【250字レビュー】ニムロッド

文藝春秋にて読了。ダメな飛行機コレクションからバベルの塔、塔の上からの離陸といったイメージがスーッと染み込む透明な感触。この物語の中で何かモノとしての感触を与えるのはダメな飛行機のイメージだけ。田久保紀子も荷室も存在が希薄で、それぞれ自己の内側にこもっている。この2人を繋ぐ主人公のiPhone8とプロジェクター画面といった仕掛けも荷室の書く小説と相まってSF的なクールさ。透明な青いフィルター越しのイメージ。未来の抽象化された無機質で孤独な生活か。現代はすでに未来なのかもしれないという不思議な感慨がある。

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