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(第9回)「プログラミングやりたくない!」〜下から目線のコーディング武者修行〜
True/FalseでおなじみのBoolean。
ところがその由来になっている数学者ジョージ・ブーレ(George Boole)についてはマトモな紹介がない!
しかも厄介なことに、フランス文学の研究家で、ほとんど同じ綴りのジョルジュ・プーレ(George Poulet)がいるもんだから、空目するのは必然(^_^;)
『Encyclopedia Britannica』などの百科事典を見てもラチがあかないので、George Booleさんの著書、“Laws of Thought”(Dover Publications, 1958)を購入。
読み始めてビックリ! George Booleさんは21世紀の「ビッグデータ」も予見してたとは!!
自分の数学力では「理解した」とは言えませんが、「数学の専門書を初めて読了」できたので、たいへん刺激的な一冊。
なもんで、ここからしばらくはジョージ・ブーレさんの考えたことをフォローしていきたいと思います。
[1. ジョージ・ブーレの略歴]
*以下、E. T. ベル『数学をつくった人びと 1〜3』(早川書房、2003年)の記述に基づいて記します
ジョージ・ブーレは、1815年11月2日、イギリスのリンカーンに生まれる。亡くなったのは1864年12月8日。死因は肺炎。享年50歳。(ずいぶん若くして亡くなったのね)
ブーレ家は「小売り商」という、19世紀イギリスでは最下層の位置付け。どのくらい最下層かというと、メイドや下働き以下の扱いだった由。
当時はギリシャ、ラテンの古典語が重要視されてたので、ジョージ少年も立身出世を願って古典語を独学。
*ちなみに教育を受けた経験は、父親から教わった言えば初歩的な数字のみ。つまり「教育を受ける機会ゼロ」だったそう
12歳の時にホラティウスをラテン語から英訳し、以降はギリシャ語を独学。16歳から学校で助教師として働き始める。
20歳で学校を設立。数学を自分で教えることになって、当時の教科書に大きな不満を抱く。
数学書の出版は会員資格がないと許されなかったそうなので、1837年、スコットランド人の数学者D. F. グレゴリーの編集する『ケンブリッジ数学雑誌』に寄稿。
編集を手がけてたグレゴリーさんは、まずブーレの独創性と文体に感嘆。そこから文通しはじめる。(実際、ブーレさんの英語はたいへん読みやすく、洗練された文章だな〜と読んでて思いました)
マトモな教育を受ける機会なかった人間として初めて、大学で数学者としての地位を得たそうな。
身分制当たり前、貴族主義バチバチの19世紀イギリスでよくそんなことできたなーと思うくらい。それだけ数学者としての貢献が大きかったんだと思います。
で、1864年に肺炎を患い逝去。享年50歳。
[2. ジョージ・ブーレさんの功績]
*ここからは “Laws of Thought”に書いてあることを自分が読み取った上で書いていきます
ジョージ・ブーレさんが革新的な貢献をしたのは、論理学(Logics)の分野。
「AならばBのとき、CはDである」という例のアレ。アレを「数学」として処理できるようにしたのがブーレ代数(Boolean Algebra)だそうな。
なんでそんなことを考えたかというと、「AならばB…」というのを自然言語(フツーの言葉)で扱ってると混乱は避けられない由。
そこから「AならばB...」という条件を「いったんAlgebraにして数的に処理し」、答えが出たところで「また自然言語に戻す」ということ。
その命題(Premise)が成り立つなら「1」を、成り立たないなら「0」を当てはめてやれば、不要な部分を消去(Eliminate)できるという。
ただあんまり革新的な内容だったので、当初は数学として認められなかったそうです。
[3. ジョージ・ブーレさんの数式例]
ブーレさんの方式に倣うと、こんな表記ができるとのこと:
人類全員 = 1,
男性(Men) = x,
女性(Women) = y
(1) 1 = x + y
一方、女性は「人類全員」から男性を引いた残り、としても表記できるので、こんな表し方も:
(2) y = 1 - x
で、(2)を(1)に代入(Substitute)すると:
(3) 1 = x + (1 - x)
こんな感じ。
で、こうした表記を与えられた命題(Premises)ごとに作って行って、それを数学的に処理して、最後にまた「人類全員」「男性」「女性」に戻してやる、ということのようです。
ホントは二重性(Duality)がどうの、という話もあるんですが、自分のソザツな数学力では理解がおぼつかないのが悲しい(^_^;)
[まとめ:ブーレさんが考えたこと]
細かーく読んでいくと、どうもブーレさん、
より少ない条件(Yes/Noだけで答えられる問い)で、ある集団を特定したい
狙いがあった感じ。そういうことは書いてないんですが、どーも丹念に読んでいくと、それを狙っていた気配が。
現代のコンピュータも結局は1と0しか扱えないので、質問もYes/Noの形に落とし込む必要が。
色んな質問の方式が使えればラクだけれど、コンピュータはYes/Noしかわからないからな…ということと、ブーレさんの根本の思想がビシッと噛み合ったみたいです。
そのせいなのか、コンピュータ用語としてよく見かける、Data, Instance, Object, Classなどなど、ぜんぶブーレさんの本に出てくるという。これにはビックリ。
ゼロワン・バイナリー(0/1 Binary)を数学に持ち込んだのはライプニッツと言われてますが、それをここまでコンピュータ向きに整理したのがジョージ・ブーレさんだった様子。
で、ブーレさんはどのあたりで現代の「ビッグデータ」を予見してたの?というのは、また次回に!
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