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#36 伸び悩み?自分はデザイナーに向いていない?学べば学ぶほどデザインがわからなくなる、学習のジレンマを乗り越える。

デザインを一生懸命に勉強していて、学べば学ぶほど余計にわからなくなることがあります。これは単なる伸び悩みなのか、それとも自分はデザイナーに向いていないのか?今回は、多くの学習者が経験するこのジレンマについて、デザイナー夫が教育の場で伝えていることをレポートします。

デザイン学習者に共通のジレンマ

デザイナー夫が出会うデザイン学習者の背景は様々です。美大で教えている美大の学生たちもいれば、オンラインで開催している「デザインの仕組み」講座に参加される独学でデザイン学んでいる方もいます。また、すでにデザイナーとして仕事をしながらスキルアップに励んでいる方たちも少なくありません。

皆さん、デザインの勉強そのものは「目からウロコ」の連続で、新たな発見を楽しんでおられるようですが、共通の悩みもあるようです。例を挙げると、

・デザインを学べば学ぶほど「自分には知らないことが多すぎる」と気付き、不安になる
・このままデザインの勉強を続けて良いのか?自分はデザイナーに向いてないのでは?と感じる
・進歩を実感できず、デザインの勉強に行き詰まりを感じる(特に独学)

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しかしデザイナー夫は、 「デザインを学べば学ぶほど、デザインがわからなくなるというジレンマは正しい悩みで、わかった気になるよりもずっと良いことなので、決してそこであきらめないように」と学習者たちを励ましています。

「デザインがわからなくなる」というジレンマや不安は、デザインの勉強過程において実はとても重要なポイントなんだそうです!どういうこと?キーワードは、「アンラーニング」(Unlearning)です。

「アンラーニング」(Unlearning) 

「アンラーニング」(Unlearning)とはなんでしょうか。

デザイナー夫曰く、「アンラーニング」(Unlearning)は、「ラーニング」(Learning)とセットで考えるとわかりやすいようです。まず「ラーニング」とは学習のこと。学びを通して「あぁ、分かった!なるほど」という思いに至る学習のことです。

それに対し「アンラーニング」(Unlearning)とは、学んだことを「忘れる」ということではなく、「実は、学んでいることについて自分は何も知らなかった」と思い至る、もっと深い学びのことなんだそうです。少し哲学的にいうと「不知の知」と言われたりもするそうです。ふむふむ👀

この「アンラーニング」こそ新たな可能性を発見する深〜い学習で、成長に欠かせない学習なんだとか。

Unlearning (アンラーニング) の後に押し寄せる不安

「自分は何もわかっていなかった」ということがわかると、一気に世界が広がって感動するものの、「自分が、いかに空っぽだったか」に打ちのめされるものです。自信を失い、不安を感じます。

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でも、落ち込むことはありません。むしろ「知ってる、知ってる」と思っているうちは、物事はそれ以上深くなりませんし、新しいことも生まれません。デザイナー夫は、美大でもオンラインの講座でも、毎回『知っていると思うことは、それ以上学ぶことはできない』という2000年も前の哲学者の言葉を引用してこの点を強調しています。

つまり、「デザインを学べば学ぶほど、デザインのことがわからなくなる」というジレンマや不安な気持ちは、むしろデザインについて深く学べている証拠であり、とても正しい成長過程なのです!そうなのか!それを知るとちょっとホッとします。しかし、では次にどうしたら良いのでしょう?

「不安」に対する反応は二つに分かれる

デザイナー夫曰く、この「アンラーニング」は、デザインの制作過程でも起こるそうです。例えば学生の多くは、真剣に制作に取り組めば取り組むほど、何を作ればよいのかわからなくなります。アンラーニングを通して「自分は何もわかっていなかった」と思い至るわけですから、当然といえば当然。。。「不確実性」と対峙し「不安」を抱えた学生たちの反応は、たいてい二つに分かれると言います。

1.知っていることに戻る
アンラーニングの結果、「何を作ればよいのかわからなく」なった学生は、自分が知っていることに戻りたくなります。以前だれかに喜ばれた方法や先生に褒められたやり方を繰り返します。しかし、同じことの繰り返しからは、新しい意味や価値は生まれません。新しいことも学べません。不安からは解放されるものの、ブレイクスルーは体験できません。

2.不安にしっかり向き合う
「不確実性」と正面から向き合い、勇気を出して制作を続けていきます。不安で、自信もなくして「もう前に進めない」という気持ちに襲われても、とにかく、その不安をしっかりと抱き締めて前に進むことでしか、新しい意味は生まれません。何度も何度も失敗しますが、制作を続けます。

わからないなりに、必死に手を動かしているうちに、ふと自分でも思ってもいなかった素晴らしい作品が生まれます。そうすると「不確実性の先にこそ、何かがある」という期待や自信が生まれます。それがデザイナーとしての軸になります。これはひたすら手を動かし続けていないと経験できない瞬間でしょう。(デザ夫さん)

実際、新しいものを生み出すには未知の領域に踏み込む必要があります。そこには「不確実性」や「不安」が必ず伴います。

デザイナー夫が、この「アンラーニング」や「不確実性との取っ組み合い」を学生に体験して欲しい理由はいくつかあると思いますが、一つ挙げるとすると「この闘いはプロになってもずっと続くから」ということです。

そのジレンマはデザイナーになっても続く

デザイナー夫自身も、新規のプロジェクトごとにこの「知れば知るほどわからなくなる」というジレンマを抱えます。例えば、依頼されたプロジェクトについて調査や分析を繰り返しているうちに、「わかっていると思っていたけど、実は全然分かっていなかった!」ということを発見し、そのうち「自分は何をわかっていると思っていたのか」すら分からなくなるという、本当にわけがわからない状態になっている模様です👀その時は非常に苦しそうです。【デザイナーの妻】の観察による感想です。

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でも、デザイナー夫が講座の中で説明するように、その「分からなくなった状態」や「不確実性に伴う不安」は決して「後退」ではないのだそうです。その過程を受け入れてこそ、本当の理解を得、それを乗り越えたところに新しい意味や価値が生まれるのだそうです。

先日のストアカ「デザインの出前授業」では、参加者の方から「デザイナー夫さんが不確実性と向き合って、ブレイクスルーを経験した実例がありますか?」というご質問を受けました。デザイナー夫は、あきらめずにスケッチをし続けたロゴ制作で、ある時ふと「!!」ブレイクスルーを経験した実例をお伝えしていました。

結論:伸びしろしかない!

ということで、「デザインを学べば学ぶほど、デザインがわからなくなる」というジレンマこそ、本当のデザインの学び!ということのようです。「デザインをもっとわからなくなろう!」と言ったら大袈裟ですが、「わからない」は「伸びしろ」といっても過言ではないのです。そうやってデザインの世界がどんどん広がることこそ、デザイナーとしての成長かもしれません。

今回は、「これを実践すれば悩みは解決する!」といった実用的な話ではありませんでしたが、学習中に感じるこのジレンマが「後退」や「間違い」ではないことを知っていただければ嬉しいです。デザイン学習中の方が、その不安を抱き締めて前進する力になることを願っています。

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デザイナー夫の「デザインの出前授業」では、「アンラーニング」(Unlearning)の過程についてスライドを見ながらじっくり学ぶことができます。デザインを勉強中の方が、ふわっと抱えている「これでいいのだろうか?」という学習の悩みに対する答えを見つけていただけると思います。よかったら授業の詳細をご覧ください👀✨来年2022年1月の授業日程を追加しました。

デザイナー観察日記#36 読んでいただき、ありがとうございました。

記事の中で使わせていただいているイラストは、なのなのなさんのイラストです。



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