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眠る前に読む小話

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眠る前に読む一言小話です 読者になっていただけるととてもうれしいです。
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#コラム

婚活のおける合理性と非合理性の矛盾

私、考えたのよ。あなたは合理的な人間。生き方も合理的であろうとする。結婚相手も合理的に探そうとする。

自分が譲れない条件を決めて、あとはできるだけ多くの人に合う。コンパや結婚紹介所、出会い系サイト、クラブ。

でも、それだけ多くの人と出会ってると、「この人いいな」と思える人と出会っても、「もっといい人がいるかも」ってなるよね。

そう考えると、あなたのように合理的に結婚活動をしている人は実は結婚

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ハンバーガーを毎日食べる男とハンバーガーが嫌いな女

「アメリカでは、インアンドアウトという美味しいハンバーガー屋さんがあってね」と、サダさんが喋る。

まさかこの人が、こんなにハンバーガーが好きだったなんて。

サダさんは、延々とインアンドアウトバーガーがいかに美味しいかを力説する。レタスのシャキシャキがすごいんだよ、と。私は、そのレタスは紀伊国屋の閉店後に調教されたレタスかしら、と考える。

インアンドアウトが素晴らしいのはわかった。ただ、問題は

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世界を救ったパン

ミチがカフェで友人を待っていると、隣の席の会話が耳に入ってきた。

- パンと他の料理の違いはわかるか?

白髪の恰幅の良い男性が、若い男に質問を投げかけている。パンと他の料理の違い?主食じゃないということかな。

- なんでしょう。こねる必要があるということでしょうか。でもそれだったら、そばやピザもそうだし、、、

前の男が、頭をひねりながら喋る。

- 違う。パンはな、手で食べるということだ。

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黒板に文字を描くのがとてもきれいな女の子の話

昔々、あるところに女の子がいました。その女の子は黒板に文字を描くのがとても上手でした。あまりにも上手で、彼女が黒板に描いた算数の回答は、間違っていても、正解にされることがあるくらいでした。先生がその文字の美しさに見とれて、うっかり正解にしちゃうんでしょうね。

学校も、市の書道コンクールに彼女の板書を送ろうかと悩んだほど美しい文字でした。ある時は、いたずらっ子たちにせがまれて彼女が黒板にきれいな女

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優しい雨

駅を出ると小雨が降っていた。最近、雨が続く。

でも今日ばかりは、この小雨が気持ち良い。待ち合わせのカフェに向かう途中、過去の思い出が蘇る。

彼と言った旅行、かけてくれた言葉、一緒に作った料理。なぜか別れ際は、良い思い出ばかりを思い出す。もし人間の脳が優れているならば、こんな時は、別れの後押しをしてくれよ、と思う。別れるのに決心が鈍るじゃないか。彼が神経質すぎたところとか、朝が起きれない点とか彼

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挨拶

- ミヤモト、聞いてくれるか

- どうしたんですか

- こないだ、社長の家に遊びにいかせてもらったんや

- いいですね。どうでした?湾岸沿いのタワーマンションですよね

- そうや。きれいやったで。まぁ、でもそれはええねん。行く時にエレベーターのったんや。社長の部屋は30階くらいやったかな。ほたら、女性も乗ってきたんや。

- 女性とエレベーターが一緒になったらドキドキしますよね

- いや

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サービスエリア

「3連休だからか、車混んでるね」

天現寺から首都高にのった乗った車の流れは、箱先ジャンクションで少し滞留していた。

「そうだね。朝からこんなにみんなどこに行くんだろうね」

「私たちも同じ風に言われてるけど笑」

車の中では、英語のPOPミュージックが流れている。女性のiPhoneが車のケーブルと接続されている。女性は気持ちよさそうに音楽を口ずさみ、外を眺める。

男は、前の車をじっと見つけて

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バンジージャンプの価値

バンジージャンプ、というものがある。高いところからゴムの命綱をつけて飛ぶというものだ。

日本でもっとも高い竜神バンジーは茨城県にあり、100メートルの高さを誇る。竜神バンジーで年間1万人ほどの人が訪れているとのことだから、日本中では10以上のバンジーがあると考えると(実際はもっとあるだろうが)、最低でも10万人以上の人が毎年、飛んでいるということだろう。流行りだしたここ10年の延べ数でいえば10

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運転から見える相手の素顔

車を運転している時は、本性が現れるという。その話を聞いて以来、私は運転する人の所作を注意深くみるようにしてきた。

だいたいの人が普段の行動と運転の行動は一緒だった。たとえば、レストランで店員さんに乱暴な口を聞く人は、運転する時も乱暴だった。車の割り込みにクラクションを鳴らしたり、信号無視すれすれで道を渡ることもあった。

逆に普段から丁寧な物腰の人は、運転でも丁寧なことが多かった。高速の合流で道

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A型の彼女と最新のナビ

「家を出る時は電気を消して!」

何度、彼女に言われたことか。今までの彼女にはそんなことを言われたことがなかった俺にとって、彼女の小言は、「うるさいことを言う人だな」と感じていた。

「パジャマはちゃんと畳んで」

「起きたらベッドの布団はめくっておいて。汗がこもらないように」

「お風呂の桶は使ったら裏返しておいて。カビがはえるから」

と、ことあるごとに「改善」を求められた。初めてのA型の彼女

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うさぎと亀の問題

うさぎと亀の物語を知っているか。

「2匹でかけっこをして、走るのが早いうさぎが圧倒的優位だったが、昼寝をしている間に、地道に努力した亀が勝った」という童話だ。

示唆は、「油断大敵である。地道な努力は良いものである」というものだ。

言いたいことはわかる。しかし、あれは、「たまたま昼寝をしすぎたうさぎ」だったから、亀が勝ったのであって、たまたま奇跡的に勝ったラグビーの南ア撃破のような1勝負

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しゃべりかけない美容室

※前回の続きです

「美容院ナビ」の登場は洗髪ブームを起こしただけにとどまらなかった。

ユーザは洗髪以外にも多くのものを望んでいたのだ。それを明らかにした。

その1つが「喋りかけない美容院」である。美容院には、「客にしゃべりかけること」が、美容師のアイデンティティーかのように、やおら、話しかけてくる。やれ「今日はどこか行くんですか」「このあたりにお住まいなんですか」「それどこで買ったんですか」

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空前の洗髪ブーム

2017年、あるWebサービスが業界を賑わした。それは「美容院ナビ」というサービスで、各種の美容院のレビューサイトだった。いわば、食べログの美容院版と考えてもらえばいい。

従来のHotpepper ビューティと異なるのは、徹底したレビュー機能にあった。

そのサイトでは、美容院のみならず、スタイリストの評価まで投稿された。また多面的な評価が行われ、「清潔さ」「立地」「待ち時間」「スペースの幅」な

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いつもの土曜日と同じく、10時に準備を始める。ランニング用のスニーカーを履き、Nikeのキャップを被る。たまにサングラスを忘れてしまうが、今日は忘れない。部屋にいても日差しの強さがわかるからだ。楽天で買った2000円のサングラスをかける。そして、iPhoneから繋いだイヤホンからMIKAの軽快なメロディが流れ出す。マンションのエントランスからエイヤと飛び出る。

まだまだ日差しは強い。ゆっくり走っ

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