うさぎと亀の問題

うさぎと亀の物語を知っているか。

「2匹でかけっこをして、走るのが早いうさぎが圧倒的優位だったが、昼寝をしている間に、地道に努力した亀が勝った」という童話だ。

示唆は、「油断大敵である。地道な努力は良いものである」というものだ。

言いたいことはわかる。しかし、あれは、「たまたま昼寝をしすぎたうさぎ」だったから、亀が勝ったのであって、たまたま奇跡的に勝ったラグビーの南ア撃破のような1勝負を、一般化するのは我田引水すぎるだろう。つまり、普段はうさぎは昼寝はしないし、昼寝をしたとしても、そこまでは遅れないかもしれない。そうすると、今回は、100回中の1回のミラクルだったかもしれない。それだったら教訓は「地道な努力は100回に1回くらいは報われることがある」というべきで、その統計データもないのに「地道な努力は良い」とは、誇張すぎてJAROに怒られるだろう。

この童話の当時は「地道に頑張れば良いよ」という示唆は、プロテスタンティズムの倫理のごとく、マックスヴェーバーよろしく資本主義の推進のプロパガンダとなったが、現代は、これは「効率性が悪い」とも言われかねない。現代ならば、「亀とうさぎは100回、かけっこをしましたが、亀は100回中、1回しか勝てませんでした。しかし、洪水が起きた時は、亀は泳いで逃げましたがうさぎは溺れました」などの童話にして、「自分が勝てる土壌で戦うべき」などの示唆の方が、専門性が重宝される現代ではあるべき童話かもしれない。

あるいは、そもそも、このかけっこの発端は、亀がうさぎにバカにされたから「勝負しよう」と言ったものである。しかし、亀は普通に考えて、勝てるハズのない勝負に乗っているのである。そこを考えると、やはり「勝てない勝負はするな」という示唆を出すべきだし、あるいは、「勝てる勝負で勝負せよ」という話もできるかもしれない。たとえば「長生き勝負」とか。

そもそも、うさぎというのもよくわからない。うさぎはそんなに走るのは早くないだろう。そのたとえをするならば、チーターやインパラの方が良いのではないか。なぜうさぎか。これは、「うさぎが愚鈍そうだから」という容姿差別ではないか。あるいは、亀も遅いというレッテルを貼られて風評被害である。亀の消費者団体があれば騒がれているところだ。

少なくとも、あなたの敵は昼寝をしてくれるとは限らない。それは童話の最後に入れておくべきだろう。

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