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◆詩◆五月

公園の木はすべてがすべて別の形をしていて、なんだか恐ろしいような気がしたが、たぶんそれが正しい在り方であり、同じ服を着てみたり似たような言葉を使う僕らの方がいびつだと思えた。

メタセコイアの大樹を見上げてぼんやりしていたら、いつの間にか隣に君が座っていた。

君は何年か前に「自然は嫌いだ」と言っていた。
「自然のものより人が作ったものの方がいい」
それは君の魂の誠実さや脆さに関わることだったと、今更になって結びつく。そこには自然物に対する畏怖と敬意があった。

「やっぱり自然は嫌いか」
「嫌いだね。お前がいなかったらこんなところで時間を浪費しない」
その言いぐさは生きてたころとまるで変わらない。
生きてたころ。

「死んだらどうなるか知ってるか」
「知らない」
「草や木や花や石に少しだけ近づく」
「不本意じゃないの?」
「俺の意思ではどうしようもないさ」

君の体は緩やかにほどけて、蛍石のように発光しながら躑躅の森に溶けていく。

子どもたちは蝶を捕まえようと奔走し、老人はベンチで煙草を吸っている。
眩しく艷めく躑躅の花を拾って帰る。

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コミティア140に出したペーパーに載せた詩とイラストです。
イベント楽しかった!

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