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(仮題)宇宙SF
Twitterで言葉を募集して作る小説
宇宙SFの一部です
「島田さん。宇宙、行きませんか?」
里村が昼休憩から戻るや否や笑顔で声を掛けてくる。
「おー、いくか。久しぶりに火星丼を食べたくなってきたわ。お前は何食ってきたの?」
俺はそう返しながら立ち上がって伸びをする。宇宙か。あそこ量が多いんだよな。久しぶりに行くか。
「定食屋の方の話だと思ってるでしょ?まぁいきなりだから仕方ないんですけど。これを見て下さいよ」
里村はウェアラブル端末から立体広告を展開する。
『来たれ星間冒険者。我々と共に未知を歩もう!』
ナレーションと共に旧式の宇宙服を着た人が宇宙船の上に跨って飛んでいる広告が流れた。まぁまぁチープだ。
「あー。たまにあるやつな。別に宇宙くらい旅行で行けば良いだろ」
俺は里村にそう言いながら椅子にかけていた上着を羽織る。
「たまにって言いますけど、五年に一度くらいの募集じゃないですか!折角の機会だし応募しましょうよ!」
熱心に誘ってくる里村だが、俺が行きたい宇宙は歩いて五分の定食屋だ。
「分かった分かった。どうせ落ちるんだから、俺の分も応募しとけ」
俺の言葉に「分かりました!」と応じた里村は早速応募しているようだ。あいつはもう休憩時間が終わってないか?と気にはなったが、空腹に負けた俺は定食屋へと向かった。
星間探索隊の募集を政府が始めたのが五十年程前になる。信じられない事に、里村が持ってきたチープな広告は官報だ。世間では神の探索が主たる任務と噂されている。
古来から森羅万象の説明が付かない部分を神によるものと決めつけてきた我々だが、文明の発展により明かせない謎が極端に減ってきてしまった。
『神はいないのではないか』
不思議な事に、神の不在が証明される度に皆が不安になっていった。
そのタイミングで当選者に多大な援助を与えて遠くの惑星を探索させる、政府肝煎りの事業が始まった。一応の名目は『未知の惑星及び物質の探索及び採取』とされている。
いわゆるガス抜きだ。俺はそう捉えている。神がどこかにいる事の証明など出来ないが、いない事の証明を先延ばしにする事が出来る。探索隊がこちらに帰ってくるのは何年先になるのか想像もつかない。
何かを隠している子供のようだな。けど里村はなんで…
「へい、お待ち!!」
火星丼の到着で何を考えていたのか忘れてしまった。まぁ明日でいいか。
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