【解説】コントロールについて

コントロールは、投手に必ず必要な能力です。理由は、ストライクを取ったり、打者に打ってもらったりしなければアウトが増えず、試合が進まなくなるからです。投手を評価する際、球速や変化球が注目されがちですが、プロ野球や社会人野球といった高いレベルで活躍する一流投手は、コントロールもとても良いです。ほぼ狙った所に投げられます。一方、プロ野球2019年シーズンの与四死球率を調べてみると、以下のような数値が出ました。

セ・リーグ 3.69

パ・リーグ 3.80

リーグの平均値とはいえ、プロ野球選手でも1試合で4個近くの四死球を出します。ちなみに、MLBで安定して活躍してきた(している)日本人投手の与四死球率は、以下です。

◎田中将大投手(ヤンキース)      

NPB(7年)2.09   MLB(6年)2.00

◎上原浩治投手(元レッドソックスなど) 

NPB(11年)1.37 MLB(9年)1.69

つまり、コントロールの技術も球速や変化球同様、伸びしろがあり、上のレベルを目指す際にとても重要な能力なのです。

では、ここから具体的にコントロールを向上させるために必要な考え方をご紹介します。

【4段階のコントロール】

コントロールには、4つの段階があります。このことを頭に入れたうえで、焦らず段階ごとに練習しましょう。

①ストライクゾーンに投げられる 

➁内外角or高低の2分割に投げられる

➂内外角と高低の4分割に投げられる

④狙った所に投げられる

➀ができなければ投手を務めることはできませんしかし、➀ができて球速の速さや精度の高い変化球、または長身といった特徴がある場合、プロになれる可能性がでてきます。それだけ、➀のストライクを投げる能力は重要です。

➁~④は、できればできるほど一流になれる可能性が高まります。特に➂以上ができれば、プロでエースになれたり、MLBで活躍できる可能性さえ出てくると思います。なので、まずは➀のストライクゾーンに投げられるコントロールを目指していきましょう

【コントロールが良い投げ方・悪い投げ方】

◎腕が遅れない⇔腕が遅れる

◎硬い投げ方⇔柔らかい投げ方

コントロールの良い投手の投げ方は、利き腕が上がってくるタイミングが早く、いつでも投げられる状態ができているので、体の回転に対して腕が遅れず、リリースのズレが少ない特徴があります。

一方、コントロールの悪い投手は、体の開きが早かったり、利き腕がしなりすぎたりすることで、リリースが安定せず、コントロールも乱れやすくなります。さらに、そのズレを小手先で調整しようとすると、ボールの威力まで低下するケースもあります。

よく高校生のドラフト候補の評価で「天性の腕の振り」「柔らかくムチのようにしなる」といった言葉が使われますが、これはコントロールが安定しにくい柔らかい投げ方になりがちです。体が柔らかい、特に肩関節が柔らかい投手は、可動範囲が広いことで腕が振られる時間が長くなるので、その分腕が遅れたり、リリースがズレたりしてコントロールもぶれやすくなります。

一方、大学や社会人の投手は、高校時代は控えだった系の投手も活躍するケースがあります。これは、硬い投げ方が関係しており、高校時代に比べ年齢を重ねたり、トレーニングの成果がでたりすることで、柔軟性がちょうどよい具合に低下し硬い投げ方になり、腕の遅れが軽減されてコントロールや球速が上がるのだと思います。硬い投げ方は、腕が遅れにくく、それぞれの動きもブレにくくなるので、コントロールが良い傾向があります。

上記の特徴は、以下で紹介する投手たちを見てみるとイメージしやすいと思います。特に昨年のドラフトで注目された奥川恭伸投手(ヤクルト)と佐々木朗希投手(ロッテ)の二人は分かりやすい比較対象だと思います。奥川投手は、腕が遅れず、体つきもがっちりしており硬そうな投げ方をしています。一方、佐々木投手は、細くしなやかな体つきで柔軟性はありますが、長い手足をかなりしならせているので腕が遅れています。もちろん両投手それぞれの個性や魅力はありますが、現状どちらが活躍するのが早いか考えてみると、特徴の違いを感じやすいのではないでしょうか。

【おすすめのコントロールの良い投手】

奥川恭伸投手(ヤクルト)

一岡竜司投手(広島)

摂津正投手(元ソフトバンク)

武田勝投手(元日本ハム)

バートロ・コローン投手(MLB 元インディアンスなど)

佐竹功年投手(社会人 東芝)

【おすすめのコントロールの悪い投手】

佐々木朗希投手(ロッテ)

藤浪晋太郎投手(阪神)

松坂大輔投手(西武)

尾形崇斗投手(ソフトバンク)

長谷川宙輝投手(ヤクルト)

田嶋大樹投手(オリックス)

【コントロールUPにつながるフィジカル的要素】

ここで、私が考える現時点のコントロールUPにつながるフィジカル的要素を3つご紹介します。

◎胸椎と胸郭の柔軟性

股関節の柔軟性

着地側足裏のバランス感覚

以上の3つです。これは、私自身のコントロールにも良い影響を与えましたので、経験談も交えながら順に説明していきます。

胸椎、胸郭の柔軟性

最近Twitter上などでもよく話題に上がる部位なので、ご存じの方もいるかもしれません。先ほど述べたように、全身がぐにゃぐにゃすぎてもコントロールは安定しませんが、この胸椎と胸郭の柔軟性があると、以下の好影響が出ます。

・伸張反射(SSC)が起きやすくなり、腕が収まりやすくなる。

・腕が背中側へ深く引けるようになり、体の回転と連動しやすくなる。

・腕のルートを狭く通すことができるようになる。

簡潔にまとめると、腕が遅れにくくなります柔軟性が増すと、可動域が広がるので、周辺の筋肉を伸び縮みさせやすくなります

そのことで、伸張反射が起きやすくなり、反射で引っ張られた腕が背中側へ深く引かれ、いつでも発射できる位置に収まりやすくなります。そして、深く引かれた腕は、体の鋭い回転に連動しやすくなります。その結果、回転運動時にかかる慣性力に負けないぐらい腕を狭く通すことができるようになり、弓矢のように腕をキャッチャー方向へ真っすぐリリースする準備が整うのです。

余談ですが、インタビューなどで、プロ野球の投手腕の感覚を伝える際に「バレーボールのアタックのような」や「ダーツのように」と表現することがありますが、これは、150㎞を生み出すほどの鋭い回転で起こる慣性力に負けないために腕のルートを狭くするためのイメージ作りだと思われます。

※イメージなので、実際の動きをバレーやダーツにしてはいけません。

ちなみに、私自身のリリース時の感覚は、腕をキャッチャー方向へ押し出すイメージで投げています。球速は、120㎞前後と思われますが、そのレベルでも肘をしならせようなどと、腕のルートが広がるイメージを持つと、腕が遅れますので、このイメージ作りも大切です。

股関節の柔軟性

次は、下半身の話です。こちらの柔軟性もよく話題に上がりますね。ただ、今回注目する股関節の柔軟性は、軸足側の外旋です。右投の場合、足を揃えて真っすぐ立っている状態から右足の指先が時計回りに回旋した状態です。

投球時に体重移動をする際軸足側股関節が外旋することで、体が開きにくくなります。体の開きが抑えられることで、蓄えたエネルギーを狙った方向へ発揮しやすくなります

開きを抑える意識付けでグローブ側の肩を意識するケースがありますが、これは最適解ではない気がします。

また、下半身の練習方法で椅子に腰かけるように体重移動したり、着地した状態から体重移動を何回か繰り返して投げたりする練習がありますが、この練習も体重移動だけでなく、軸足側股関節の外旋の深さを意識して取り組まなければなりません。

着地側足裏のバランス感覚

最後は、着地側足の話です。着地側の足は、これまで蓄えてきたエネルギーを着地したタイミングで受け止めると同時に、地面からの反力を指先に伝える役割があります。つまり、着地したときに足がブレるとボールを持つ指先にまでブレが波及します。着地が不安定だと、すべてが台無しになるのです。

一般的な着地の理論として、「かかと着地」と「つま先着地」などがあります。上投げ系や下投げ系など、投手によってメカニクスが異なるので、どちらかに決める必要はありません。また、インステップやアウトステップもあり個性が出やすいです。なので、詳しい言及は控えますが、重要なことは足裏全体でしっかりと着地することです。私の感覚になりますが、ポイントは、足の人差し指のラインに膝と股関節を乗せることです。投げ終わった体制で着地足の一本で立ったままキープできる状態とも言い換えられます。

最後に、私自身が上記3つのフィジカルUPに取り組んだ結果をお伝えします。まず、効果は、毎日1時間ほどのストレッチを1週間ほど続けただけで現れました。投球時のインハイへ抜けたり、アウトローへ引っかけたりしていたボール球がなくなり、ボールがストライクゾーンに集まるようになりました。昨シーズンの与四死球率は6点台近くありましたが、今のところ2点台まで良化しています。また、故障がちで肩にすぐ痛みが出ていたのですが、これもなくなり回復も早い気がします。コントロールの段階だと➁まで来ていると思います。現在も継続中ですので、また経過報告します。

【トレーニング方法】

ここまで読んでくださった皆様は、コントロールUPにつながる具体的なトレーニング方法が気になっていると思います。しかしながら、繊細である投球モーションは、文章や動画だけで紹介したメニューに安易に飛びつくと、一瞬で壊れてします可能性もありますので、取り入れる際は、お気をつけください。

では、今回は私が参考にしたストレッチが多く載っている書籍をご紹介します。

書籍の中で特に、胸椎のストレッチが参考になりました。

後は、胸椎や胸郭とSNS上で調べると多くの情報が出てきますので、調べてみてください。

【終わりに】

最後までお読みいただきありがとうございました。

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#野球 #ピッチャー #コントロール #理論

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