成人式前日夜に夜更かししながら思うこと

昔母が顔パックしている姿を見て、怖い怖いと泣いたことがあった。母も母で悪いのだ。洗面所から「ほら見てぇ……ばあ〜」と言って真っ白な顔パックを身につけた姿でまだ幼い私の前にぬるりと現れて。それを見て私は父にしがみついて泣いた。以来私の中で顔パック=母親というイメージが固まってしまった。
大学生になって初めて自分で顔パックを買った。何がいいか全然分からなかったから、『○○サイトランキング1位』みたいな王冠マーク付きのシールが隅に貼ってあるやつを選んだ。家に帰って、親が寝静まってからこっそり付けた。顔に貼り付けてくるりと振り返り鏡を見た時、あの日の母の姿と己が重なった。ああ、自分も大人になったのだ。対する母はもう顔パックなんて付けなくなった。
「おばさんはね、もうそういうお肌の気遣いとかしないのよ。めんどくさくてね」
コンタクトも、私が着けるようになって、入れ替わるように母は着けなくなった。洗面台のメイク用品の個数は、いつの間にか私の物の数が母の数を越していた。

明日は成人式だ。私は大人になる。母を越していく。そしていつか生まれるかもしれない私の娘に、私は越されていくのだろう。あと何年、私は女で居られるだろうか。

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