ダンス:Sugimoto/Forsythe, « At the Hawk’s well » , « Blake Works I »

2019/10/8, 13 @Palais Garnier

杉本博司とフォーサイスの協働による作品。

Figaro.japan のHPの記事に、とっても詳しい舞台レポがあった。

本当に詳しい。びっくりした。鷹の井戸のあらすじも載っている。

図らずも私は二回も観てしまった(椿姫だと思ってチケットを買ったらその日もSugimoto/Forsytheだった…)。1回目は舞台装置が全体的に見え、2回目はダンサーがよく見える席と、視界に違いはあったからよかったけど。。ちなみに「鷹の井戸」は舞台装置が見えている方が面白く、「Blake Works 1」はダンサーが見える方がいい作品だった。結果オーライである。まあ、100€くらいだせればどどっちも観れるんですけどね!!

杉本博司もフォーサイスも有名なのだが、杉本が舞台芸術に関わったものを見るのも初めて、フォーサイス作品も初めてだった。

At the Hawk’s Well(鷹の井戸)とBlake Works I (Blakeは音楽の人の名前、James Blake)の二本立て。杉本が関わっているのはAt the Hawk’s Well。

「鷹の井戸」はもともと能からインスパイアされてイェイツが作ったものであり、伊藤道郎が鷹役をしていたとか、矢野英征が演出したことがあったりと、これから調べていこうと思っていた作品なので、目を皿のようにして見た。

At the hawk’s well の音楽担当は池田亮司。


自身も音楽とアートの境界を往来する著名なアーティストである。ダムタイプの音楽を1990年代以降担当していることでも有名らしい。知らなんだ…(この名前から山田正亮という名前を思い出し、ものすごく詳しいブログを見つけた。関係ない。)

池田亮司の作品のイメージ、どこかで似たようなの見たなと思ったら、2019の六本木クロッシング展の平川紀道の作品だった。

音楽も照明もビデオもすごいんだけど、衣装も面白かった。Rick Owensさんという人が作っている。Rick Owens っていうブランドの創始者。ふつうにお店もある。ちょっとコムデギャルソンっぽい。

最後に急に能役者(梅若紀彰)が出てきて、能っぽい台詞をつぶやく。急に日本語が聞こえてきて不思議な気持ちになった。

もともと、能とケルト神話を合体させてアイルランド人が作った(それも、「お雇い外国人」フェノロサの草稿→エズラ・パウンド→イエイツという流れらしい)作品に日本人(伊藤道郎)が出(ロンドンやNYで公演)、日本人(矢野英征)がフランスで異なる演出を施し、そのヴァージョンは日本に帰り、また原作は逆輸入されて能に翻案され(「鷹姫」)、翻案された作品は現在も演じられている…という、極めてインターナショナルな来歴を持つ作品である。

杉本+フォーサイスバージョンの「鷹の井戸」は、バレエ(というよりダンス?)作品であるのもあって、物語がはっきり示されているわけではない。筋書きを知っていたら分かるだろう、という程度である。

能の要素をもともと持っている作品だから、能役者が出てくることや、能の本舞台のようなステージが張り出した舞台であることに、なんらイチャモンはつけられない。だが、それでも能役者の登場は突然だなあという感はあった。

でも思い返してみれば、そのグチャッとした、異文化が衝突した感じが、浮遊感のある感覚をもたらしていたと言えなくもない。

ただ、これはパリのオペラ座でやっていて、能も日本語も分からない観客ばかりの場所で、「能っぽさ」だけが、演出上の効果としてのみ引用された感じはする。

見ていて面白い作品だったが、調べていこうというやる気を出させる作品でもあった。

杉本博司とフォーサイスのヴァージョンの「鷹の井戸」は成功なのかどうか、


第二幕の “Blake works I” も楽しかった。

Blake works I の初演は2016年。作品名にもなっている、音楽担当のJames Blakeさんはイギリス人。

New York Timesに、2016年の初演時のレビュー記事があった。

この作品は、フォーサイスがパリ・オペラのために振り付けした最初のバレエ作品であるという。(英語の読解が合っていれば…)

この作品は、バレエの過去を紐解き(バランシンなどが引用されているらしい)、バレエ表現の境界を拡張し、そして若きダンサーたちにバレエの未来を託す、というような、フォーサイスのバレエ愛爆発!的作品らしい(こういうバレエの見方できるようになりたいものだ…)。

ダンサーたちの練習風景と思われる場面で、輪になって自らの技量を仲間に披露しあうという風なシーンがあった。可愛かった。

見終わったあとに、自分も体を動かしたくなる作品だったなあ。

一番印象に残っているのは、ダンスでもバレエでもなく、ビートにダンサーたちがノッて、上下に揺れているシーン。カッコよかった。バレエの身体で、若者の日常のことをやる。どんなダンスや役をやっていても、実際は毎日練習にはげみ、同じ現代を生きる若者たちなのだ、という強い印象を得て、彼らを応援したくなった。なんか、ジョージ朝倉のバレエ漫画「ダンス・ダンス・ダンスール」を読んでいる時と同じ気持ちになった。

本当はパ・ドゥ・ドゥ(pas de deux)がどうのこうのと言わなければいけないのだろうが、バレエ作品をほとんど見たことないので分からない。。しかし、恋愛っぽい振り付けとよりも、身体すげーと思わされる振り付けだった。あんなのを踊ってる時ってどんな感じがするんだろう…





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