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ワーママは意欲的?政府のリスキリング支援はなぜ叩かれたのか

数か月前、首相の岸田文雄氏は、「異次元の少子化対策」に絡み、育休中のリスキリング(学び直し)を「後押しする」すると国会で答弁した。

「育休・産休の期間にリスキリングによって一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、逆にキャリアアップが可能になることも考えられる」

27日の参院代表質問。自民党の大家敏志氏はこう述べ、育休中のリスキリング支援を行う企業に対する国の支援の検討を求めた。これに首相は「育児中など様々な状況にあっても、主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押ししていく」と答弁した。

朝日新聞

この答弁はネット上で大炎上した。

今とは違う職場や職種で力を発揮することを前提に新たなスキルを身につけるリスキリング。岸田総理は国会答弁で、これを産休・育休中の人ができるよう政府が支援していく考えを示した。

しかし、ネットに溢れたのは「育児を甘く見るな!」「育休中にリスキリングなんて無理」「子育てをしたことがないのか」など、批判の声だ。

ABEMA TIMES

テレ朝newsのツイートに付けられたコメントを見ると、炎上具合が分かる。

育休中のリスキリング支援を後押しするという意見に対し、多くの人々が否定的な意見を述べている。

しかし、一方でこうした意見もある。

実際のところ、世のママこと産休中・育休中の女性はリスキリングについてどう思っているのだろうか?

この記事では(めっちゃ今更だが)産休・育休中のリスキリングを支援するという岸田氏の想い(?)がワーママに届くのか?なぜ氏の意見は炎上したのか?考えてみようと思う。

意欲的なワーママたち

育休中のリスキリングは困難なのか?
Twitterでの炎上騒ぎや、ママ垢のツイートを見るとそう感じる…

だが、実際には育休中に資格取得などリスキリングをする方は珍しくない

リサーチ会社のネットエイジア株式会社が行った調査によるとワーママの32.8%が「産休・育休中にスキルアップや資格の勉強に取り組んだ」と回答している。

出典:「働く女性の子育てに関する調査」|Gaba

若い世代のワーママほど取り組んだ割合が高く、20代では45.9%が産休・育休中にスキルアップや資格の勉強・取得などに取り組んだと回答している。

20代ではワーママは約2人に1人が産休・育休中にリスキリングしていたのだ。
結構な割合である。

ちなみに、取り組んだ内容は、英会話と料理がツートップだ。

出典:「働く女性の子育てに関する調査」|Gaba

英会話と料理以外にも、ピアノや園芸など生活を豊かにするものから、FPや簿記、医療事務など転職や職場復帰、キャリアアップに役立ちそうな実践的なものまで様々である。

こうしたデータは他にもある。

コクヨのオウンドメディア「MANA-Biz(マナビズ)|ワーカーのための学びサイト」によれば、30~35歳の育休取得女性の11.5%が育休期間中に"学び"を実践している。

出典:30~35歳の育休取得女性の11.5%が育休期間中に"学び"を実践

育休中に学んだ理由としては(Twitterに溢れる意見とは裏腹に)、「まとまった時間が取れる」からという理由が22%である。

出典のMANA-Biz編集部はこのデータを受け、こう記している。

育休中は、どの女性も子育てにかかりきり…と思いきや、スキルアップのために赤ちゃん片手に勉強するママさんたちがたくさんいた!

30~35歳の育休取得女性の11.5%が育休期間中に"学び"を実践

(まるでTwitter民を煽っているかのような一文だが、数年前の記事なので政府の答弁とは無関係である)

他のアンケート調査を見ても、「育休中にリスキリングをした」という女性は少数派ではあるが、決して珍しくない事が分かる。

また、実際に出来るかどうかは別として、育休中のリスキリング自体には肯定的・前向きという女性はさらに多い。

当然、個別の体験談や肯定的意見であればさらに出てくる。

育休中に気になるのは副業?

今度は少し違った角度から育休中の取り組みを見てみる。

世の人々は、育休についてどんな事を調べているのか?

Googleサジェスト(Googleの検索候補)では、「育休中」と入力すると、以下のような言葉が候補に表示される。

出典:「育休中」のGoogleサジェストキーワード | ラッコキーワード

育休中に注目を浴びているのは、なんと「副業」である

その下は金の話ばかりだ。
人々は育休中の副業や金について検索しているのである。

(ちなみに、「育休中」ではなく「育休」でも「副業」が上位に来る

他にも「育休中 暇」「育休中 旅行」「育休 短くしたい」など、Twitterでつぶやいたら火だるまになりそうなキーワードが多数表示された。

ちなみに、「学び直し」や「リスキリング」もあった。

Twitterでは「育休中に子育て以外の時間はない!」という意見が多くみられたが、そうとも限らないようだ。

(※検索キーワードは「ラッコキーワード」で調べました。)

岸田の想いは届くのか?

以上の点から分かるのは、産休中・育休中に資格取得などの勉強をしている女性は少なくないという事だ。
勉強では無いが育児以外の物事に懸命に取り組んでいた女性はさらに多い。

実際に出来るかは別として、リスキリング自体に興味のある女性も大勢いる。

SNSではリスキリング支援について、「子育て中に学び直しなどできるわけがない」「子育てをしたことがない人が語る理想論」などと岸田氏に対する罵詈雑言が溢れていたが、実際には「育休中のリスキリング」は理想論でもなければ、異次元でもなかった…

育休中のリスキリングは、一般的というほど多くはないが、別に特別な事ではないのだ。

岸田氏は炎上騒ぎに対し、「発言で申し上げたのは、ライフステージのあらゆる場面で学び直しに取り組もうとする時、本人が希望した場合に後押しできる環境整備を強化するのが大事だという趣旨で申し上げた」と述べている
要は「やる気があるなら応援するぜ!」と言っているのである。

これだけ多くの女性がリスキリングに取り組んだり、興味を持っているのだから、(少子化対策として有効かはともかく)岸田氏の応援(?)が届く女性もいるのではないだろうか?

なぜ岸田は炎上したのか?

産休や育休中のリスキリングに前向きな女性は決して珍しくないという事が分かった。
ではなぜ岸田氏は炎上したのか?

私は主に3つの要素があると考えている。

1.ママ垢ルール

1つ目の要素は"ママ垢ルール"に反したという事だ。

このツイートで風刺されている"界隈のルール"とは何なのか?

それが"ママ垢ルール"である。

子育てアカウント、通称「ママ垢」内での個人的なルール「ママ垢ルール」がSNS上で話題となっている。充実した暮らしぶりなど、いわゆるキラキラした投稿について、「できないママにも配慮して」と投稿を制限するルールのことだが、「ママ垢ルール、めんどくさ」「嫌なら見なきゃいいのに」という声も。SNSが発達する以前から、ママ友同士の付き合いにはトラブルも尽きない。

(中略)

「数名の方からご指摘を頂きましたがこの度は沢山の方に不快な思いをさせてしまい大変申し訳ありませんでした」「金輪際ママ垢にて筋トレツイをしません」

今月23日、生後4か月の子のママ垢がツイッターに筋トレの様子を投稿したところ、他のママ垢から指摘があったとして謝罪とともに投稿を削除。

ENCOUNT

世の中(というかTwitter上)には、子育てに余裕があるそぶりを見せると叩かれる界隈があるのだ。

当然、岸田氏が述べた「育休中のリスキリング」も"子育てに余裕があること"を前提とした意見だ。

岸田氏は"育児中に筋トレする様子を投稿したママを叩くような人々"に目を付けられ、燃やされたという事だ。

2.女性に責任と努力を求めたから

2つ目の理由は、岸田氏のリスキリング支援は女性に責任と努力を求めるものであり、それが気に食わない人が大勢いたという事だ。

「女性がマミートラック(出産でキャリアが途切れる)のは社会や男が悪いのに、なぜ(マミートラックの)被害者である女性自身に努力を求めるの!」

「少子化対策が上手くいかないのは、女性に負担を押し付ける社会や男の問題なのに、なぜ(負担を押し付けられている)被害者である私たちに更なる負担を求めるの?」

岸田氏のリスキリング支援をこのように受け止め、反発したという事だ。

あくまで政策は女性を無条件に支援・優遇するものであるべきで、女性自身に努力を強いる(※強いてない)など有り得ないという事だ。

3.子無し女性が得をしないから

3つ目の理由は、子無し女性が得をしないという事だ。

産休・育休中のリスキリング支援は、(言うまでもなく)ワーママが得をする制度だ。
子無し女性は得をしない

少子化対策として、女性全員を優遇・支援して欲しいのに、子無し女性に限った支援を打ち出す。
しかも、無条件に得をするのではなく、自ら頑張ってリスキリングした人しか得をしない。

そんな政府の"ケチ臭い態度"が気に食わなかったから叩いた…という事だ。

「女性を優遇・支援すれば子供を産む(※産まない)」と主張してきた人々にとって、ワーママしか支援しない施策は憎悪の対象なのである。

あなたはどう思う?

様々なアンケートから、育休中にリスキリングする女性は珍しくないという事が分かった。

しかし、岸田氏はフェミニストやリベラリスト、そして女性たちにボロクソに叩かれてしまった。

なぜ氏は叩かれ炎上したのか?

みんなも、ぜひ考えてみてね!(急にフレンドリーな締め)

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