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【Mリーガー必見】レギュラーシーズンで足切りを回避する方法

今回はMリーグのレギュラーシーズンの最適戦略を考えていきます。

先にMリーグの全体ルールについて説明します。

・全8チームの参加
・1年間で1シーズン行われる
・レギュラーシーズン90試合→セミファイナルシーズン16試合→ファイナルシリーズ12試合の3段階に分かれている
・各段階ごとに下位2チームが脱落する
・セミファイナル以降は直前の段階のスコアの半分が引き継がれる

このように足切り制度とスコアの引き継ぎのある条件戦になります。足切りラインの争いもいつも白熱しており、途中まで下位に居ても足切りさえ回避できればスコアが半分しか引き継がれないので、逆転するチャンスがいくらでもあります。一方でいくら運を貯めても(?)足切りを突破できなければ逆転のチャンスはありません。

そこで1つの疑問が生まれました。

途中までは足切り突破ラインだけを意識して、ファイナルシリーズでスコアを伸ばすのが最も優勝しやすいのでは?

Mリーグの順位点は+45/+5/-15/-35とトップのメリットが大きいルールです。なので1局単位ではトップ取り戦略が有効になりますが、プラスにもマイナスにも振れ幅が大きくなるため足切り突破には向いてないように感じます。そのような戦略が最終的に優勝を目指す場合に果たして有効なのかどうか?というのがテーマになります。

シミュレーターの概要

今回はシミュレーターを回して検証します。他チームは一切考えず自分のチームのみ考えます。レギュラーシーズン1回の試合数90回を特定の順位分布でこなしていきます。このときの最終スコアのデータと足切りライン以上かどうかを集計していきます。

足切りラインは2020年Mリーグの7位と同じ最終スコア-264.3とします。

順位を取ったときのスコアはMリーグ成績速報(非公式)さんのデータを参考させていただきました。ここでは1位〜4位を取ったときに得られるスコアを正規分布と仮定します。正規分布の平均値と標準偏差はツイートと同じものを使います。

例えば1位を取ったとして、さらに1位の正規分布から40000点の素点が得られたとします。素点40000点-25000点=15000点で1000点1ポイントなのでスコアは+15、1位の順位点+45を加算してこの試合で得られるスコアは+60ポイントとなります。

ここでシミュレートには3つのパターンを用意します。パーセンテージは1位/2位/3位/4位の各確率です。公平性のために平均順位が2.5になるように調整しています。

パターンA:25%/25%/25%/25% 平均順位2.5 順位期待値0
パターンB:30%/20%/20%/30% 平均順位2.5 順位期待値+1
パターンC:20%/30%/30%/20% 平均順位2.5 順位期待値-1

パターンAがバランス戦略、パターンBがトップラス戦略、パターンCがラス回避戦略となるようにしました。

10000試合回した結果

先にパターンAで10000試合行った場合の着順分布は図のようになりました。

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これが1試合の着順分布に近い形になります。4つの山形が出てきて、なんとなく右から1位〜4位のスコアが当てはまると予想できます。スコアは正規分布で仮定しているので山の形はそこそこきれいになってるでしょうか。

レギュラーシーズンは90戦なのでこの分布から90回選んだものを、次は10000シーズン試行したときの分布を見ていきます。

10000シーズン回した結果

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グラフでは違いが分かりづらいので、数値に注目してみましょう。

パターンBのトップラス戦略が最もレギュラーシーズン突破率、平均スコアともに最も高くなりました。

パターンBのトップラス戦略のほうが標準偏差(ばらつき)が大きくなるのは予想通りでした。このためレギュラーシーズン突破は安定しないだろうと思ってましたが、意外にもレギュラー突破率も高いということです。パターンCのラス回避戦略は標準偏差は低いものの平均スコアが低く、これが足切りに大きく響いているようです。

ところでグラフはどれもきれいな山の形をしています。1試合のスコア分布は4つの山がある凹凸分布なのに、なぜシーズンだときれいな形になるのでしょうか?
実は1試合のスコア分布に関係なく、シーズンスコア分布は正規分布に収束することがわかっています。
一般的に母集団の分布によらずサンプルサイズが大きい標本平均は正規分布に近くなります(中心極限定理)。ここで使ってるのは標本平均ではなくスコア合計なのですが。90試合というサンプルサイズが十分大きいため、正規分布にかなり近くなるということですね。
正規分布は人間の身長のように、平均値が一番人数が多く平均から離れるにつれて人数が減っていく、ざっくり言うときれいな山の形をした分布です。

足切りラインが変わる場合は?

シミュレーターでは足切りラインを設定しましたが、足切りラインが実際どこになるかはシーズンが終わってみないとわかりません。そこで足切りラインが変化したときに本当にBのトップラス戦略が良いのかを別の図から検証します。

累積分布関数

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やや強引ですが正規分布を仮定して、10000シーズンの平均値と標準偏差をもとに累積分布関数を作成しました。

【累積分布関数の読み方】
累積分布関数は「ある地点のスコアがそれ以下の値になる確率」を表しています。言い換えると「ある足切りラインのときに足切りされる確率」とできます。
例えば足切りラインが−250の場合、Bのスコア−250を見ると確率が0.22なので足切りされる確率が22%となります。Cは34%なのでこの場合足切り突破率が高いのはBになります。
要するにグラフが下にある方が優秀です。

図を読み取ると、全体を通してグラフの高さはC>A>Bとなっています。なので優秀なのは不等号が逆になってC<A<Bとなります。

よって足切りラインによらず常にBのトップラス戦略の方が足切り突破率が高いです。

実はスコア-1200付近にBとCの交点があり、そこでCのラス回避戦略と逆転します。鬼のようにラスる確率はBのほうが高いのでこれには納得ですね。しかし足切りラインが少なくとも-250付近に落ち着くと予想するのであれば逆転することはありません。

箱ひげ図

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【箱ひげ図の見方】
箱(四分位範囲)の中に10000シーズンのスコアのうち25〜75%が入り、棒の中には外れ値を除いた値が入ります。箱の大きさをもとに外れ値が決まりますが、見やすさのため除外しました。

Bのトップラス戦略は広がりが大きいのでスコアのばらつきは大きいですが、箱の位置も高くなります。結局トップラス戦略のほうが平均スコアが高いため、多少のばらつきはあってもレギュラーシーズン突破率が高いということですね。

超トップ取りvs超ラス回避

このままだと「平均スコア>スコアのばらつき」なのでばらつきが大きくなるように極端な順位分布を試してみます。
パターンDは超トップ取り、パターンEは超ラス回避としてみました。

パターンD:35%/15%/10%/40% 平均順位2.55 順位期待値+1
パターンE:15%/35%/40%/10% 平均順位2.45 順位期待値-1

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平均スコアはパターンDの超トップ取りのほうが高いですが、標準偏差が大きくなったので足切り突破率はパターンEの超ラス回避のほうが高くなりました。

グラフの見た目も大きく差が出てきました。パターンDのほうがばらつきが大きくなっていかにも安定しないスコアに見えますね。これはいい勝負ができそうです。

累積分布関数

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スコアが−218でDとEのグラフの上下が入れ替わりました。

足切りラインが-218より低い場合はEの超ラス回避戦略が良く、−218より高い場合はDの超トップ取り戦略が良いことがわかります。8チーム制で過去2回の足切りラインは-276.3、-264.3なので、平均-270程度。これをもとにするとEの方が良いと予想できます。

「足切り突破率」はEの超ラス回避戦略、しかし「最終的に優勝する確率」となると平均スコアの高いDの超トップ取り戦略も可能性が出てきます。ルールではセミファイナル、ファイナルでスコアが半減されていくので、最終的な優勝率を比べるにはこれを加味して1シーズン通してのシミュレーターを作らないといけないようですね。

ここまで書いてますが、ラス回避戦略が有利な状況を作るにはここまで極端にする必要があり、実際長期でここまで極端な打ち方をスコアのバランスを取って行うことは難しいでしょう。なのでこの結果は参考程度にするのが良いと考えています。

まとめ

トップラス戦略の方が足切り突破率、平均スコアともに高いことがわかりました。ここからスコアのばらつきよりも平均スコアのほうが影響が大きいということもわかりました。ただし極端な順位分布では逆転するケースもあります。

ということで1半荘単位でスコアを最大化する選択が最適戦略になりそうですね。特にトップが大きいルールなので足切りを考えずにプレイするのが良さそうです。

冒頭で述べたようにレギュラーシーズンとセミファイナル、ファイナルシリーズで戦略を変えることで優勝確率を最大化できるような戦略を探していたのですが、そもそも平均スコアを高くしましょうということで落ち着きました。ただし極端な順位分布の場合は再度シミュレーターをかける必要がありそうで、こちらは今後の課題にします。

しかしこのまま最適戦略になり得るか?というとはっきりそうとは言えません。今回は自分や他チームの状況を無視していたのですが、レギュラーシーズン終盤など残り試合数が少ない状況では無視できないはずで、その場合はスコアよりも足切りを確実に突破できるように選択するほうが安定しつつ優勝を狙うこともできるでしょう。セミファイナルシーズン以降はスコアが半分以下にしかなりませんからね。

今年のMリーグももうすぐ開催ですね。今後も麻雀と統計やデータを絡めたネタで投稿するのでぜひご参考ください。

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