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夜中詩

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こぼれ落ちるのをすくってゼラチンで固めたやつ
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2020年9月の記事一覧

9月の

9月の

向こう側にいくには
少しの工夫が必要です

例えば昔なくした鉛筆を拾いにいくような
夢の中の食堂で冷たいスープを飲むような
うさぎの足音を繋げて音楽をつくるような

向こう側にいくには
もっとその場所を想像しなきゃ

月の光を集めて電源にしたビジョンのように
長い廊下を渡って本を返しに行く時のように
カーテンで作った青いスカートを翻すように

花が咲く音に耳をすませて
向こう側に行く前に
紅茶を飲

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ひかりのまつろ

ひかりのまつろ

発光する恋人を抱きしめる
蛍光色の鱗粉が肌に付く

忘れないように手のひらに乗せて歩いた記憶は
すべて零れ落ちてしまったらしい
正しかったことすべてかけらも思い出せないまま
自販機の前で立ち尽くす

バス通りは雨の日の朝の匂い
蛍光ピンクがきらめく
嬉しくなる
寂しくなる

明日のわたしは
あなたを覚えていられるだろうか

寝てない脳が鈍く揺れる
蛍光グリーンがささやく
悲しくなる
楽しくなる

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