「はい。はい、はい、はい、そうなんです」 電話越しに肯定するのは簡単だ。なんせ左手と足は何をしていても許されるんだ、こんなに楽なことはない。 「はい、そうなんですね。確かに、僕もそう思います。そうですよね。はい、はい。ではまた、はい、はい、ありがとうございました。失礼いたします」 本日の業務は終了、明日も10時から世界征服。意味もなく力こぶに力を入れる。 ムキっ。こっそりと顔を出した彼に、何故か驚かないでいた。 「こんばんわ、見たことある?」 「ないで
空が青く見えたら歩いてもいい。とりあえず日差しを浴びてみたい、風を感じるところで。 ベランダでいい。肌や鼻で拾う感覚を忘れないためにも。気持ちがいいとか悪いとか、あんな風とかこんな匂いとか、認識しているものがぼやけたまま記憶される。それが同じような天気や風や気分によって掘り起こされるとき、なんとなく最高になれる。 風邪で休んだ平日。琴の音が聞こえた、曲はさくら。気分を逆算して言葉にすると、 日がさす部屋は森下で、気分はちい散歩。 感覚を思考する。 江東区森下
春、中学生になった。新鮮な体験はほんの数週間だけ。進学の高揚感を生活に向けていれば変化を受容できただろうに。後悔しても遅い、高揚感はぼうっとした妄想に浪費した。 そんな数ヶ月だったから、蕎麦を食べながら考える。幸いなことに赤と白に勝敗をつける趣味はない。クリスマスはホーム・アローンに気を取られてしまったが、今度こそ答えを見つけよう。変化をもたらすにはぶれない自分が必要だ。憧れの学校生活を送りたければ、学校生活なんぞ目に入れてはならない。夢中を手に入れるのだ。気がつけばテレ