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いつも走り出せば流行の風邪にやられて...

この2週間は人生最後の夏休みだったから、それを言い訳に少し自分から離れすぎたのかも知れない。浴びるように酒を飲み、嫌がる肌に太陽を浴びせ続け、溜まりに溜まった眠気はウイルスに付け入る隙を与えた。

いつも今までの自分と逆のことをするよう心がけてきたが、この2週間はその意味でのピークだったと言える。メジャーなものが好きな僕は、友達と山陰地方に行った。その途中で素晴らしき城崎温泉も知ることができた…僕はこの旅行で決めたことがあった。いるだけで他人の発言の方向性を縛ってしまう人間にはなるまい

帰ってきてからの僕は東京でまた平凡な数日間を過ごした、大抵は仕事をして。一つ特殊だったのは、ロマンスのカケラのようなものがふっと舞い降りてきたことかも知れない。これ以上を公の場で書くのは気が進まないけれど….それから、日本で最高のレストランの1つに伺う機会があった。ここでも僕は、職人・芸術家のもつ卓越だけは生涯自分に感銘を与え続けるであろうことを実感した。お茶をペアリングで頂こうかと思っていたが、結局ハーフペアリングになった。すぐには帰らず、六本木までタクシーで移動して(メーターは千円を超えない位のほんの一瞬だった)、僕が高校3年の時好きだったMaxwellのBad Habitsが流れるパブでさらに2杯飲んでから帰った。受験勉強しながらずっと聴いていた。ずっと聴いていた。あの時の内容をどれくらい覚えているのか。あの時描いていた理想の大学生だろうか、僕は。そもそも理想の大学生像を抱けるほど僕は純粋だっただろうか?

I gotta break from you
Break from you
Break from you….
Will you forgive me…
Will you forgive me…
Will you forgive me…

その翌日からは沖縄本島、宮古島へと発った。浴びるように酒を飲み、少々地元のクラブでハメを外して友達を作り、宮古島に移ってからはサントリーニ島ぺリッサ付近のブラックビーチ以来、いやコートダジュール・ニースのパロマビーチ以来のバカンス….と思いきや、泊まったヴィラでどんちゃん騒ぎした。ジャグジーに浸かっていると、どんなにお酒を飲んでも不思議と限界を感じなかった。頭は少しだけ痛かった。昔案件を複数抱えていたときのようだった。どんなに睡眠不足でも、不思議と朝6時からの上司との会議には起きて参加できるのだ。だけど、そういうのには必ず終わりが来る。お手洗いに行くために空調の効いた屋内に入った時、とても寒かった。耐えられないくらい寒かった。大理石のツルツルしたタイルは濡れた僕の足をすくおうとしていた。転んだら死ぬような気がした…

結局僕は宮古島にて体調不良でダウンすることになった。寝不足、日焼け、無理して飲んだアルコール、熱で文字通り茹蛸のようになりながらヴィラの砂まみれのベッドで凍えつつ眠った。翌朝には薬と休息が効いてだいぶ元気が出たので海にも入ったし、運転もとても楽しかった。

帰りの飛行機では真剣に人生について考えることになった。
疲労困憊、果てしない自由の底に突き落とされた僕は、東京に戻る前に真剣に自分の不安定なinner-selfを守るベールを作る必要があった。映画が早かった。「天使のくれた時間(Family Man)」という映画を人生で2回目に見た。

昔別れを惜しむ恋人をNYに置き去りにしてロンドンでエクイティブローカーのインターンをすることを選んだ主人公は今NYの投資会社の社長になった。金銭面で何一つ不自由していない主人公だが、クリスマスの日にその元恋人からのメッセージがきていることを知らされ、クリスマスの魔法とやらなんやらで、あの時恋人を選んで2人で暮らしていたら…という世界へと転生するという話。

物語の結末にもハイライトにもここでは言及しないけれど、このパラレルワールドでの恋人(Kate)がとても良かった。僕はいつだってKateのことを胸に刻んで生きていきたいと思えるくらい大切な映画になった。

東京に帰ると同時に完全に病床から身を起こすことすらできなくなったので、予定は全てキャンセルし(友達とのドライブ2つに、サーフィンスクール、ナイトクラブ…)、仕事も本当にできなくて、多分過去一ひどいくらいの仕事をして、というかまだ完了もできていなくて.…いまの僕には無力感しかない。無力感。

でも不思議と無力感しかない時に映画が人を救ってくれるんだ。「天使のくれた時間」で味をしめた僕は二人目のKateを探し求めるかのようにNetflixでU-Nextでいろんな映画を見た。数週間前Netflixを解約するか迷って、解約しないでよかった。ノッティングヒル(去年のちょうど今頃ノッティングヒルで女の子と歩いていたと思うといじらしい)、ターミナル(前と違って恋実らぬAmeliaの気持ちがなんとなくわかる)、Bohemian Rhapsody、エターナル=サンシャイン(この映画のジムキャリーみたいな弱気なのに以前は腹が立っていた)、Meet Joe Black、イエスマン、Two Weeks Notice(結末は陳腐だけど様々なヒューグラントを摂取するのは悪くない)、暇すぎてブリジットジョーンズまで!それにバニラ・スカイ、マイ・インターン…

自分が弱りに弱ってみないと、本当に優しい気持ちなんてわかりようがない。そう思った。こう書いている今だって、全然わかれていないことがきっとたくさんある。いまだって、僕は湯島から歩いていたら関西から来て財布がないとかいう少年に交通費の300円を渡した。電話番号も渡して、後で送ってくれるそうだが…多分かえってこないだろう。でも「ターミナル」でAmeliaがいっていたように、人はみんな何かを待っているのだろう。そう思うと、300円を待っている僕も、ウイルスが体をさるのを待っている僕も、みんなと同じなんだと思える。勇気が湧いてくるなんてことはないけれど、少しだけ胸が安らぐ。

病気になると、優しい歌がききたくなることもわかった。今はテクノはきかないし、ヒップホップも特にいらない。JoeのNo One Else Comes Close。

every time i hold you near
you always say the words i love to hear
girl, with just a touch, you can do so much
no one else comes close to you

是非とも今の感覚を忘れないでいたい。
こういう時に出るのが、本性というものなんだ。

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