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留学日記#22 23.11.7. 旅行②ベルン

 イタリア旅行の疲れも抜けぬまま早朝に起床。この日はスイス・Bernベルンに行く。唯一留学前から行くことを決めていた都市だった。

 タンデムEとジュネーブ駅で落ち合い、一緒に電車に乗る。ベルンはドイツ語圏だが電車一本、二時間弱で行くことができる。

 街に着くといかにもドイツらしい光景が広がっていた。石畳の商店街、赤レンガの屋根、鐘を響かせる時計塔。街全体に角ばった硬質さを感じる。スイスで面白いのは、言語圏に合わせて文化も少しずつ色を変えていくところだ。同じ国だという印は至るところにあるのに、それよりももっと深いところで異色。五感でたとえれば手触りが違う。Eに「なんでスイスは言語が統一されないんだろう」と尋ねてみたら、「各々が言語に自信を持っている」かもしれない、とのこと。やはり各地域に文化と伝統があるのだろう。

ベルンの街並み
小さな階段のような斜面は窓のように開くことができ、地下への入り口となっている。怪しい酒屋でリキュールを買う。文字通りアングラで楽しい。

 まず向かったのはパウル・クレー・センター。スイスそれ自体に文化的な興味があるとすれば、ルソー・ソシュール・クレーの三人に集約される(スタール夫人にも興味はあるがまだ読んだことがない)。パウル・クレーが好き。美術はあまり詳しくないながら、今のところ一番好きな画家に数えている。だからクレーセンターには留学が決まったときからずっと行こうと思っていた。

丘の上、牧場の奥に先進的な建築が見える
外観に比して展示スペースはそこまで広くない
それでも見応えあり
天使展
天使を自分で描くコーナー
右と中央が僕の、それ以外の三つがEの作品
本棚には意外にも邦書が多い
クレーの日記少し読んだけれどとても面白い、欲しい

 線の筆致と面の色彩との極めて抽象的な交錯が、その果てで天使や人形と言ったキャラクター性に受肉していくのがわけがわからなくて興味深い。

 街に戻ったカフェで一息ついたあと、もう少し散策を続ける。イタリアに比べてこの頃のスイスは常に空が怪しく、雨が降っては止んでを繰り返している。震えるほど寒いが、現地人は平気な顔をしている。

 熊のいる施設に行ったが見当たらなかったので、丘をクレーセンターとは逆方向に登ってrosengartenバラ園を歩いた。バラはほとんど枯れかけていたが、高みから一望できる街並みが素敵。ベンチでチェットベイカーを流しながらEと話した。

冷たく緊張した空気にときおり鐘が鈍く響く

 しばらく街を見下ろしたあと、雨と寒さにぎゃーぎゃーはしゃぎながら帰った。

 自然、街並み、美術館。こちらで生活している中で、視覚に没頭する頻度が増えたような気がする。もっと言えば感性の比重が高くなったのかもしれない。それは僕にとって素直に心地良いことだ。

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