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深夜の店員さん。


疲れ切った体と頭で電車に乗り最寄りの駅まで運ばれていく。

晩ご飯の作り置きは底をついている。
何を食べようか、今日はコンビニでいっかぁと思っていたがスーパーでしか買えない物が必要なことを思い出した。


コンビニに比べれば、スーパーは店内を一周しないとレジに辿り着けないので疲れている時はなるべく避けたいところである。

コンビニよりも安く品質がいい気がするのは分かってはいるが、1分でも早く帰りたい時には躊躇する場所だ。


ただ、明日の朝必要なものがあるのでスーパーに行った。

全ての品物を揃え、無事に必要なものが買えたところでお惣菜のコーナーに行く。


深めの時間だったので、お惣菜コーナーもすかすかの状態だった。
同じように深夜のスーパーでお惣菜を選ぶ人たちもなんだか疲れているように見える。

お疲れ様です、と心の中でつぶやいた。


ミニ酢豚があった。最後の一個。
美味しそうだなと思った。
中華料理の中ではトップに食い込む好物である。
でもこの時間に酢豚はなあ、と思い他も見てみるかと思った。


結局一周したけれど疲れた頭の判断力は全くなく、他に食べたいものを見つけられなかった。

さっき見た酢豚にするかぁ、と思い戻ると目の前で売り切れてしまった。

あぁ、私の酢豚が…と思った。

当然、まだお金を支払っていないので私の酢豚ではない。

唯一食べたいと思った酢豚が無くなってしまったので残念な気持ちになりながら、結局鶏肉のたっぷり入ったサラダに決めた。


レジに進むと、深夜にも関わらず人が並んでいてまた少し帰る時間が遅くなることに残念な気持ちになった。

エコバッグを持っていない事に気がついた。
小さい方の袋を買うことにした。

私の順番が来た。


こんばんは!ありがとうございます!


とよく通る声で店員さんがにっこり笑顔で対応をしていた。

母くらいの年齢の女性の店員さんだった。
この時間なのにこんなに明るく接客してくれるんだ…と思った。

通る声なのはもちろん、笑顔で、でも押し付けがましくない絶妙な距離感で無駄なく仕事を進めていく。

疲れて帰ってきてイライラしているお客さんも多い時間帯のような気がするが、全くそんなことを感じさせない雰囲気だった。

凄いな、と思った。
その店員さんがたまたま夜勤で入ったばっかりだったかもしれないし元気な状態だったかもしれないけれど自分が疲れているからとか、夜だからとかそんな条件など仕事に持ってこないようなそんな印象を受けた。

スムーズにお会計が済んだあと、なんだかお礼を伝えたくなったのでいつもよりしっかり目を見て

ありがとうございます!

と言った。

しっかりと目があって、にっこりと最後まで見送ってくれた。


体に疲れが出ている時ほど、名前も知らない他人の優しさは心に温かく響く。

私もプロとして仕事を任せていただいてる、疲れとかそんな事は一旦置いておいて最後まで全力でお仕事をしたいなと改めて思った夜。


とても素敵な時間をスーパーによったからこそ過ごすことが出来て幸せな気持ちをいただきました。


ありがとう、深夜の店員さん。


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