無料公開 小山田拓夢【嘘つきは泥棒の始まり。では投球障害の始まりは?】

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今回はこちらのテーマでお送りします。

投球障害の始まりは痛みでも違和感でもありません。それを感じるもっと前の段階から肩の異変は始まっています。

肩や肘に痛みや違和感を感じるということは、その時点で既に投球障害という雪だるまは下り坂を転がり始めています。

何かしらの手を打たない限りは、投球を続ける限り雪だるまはどんどん大きくなりながら転がり落ちていきます。それを食い止める、もっと言えば雪だるま自体を作らせないことこそが、ピッチャーがコンディショニングやケアを必ず行わなくてはならない理由になります。

投球障害という雪だるまが転がり始める前、つまり最初の小さな雪だるまが作られ始める時はいつかというと、下記の状態に肩が陥った時になります。

それは、大胸筋や小胸筋のタイトネス、肩関節後方のタイトネス、過度の胸椎後弯、上腕二頭筋短頭のタイトネス、ローテーターカフの活動低下や変性など、肩のコンディションが低下した時です。

それらの肩のコンディショニングの把握には、HFT(Horizontal Flexion Test、画像)やCAT(Combined Abduction Test、画像)などの可動域チェックを行ったりローテーターカフの筋力テストを行うことが必要になります。

ただ、理学療法士の方に定期的に見てもらえる環境がある方は別ですが、これらを自分でチェックするのは容易ではありません。(誰かしらパートナーを見つけて教育したり、徒手筋力計を買えば出来なくはありませんが)

理想を言えば、チェックしてもらった上でコンディショニングを行うのがベストではありますが、ピッチャーである以上同じ様なところが弱くなり同じ様なところが硬くなる傾向はあるので、基本方針としてはローテーターカフ、肩甲骨周囲筋群は強化し、硬くなりやすいところはほぐしてストレッチという流れになります。(ただ身体の緊張が強くその部位をほぐしてもうまく伸びない方もいるので、そういう方は呼吸からアプローチし、身体の緊張を取ってから行う必要があります)

ローテーターカフと肩甲骨周囲筋群(前鋸筋や僧帽筋中部、下部など)のトレーニングは以前にも紹介させて頂きましたので、今回はほぐすのとストレッチの方、特に肩関節後方のタイトネスを解消していく為のストレッチやエクササイズを紹介したいと思います。

肩関節後方関節包の過度のタイトネスとそれによって起こる上腕骨頭の前上方シフト(上腕骨頭のセントレーションの崩壊)は肩峰下インピンジメントの要因になる為、そこをケアすることは、健康な肩を保つ為には非常に重要になります。

それではここからはエクササイズ、ストレッチの紹介になります。

①肩関節後方セルフリリース(動画)
ストレッチでいきなり伸ばす前に、筋をほぐしてその部位の緊張を落としてから伸ばした方がより可動域は出るので、まずはHypersphere(振動するボール)やラクロスボール、野球ボールなどを使って肩関節後部をリリースしていきます。三角筋後部や棘下筋、小円筋の辺りなど広範囲にボールを当てていきます。(画像)

②クロスアームストレッチ(後部関節包ストレッチ)(動画)
三角筋後部繊維、棘下筋、小円筋、後部関節包のストレッチングです。30秒×1〜3セット行います。

肩関節後部のストレッチと言えばスリーパーストレッチが有名ですが、スリーパーストレッチよりもこちらのクロスアームストレッチの方が肩関節の内旋角度の可動域は向上した(Stephanie D Moore et al.)という報告や、スリーパーストレッチのポジションは後方関節包へのストレスが大きい(M Urayama et al.)という報告もあるため、スリーパーストレッチはあまり薦めてません。個人的にも最近はあまりやりません。やるとしても、がっつり伸ばすのではなく軽くリズミカルに伸ばす程度で行っています。(動画)

③下部関節包ストレッチ
先ほどとは違い、腕を上げて肘を横に引っ張ります。下部関節包だけでなく上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋、広背筋、ローテーターカフなどのストレッチングにもなります。30秒×1〜3セット行います。

肩関節後方のタイトネスと投球は切っても切れない関係です。投げたら後方関節包が硬くなるのは宿命みたいなもので、放っておけばそのタイトネスはより強固になります。

筋という動的支持組織はストレッチやマッサージなどの介入によって変えることが出来ますが、関節包という静的支持組織がガチガチに固まってしまえば、徒手介入ではどうしようもなくなります。肩のクリーニング手術に付随して後方関節包解離術を受ける投手は少なくないですが、そうした手術を受けないと進行しきってしまった後方関節包タイトネスは改善されないのです。これまでにも何回か書いてきましたが、速い球を肩肘の健康を保ったまま投げ続けたいなら事前のケアによって防げる手術は徹底的に防ぐべきです。

その為にすべきことは何も特別なことではありません。日頃のケアの地道な積み重ねになります。余談ですが、元ソフトバンクの馬原投手の引退の決め手は「ケア疲れ」だったそうです。一度肩や肘の手術を経験すると手術前の自身の身体とは全く状態が変わります。その変わってしまった身体で、投げられる状態を必死に保つ為に日夜コンディショニングに取り組み続けた結果、やろうと思えば身体はまだ投げられるけど気力が持たないので現役は続けられない、という決断になったそうです。

過去にジョン•スモルツ投手(トミージョン手術を経験)も同じ様なことを言及していましたが、手術を一度受けることになればコンディショニングを保つと言う作業の難易度は格段に上がり、そこに取られる時間も増えてしまいます。

そうなる前に出来ることは全てやっておいた方が後悔のない野球人生を過ごせると思いますし、私の様に20代前半を故障で棒に振るといった経験は絶対にして欲しくはありません。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉がありますが、私は典型的な前者でした。故障という経験をして、投げられなくなって初めて投球障害について学び始めましたが、やはりそうなってからでは選手としては遅いのです。

勿論、全ての事を歴史から学ぶという事は不可能ですが、投球障害という分野は私だけでなくこれまで多くのピッチャー達が経験してきたものです。ある人は克服し、またある人それにより野球人生を終わらせられたり、これまで数え切れない程の歴史が積み重ねられ続けてきました。そこから学ばない手はありません。

今回も最後までお読み頂き誠にありがとうございました。何かありましたコメント下さい。

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