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夜中の
2022年8月21日 16:38
兄が生贄に選ばれたので、爪を磨くのを手伝っている。兄は村で一番美しい男だったから、生贄に選ばれたと聞いても誰も驚かなかった。幼いころからはっと息を飲む美しさがあったが、最近は美貌に年頃の若者のもつ鋭利な危うさと妖艶さも混ざり、寄れば熟れきらない南国の果実の香りさえした。美しい足を膝に乗せ、一本一本爪を磨く。兄はそれを静かに見ている。◆数年前、一時帰国した叔父がパパイヤを切り分けながら「日本
2022年8月19日 12:57
Sが鏡に映らないのに気がついたのは、夏休み前、研究棟旧館のひとけのない階段の踊り場の大きな鏡の前だった。思わず「あ」と口に出し、鏡とSを何度も見る私に、Sは「体質なんだよね」と恥ずかしそうに笑って見せた。「気がつく人はたまにしかいない。というか、ほぼいない。中学の時に近所に住んでた兄ちゃんと、高校の時の教育実習の先生くらいかな」「家族は」「気づいてないよ」「大学にもいないの?」「貴方が初