コンタクトセンターの業務設計は、暗黙知を形式知に整理整頓することから始まる。
こんにちは。
コンタクトセンター設計コンサルタント NeoContact 出水です。
いま、6社のコンタクトセンターの構築のお手伝いをしています。
今回は「入口でつまずく」業務設計についてのお話です。
1.暗黙知と形式知
暗黙知とは個人の身体的・主観的な経験値で、勘・信念・思考法・共感力などです。形式知とは文書・書物・数式・図表など言語化・記号化されたものです。人は暗黙知のほうが豊かであり、人の集団である組織はどのようにそれを活かすか?が大切なようです。
2.暗黙知は伝えてもすぐ忘れる
コンタクトセンターでよく見かける風景は「手上げ」です。なぜ手を挙げるか?答えが分からないか、質問の意味がわからないからでしょう。素早く管理者の方が駆け寄ってサポート。なんとか答えられました。では、この風景はなぜずっと変わらないのでしょう?
オペレーターの方は入社すると多くのことを学んでいきます。「座学」なんていいますね。この場面で学ぶのは業務知識がほとんどだと思います。ところがここで気持ちが折れてしまう新人オペレーターの方がいます。「こんなに覚えられません。業務に向いていないと思います」の一言で最初の離職者がでます。
「ベテランのオペレーターはマニュアルなど見なくても応対できる」よく聞く話しですね。長きにわたって積み重ねてきた暗黙知ほど強い味方はありませんが、困ったことに暗黙知は個人の頭の中であるため共有できなのです。しかし管理者はこうした暗黙知を形式知にしなければと手間をかけてマニュアルを作り蓄積していきます。
いま、多くのコンタクトセンターではこうしたマニュアルをオペレーターがフロント画面で見るために電子化しようとしています。DXでしょうか?しかし単に電子化しても文字が連なりどこにあるかもわからないマニュアルは紙と変わりません。いくら研修を重ねてもすぐ忘れてしまうのです。結局、手上げとなります。
3.形式知は整理整頓しないと使えない
コンタクトセンターの業務設計は暗黙知を形式知に整理整頓することです。大切なことは暗黙知を文書化することではありません。
1)形式知化する時にその中身を整理し、いらないものを捨てる
2)オペレーターに伝わるように整頓する
3)文字だけでなく図式を使い見やすくする
この後でデジタル化しオペレーターがすぐ使えるトークスクリプト、FAQへのリンク、業務の全体像がわかる概要などをフロント画面に表現するとよいのです。
4.業務設計はビジネスモデルを変える
整理し、いらないものをすてることは企業が行っている業務そのものを変えることにつながります。お客さまに伝わりにくい業務の流れはそもそも企業の都合で生まれています。無駄な手続き、仕組みが複雑なキャンペーン、違いのわからない商品やサービスなど形式知化すると見えてきます。
ナレッジマネジメントという言葉やメソッドがたくさん公開されていますが真のナレッジマネジメントはマニュアルをデジタル化することではありません。業務設計の最初のつまづきを防ぐためにも、ビジネスモデルをシンプル化しお客さまやオペレーターが迷わないナレッジをつくることからはじめましょう。