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国家資格

どうもこんにちは

以前自分が書いた記事の大幅リライトです

学生さんに『トレーナーになるためにはなんの資格をとればいいですか?』と聞かれることがあります。
この問いに対する答えにはいつもとても困るのと、むしろ答えが無いような気がしているので、今日はちょっと回り道してお話ししたいと思います。 
長文になります

以前SNSでとある有名人が
『「マッサージ」という言葉を市場に解放した方がいい』『誰でもできるマッサージという行為を、マッサージ師以外の人が行うことを禁止しているのはおかしいのでは』といった旨の発言をされ、一部の業界関係者と議論になっていました
日本の法律では「医師以外のものが医療行為を業として行う事」を禁止していて、その医療行為の一部とされる「マッサージ」を医師またはあん摩マッマッサージ指圧師(以下:マッサージ師)の国家資格保持者以外が業として行なったり標榜することはできないことになっています

国家資格を持っていない人が施術をしているマッサージ屋さん(表現がおかしくなりますが)は看板に「マッサージ」と書かず『リラクセーションマッサージ』とか『揉みほぐし』などと言った微妙な言い回しでマッサージ的なサービスをやっていることを告知しています
(ちなみに理学療法の一部としてマッサージ手技を使用することがある事は法的にも明記されています)

くだんの有名人の方の主張は
『「マッサージ」という行為は家族間やスポーツ現場で選手同士などでも広く一般的に行われていて、中には国家資格を持っていないくても技術的には有資格者となんら遜色ない人もいる。
素人がやるのは危険だというがエビデンスもなく本当に危険であるとも言えず有資格者しかおこなってはいけないロジカルな理由が見つからない。
法的に「マッサージ」を規制する事が結果的に、行っている内容に変わりのない「リラクセーションマッサージ」や「揉みほぐし」「整体」などの曖昧な言葉を生み出し混乱を生んでいるのでは』 
というものでした

当然それに対して「マッサージ」はそんなに簡単なものではない!そういう認識が危険だ!とかみつく人がいたわけです。
マッサージ師以外の人がやってはいけない一番の大きな理由は「危険だから」という主張です。
もちろんそれはマッサージ自体が危険という意味と、その対象が危険か危険でないかの線引きができないという意味の両方があるとは思います。当然プライドもあるでしょう

確かに、鍼を刺すような行為なら有資格者にだけ許されているのも納得いきますが、揉んではいけない、少なくともそれをマッサージと言ってはいけないというのはなんだか極論な気もしますし、一方で安易に治療行為としてマッサージを解放することで揉んではいけないものまで揉んでしまうなどのリスクを考えると医療資格を持っている身からすると規制されていて当然な気もするし…
デリケートな、それでいて考えさせられる良い問いです。

さて一方、スポーツの現場で「トレーナー」と自称するのに実は明確な資格は制度はありません。
仕事として怪我に対応したり予防のエクサイズを処方したりするわけですから厳密に言えば医療行為を行なっているわけで、医師法違反と言われてもおかしくないのですが。
スポーツの現場でトレーニングを指導したり、怪我の応急処置を行なったり、予防のエクササイズを指導したりと言ったいわゆるトレーナー業は、独学でも実力さえあれば自称でき、需要があれば仕事にできます。

矛盾していますよね
一見安全そうに見える「マッサージ」は国家資格がなければ仕事にできなくて、サービスを受ける側が危険を被る可能性があると思われる(医療行為の一部を行う)仕事である「トレーナー」には特に法的制限なく名乗れる。(繰り返しになりますが厳密に言えば行為としてはダメです。それと業界関係者の方々が質の担保に尽力されていることは十分承知してますので悪しからず)


それでもなぜそんな事がまかり通っているのか
僕の個人的な意見としては、結局のところ医療資格だって「危険だから他の人はやってはいけない」という以前に他の業務独占の国家資格と同様に『その仕事のクオリティを国が保証しますよ』ということでしか無いのだと思ってます。

理容師じゃ無い人が友達の髪をバリカンで刈っても、医師以外の人が傷口に絆創膏を貼っても、マッサージ師以外の人が痛いところをさすってあげても特別すぐに罰せられるわけじゃ無いけど、その質は誰も保証してくれませんよね
国家資格は単に国がその人の技術を認めますから、安心してサービスを受けてくださいねーってこと。
消費者を守るためであって、有資格者の仕事を確保するためのものではないってこと。
(少なくとも理容師ならハサミの使い方くらいは知っていて耳までは切られないでしょうし、髪の毛がタンパク質から出来ているくらいは勉強しているだろうなということはわかります。うまいか下手かは置いておいて)

さて随分遠回りしましたが、それを踏まえて
トレーナーを目指していて、どんな資格を取るべきかと悩んでいる人は自分がトレーナーとして活動している姿を想像してみてください。
想像の中の自分がやっていることが怪我のファーストエイドなら柔道整復師、トレーニング指導ならNSCAの認定、東洋医学的なケアなら鍼灸師、選手を揉んでいるならあん摩マッサージ指圧師。もっと言えば病院で手術後からグランドに返すまでのリハビリなら理学療法士、栄養指導なら管理栄養士、薬剤師もありですね。もちろん、それらを全部やりたければ医師ですが。
スポーツ現場で最も重宝される日本スポーツ協会のアスレチックトレーナー資格も、もちろん。

どの資格も、資格がなければトレーナーを名乗れないわけではありません。
その辺のジムで器具の使い方を説明しているのをトレーナーだと思っている人もたくさんいます。
それでもその資格はあなたの専門性をわかりやすく表してくれて、最低限あなたのできる事を法的に証明してくれます
その資格があなたに仕事をくれるわけではありません

そう考えると、わかりやすいのではないでしょうか。

簡潔にまとめられなくてごめんなさい。
いまトレーナーを志している人にとってちょっとでも考えるきっかけになって、参考になったらいいかなと思います 

ちなみに、トレーナーを仕事にしたいと思って柔整専門学校に入学したのに結果として全くスポーツ現場に携わっていない柔道整復師はとっっっっっっっってもたくさんいます。
その相談も結構受けるんですが、それについてはまた機会があればお話ししたいと思います


それでは、また。







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