惜しまれる人が羨ましい
惜しまれる人が羨ましい
適当に油を売ってみたり
社長でもないのに“社長”という渾名がついても
誰よりもナイスジョークで場を盛り上げる
ムードメーカーな現場の良きパパ
転勤が決まった時は誰もが惜しんだ
一方で、
早く結婚すればいいのにと
片付くことをわりと望まれる人もいる
「あの人、契約時間が伸びたんだって」
「若いからだよねぇ」
やけに大きな声がする
パート最年少で
その人物よりも勤務年数が長く
それでいて認められることもなく
発言者の隣で燻っている、私のことは
まるで目に入っていないかのような真顔で、
そう繰り返した
「若いからだよねぇ」
あの人は仕事ができるからだよねぇ――
せめてそういう文章だったなら
間違いのない事実として
何とも思わずにいられたはずなのに
プライベートで家族や恋人に必要とされるのなら
べつにいいじゃないか と
割り切ればいいことでもある
だけど家族に必要とされるのなんて
普通の家庭なら当たり前にあることで
何の代わり映えもない
しかも頼られるのは大体お金で
人間性ではない ことが多い
思い込んだ無価値には
気が付けば誰の言葉も届かない
ビデオ画面の向こうで、あなたが呟く
「考えすぎだよ」
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