パッヘルベルの「カノンとジーグ」を巡って(演奏動画聴き比べ)
【Video : Performances of "Canon and Gigue in D major" by J. Pachelbel / My favourites (and not so ones also...)】
今回も、おかしな枕から話が始まります(^_^;)。
ちょっとYouTube の動画の森(?)をうろついていましたら、なかなかとんでもない動画を見つけてしまいました。
「トルコ行進曲」琉球音階で弾いてみたら、沖縄行進曲になった
見事な編曲・演奏で、これは無条件に脱帽です。
そして、姉妹動画として出て来たのがこちら。
「カノン」琉球音階で弾いてみたら、沖縄の風が吹いてきた
これは言うほど(音楽形式の)「カノン」してないと思いますが(注1)、でも、雰囲気は素敵ですね。
と、こんないきさつから、また「パッヘルベルのカノン」を聴きたい気になった……という(回りくどい)話の流れです(苦笑)。
さて、今日びのクラシック音楽好きの人は、大抵一回ぐらい「カノン」(=「パッヘルベルのカノン」)大好きな時期を経てたりするんじゃないでしょうか?
私もご多分に漏れず、その一人です。
何度も何度も、この曲の甘い調べに耳を傾けちゃったりするのですよね。
でも、後になって、もう少しクラシック音楽に詳しくなってくると。
その辺でよく聞くオーケストラ演奏は本当はあまり「オーセンティック」(正統派)ではなく、室内楽的に弾かれるのが本来の姿っぽいとか。
そもそも「カノン」単独の曲ではなく「カノンとジーグ」だとか。
いろいろ「余計な知恵」がついてきます(苦笑)。
そうやって「知恵の実」を食べてしまった今の自分には。
例えばパイヤール的な(注2)ムーディーな演奏はもうキツくて。
出来れば正統派バロックスタイルの、比較的キビキビとした演奏で聴きたいと思ってしまうんですが。
かつて、オーケストラ演奏の「カノン」の甘い響きにうっとりしていた頃の方が、本当の意味で「音楽を楽しんでいた」のではないか、などと、少し寂しい気持ちになったりもします。
* * * * *
でも、いまさらそんなことを言ってもしょうがありません。
というわけで、ここからは(例によって)自分の心覚えを兼ねて、お気に入りの(それほどでもないものもありますが)「カノン(とジーグ)」の動画を貼っつけていこう、というわけです。
さて、自分のイチオシはこれ。
(怒られることもないだろうと、この記事のトップ画像はこの動画のキャプチャを使うことにしました。)
演奏もいいんですが、奏者のみなさんの雰囲気が、私にとって「ツボ」です。
1st ヴァイオリンの人がサンタ帽をかぶっているから、クリスマスコンサートか何かの収録でしょうか。
何にせよ、全体的にすごく楽しそうな雰囲気があって。
恥ずかしながら、その昔「耳をすませば」の古楽器演奏シーンにくらっと来た「古傷(?)」が軽く疼きます(^_^;)。
【次のものは後で見つけた動画ですが、ここに差し挟みます。】
ハンス・シュミット=イッセルシュテット/北ドイツ放送交響楽団による1954年の録音。1954年時点で、もうこういう(後のパイヤール盤的な)ロマンティックな演奏スタイルが出来上がっていたのですね。カノンとジーグを3部構成的に演奏しているのも興味深いです。
個人的に言うと、ジーグをこれだけ美しく演奏した録音には他に出会ったことがなく、その点が特に印象的。
この演奏も「ジーグ」入りです。ただ、「キビキビ」好みの自分にとっても、ここまで快速だと、また好みのゾーンを外れてしまうかも。
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※以下の演奏はすべて「ジーグ」をカットしています。
方向性を変えて。普通の(?)音楽ファンが「これよ、これ」とお考えになるだろうタイプの名演。サムネがイマイチ、再生数もそれほどではないのが気になりますが、アカウントの様子を見る限り、「ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団」の公式動画で間違いないと思います。
(どういうわけか、こんな感じの英国オケの公式動画が他にも見つかります。後出。)
古楽系に戻って。これも大変いい演奏だと思います。とても正統派っぽい雰囲気なだけに、「ジーグ」が入っていないのは残念。
古楽系でもこういうゆったり目のテンポですと「よく耳にする」演奏とも近くて、あまり違和感がないと思う人も多いかも。
速弾き系。ここまでいけばむしろ「妙技に目を見張る」系の愉しみがあります。
こちらは演奏家が音にアレンジを入れるスタイルで、ちょっと違和感がありますが、作曲当時の演奏習慣的には、むしろこれが「正しい」のか?
こちらもまずまずな演奏かと。
ここからは改めてモダンオケを。こちらは「甘め」と「正統派」の中間的演奏(?)。私個人の好みとはちょっと違うのですが、参考までに。
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の公式動画(のはず)。上の「ロンドン・フィル」の演奏には一歩譲るように思いますが、まずまずな感じかと。
シンガポール交響楽団のクリスマスコンサート。スタイル的には古いかもですが、こういうスローテンポでロマンチックな演奏が一番好きという人は多いのでは。と言っても、音作りは古楽器での演奏スタイルに寄せている気もします。
ロンドン交響楽団の公式動画(のはず)。これもスローテンポ派。それは良いのですが、途中から金管楽器が入ってきて、しかも、結構派手に音を外したり……。こういうのもあるという参考演奏として。
最後にNHKの「名曲アルバム」。やはり背景動画は一見の価値あり。
他に、公式かどうかよく分からない演奏もいくつかヒットしたのですが、さしあたりは外しておきます。
※これ以外にも、何か良い演奏を見つけたら、適宜追加するかもしれません。
(注1)……「カノン」とは要するに「輪唱」の形式で、「パッヘルベルのカノン」も、その形式で作った曲だからこう呼ばれるわけです。
ちなみに、筆者は昔、MIDIの音楽データ入力というのに手を出したことがありまして(モノにはなりませんでしたが)。
いわゆる「音職人」さんが公開していた「パッヘルベルのカノン」のデータ説明を見たらこんなことが書かれていたのを覚えています(もちろんウロ覚え)。
「途中でちょっとぐらいインチキをしてるんじゃないかと思ったら、最後まで本当にきっちりしたカノンだった。なので、一声部のデータを作ったら、あとはそのデータをそのまま他の声部にコピペするだけで、あらかた曲データが出来上がってしまった」
……と。
Youtubeにちょうど1st ヴァイオリンのパートだけという教則ビデオがありましたから、参考用に貼っておきます。動画後半は別の曲になるのですが、どうせなら編集で3声部に重ねたものを掲載してくれてたらなぁ、などと図々しい無い物ねだりをしたくなります(^_^;)。それぐらい良い教材。
(興味のある方は複数台のスマホでタイミングを図って同時再生とかすると面白いかもしれません。)
(注2)……パイヤールによるレコードがヒットして、半ば忘れられていた「パッヘルベルのカノン」が一気に大人気クラシック曲になった、というのは、音楽ファンには割と知られた話です。今の目からは「ムーディーな演奏すぎる」という批判もありますが……。
なお、このパイヤール盤、もう著作権切れかなと思ったら1968年のリリースらしく、(以前の記事でちょっと触れましたので、細かく書きませんが)少なくとも日本ではまだ著作権が生きているようです。
もし仮に検索で引っかかるとしたら……すでに著作権切れになっている国のデータとかかも。