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2021年12月の記事一覧

夜の獣のうた

夜の獣のうた

夜のオルガンが鳴っている
蕎麦をすする青年Sと
薄桃色の薔薇を握り潰す青年H
猥雑な喫茶のバックヤード、深夜

ふたりはよく似ていたが
似かよった部分がとても深かったので
誰も共通項を当てられなかった

青年Sは鬼の話をする
青年Hは大袈裟にわらう

おそらくこんな夜はもう来ないだろうと
予感するS

たぶんまたこうやってわらうだろうと
予言するH

プレイリストが明るい調子の暗い歌を流す
甘った

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◆詩◆ふゆのひ

◆詩◆ふゆのひ

はじめに。ちいさい海があって、パラソルがあって、きみがいて、ソーダ水があった。
もう冬なのできみはマフラーに埋もれるように巻かれていて。
小屋で火を焚こうと提案すると、はじめての名案だというように目を輝かせるきみ。
サイコロ状にカットした野菜がごろごろと入ったスープをよそう。パンをちぎってひたして食べる。
置きっぱなしのパラソルに冷たい雨があたるおと。
思えば今年も夏は短かったし、冬は永遠のように

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