便箋を机に広げる。

 いつもなら何かを提案するとうぜーだのなんだの言いながら時間をかける二人も、今回は興味津々で覗きこんできた。

『武志君へ。
 あなたとお仲間のチクチク言葉のやり取りは、毎日聴くに耐えません。
 本当に本当にうるさいです。
 静かなあなたが好きです』

 啓介と達也は読み終えた後、また目を見合わせている。

「俺達に対するクレームだよな。お前もいい加減慣れてるだろ」
 啓介の言葉に達也もうんうんと頷いている。アホだなコイツら。

「日本語が不自由なお前らの為に教えてやるとな。これはラブレターだ!」
 僕の言葉に二人ともポカンと口を開けている。

「お前いくらなんでもそれは…」
 読解力のない達也が何か言おうとしているのを制して僕は宣言する。

「僕は今日から生まれ変わる。お前らも付き合え」

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