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ある日常 2

今日、専門書にも百科事典にも載っていない
あなただけの発見は
ありましたか?

(これは、私が20数年前に書いたものです。
当時、新社会人として忙しい毎日を送っていたなかで、
ちいさな日常の発見を書き溜め、心の栄養にして日々を乗り切っていたようです。
今読み直してみて、書き留めておいてよかったなと思えたので
ちょっとここに記してみようと思います)

深呼吸

私の家は、都心にある職場から2時間ほど下るため、
冬の良く冷えた天気のいい夜は
ものすごく星がきれいに見えます。
住宅街に入り灯りが少なくなると、空の黒さが一層引き立ち、つい自転車を降りて上を見ながら歩いてしまいます。

自分の足音だけが聞こえるほどの静けさのなか
空一面の星を見ていると、なんだか元気になります。
うっとりではなく、なぜか体中に力がみなぎり、元気いっぱいになるのを感じるのです。
なんだかうれしくて元気になってしまう。
その日嫌なことやつらいことがあっても、
すうっと空に吸い込まれていくような気がします。
空一面の星を見ながら深呼吸をすると、
体の中まで光りだすような、そんな気がするからかもしれない。
そして、そんなとき、家族や友人、大切な人、
その感動を報告できる相手がいるって幸せなことだなと思う今日この頃。

***

ひとっ旅

毎朝、二つ乗る電車のうち一つの方に1時間超乗る私は、
たいてい座れますが、たまに座れない時もあります。
そんなときは、先頭車両の一番前の角に陣取り、
運転室の窓から見える線路を眺めることにしています。

まっすぐ延々と伸びる線路、
手前から先の方にかけてどんどん線路の幅が狭くなっている、
遠近法の絵のような世界が広がり、
先の方が靄に包まれ見えなくなっていたりして、
ちょっとひっ旅しているような気分になります。

カーブでは線路の描くゆるやかな曲線が何ともきれいです。

ホームに入ると、
電車の到着を待つ人たちの顔がたくさんこちらを向いています。
皆、朝の顔です。

線路わきに等間隔に立つ電柱をいくつもくぐりぬけ、
電車はまっすぐ走ります。
♪線~路は続く~よ~ど~こま~で~も~♪
という節が頭をかすめます。

通勤電車もちょっと視点を変えれば
こんな楽しいひと時になります。

***

先日、親友がくれた空の写真を見ていたら
「透明感」「存在感」「やさしさ」
そんな言葉が浮かんできました。

空は、
透明感と同時に、ある意味相反する「存在感」をも持っています。
さらに、大きくて深いやさしさをも併せ持っていますね。

そんな、空のような人になれたら・・・
と思う今日この頃。

***

しなやかな枕石

駅のホームに立って電車が来るのを待っているとき、
向かいの線路に電車が入ってきた。
すると、コンクリートでできた枕木が、
その周りに敷き詰められた砂利の中に沈み、
そしてまた浮き上がる様子が目に入った。
電車の振動に合わせて浮き沈みを繰り返しているのだ。
それは、とても固いコンクリートとは思えないほどしなやかで、
まるでピアノの鍵盤のよう。
コンクリートと砂利、固いもの同士が
そんなしなやかさを生み出していることにちょっと感動して
ぼうっと眺めているうちに自分のいるホームにも電車が入ってきました。

***

忘れられた傘

雨降りのあとの電車の中、こんな光景を目にしました。
座席脇の手すりにかけられた一本の傘。
その隣の座席には誰もいない。
たぶん、忘れものだろう。

何回電車が停まって扉が開いても
その傘は下車することはなくじっとそのまま電車に乗っていく。
そこには、さみしさと希望が入り混じったような不思議な空気があるように思えました。
ちょうど、卒業と入学を同時期に迎えるシーズンのような。

傘がものを思うとしたら、何を思っているだろう?
忘れ去られたさみしさ?
住み慣れた地を離れて旅に出るような気持ち?
また、持ち主はどんな人でどのくらいその傘を使っていたのだろう?
本当はどこで降りるはずだったのだろう?
そんな想像だけが膨らんでいく。
そんなことを考えるとき、
たった一本の忘れ物の傘は
ドラマの主人公になりますね。

***

空に近いから

私は、女性にしては背が高い方です。
天気のいい日、背が高いことは得をする。
それだけ青い空に近いから


長くなるので今日はこの辺で。
「ある日常<2>」としておしまいにします。
続きは「ある日常<3>」としてまた書きます。

読んでくださった方、ありがとうございます♪

ある日常<1>もよかったらご覧ください^^

はじめまして。見に来ていただき、ありがとうございます! 「雨の詩(うた)」https://note.com/nepa88/n/n422be1298f3e を絵本にしたいと思っています。 いただいたサポートは大切に制作活動に使わせていただきます☆