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インディゴのアラベスク…?

山下達郎さんのベストアルバムをはじめて買った。

このアルバム、何年も前に地元のGEOでレンタルしていたので、手元に音源はあった。だけど、あまりにも聴き倒していたので、ちゃんとお金を落とそうと思った。

「音の職人」の異名をもつ達郎さんは、音質へのこだわりが尋常じゃない。ポータブルプレーヤーに安物のイヤホンで聴いても、ハイレゾみたいな奥行きが楽しめる。

ハイレゾ聴いたことないけど。

だから、このたびあえてCDで買っておいて、いつかよさげのオーディオを手に入れたときに味わいたいと思った。

達郎さんはその職人気質からか、自らのコンサート会場についても強いこだわりがあるという。
そのため、達郎さんがコンサートにくるホールは、音質にお墨付きをいただいたも同然なのだ。

詳しいことはわからないけど、とにかく曲が作りこまれすぎて、いろんな楽器が後ろで鳴っているのが聞こえる。

そのおかげで、もう演奏不可能、再現不可能だと本人自らさじを投げてしまった曲もあるくらい。

達郎さんの最大の特徴といえば、歌声だ。
いちど聴いたら忘れないその声は、非常に聴き取りやすい。
デビューから40年を超えると、声質が別人のように変わるミュージシャンも多いなか、声質が比較的安定していると言っていい。
そのため、昔の音源でもいまの曲と同じような気持ちで受け取ることができる。

それはもしかすると、わたしに音楽的な知識がないから古さに気がつかないだけなのかもしれないけど。

自分の声を多重録音してバックコーラスにしてしまう、いわゆる「一人ア・カペラ」という職人芸を追求し続けているのもこのひと。同じ歌声のバックコーラスが一斉に歌いだすのは、少し不気味…もとい、とても奥行きがある。

その特徴的な歌声によるコーラスは、ユーミンの初期の楽曲でも採用されている。「ルージュの伝言」の間奏やアウトロをよく聴くと、達郎さんの声がはっきり認識できる。

要するにこのひと、自分で自分をボカロにしてしまえるわけだ。

つまり、米津玄師さんとかKing Gnuがいまどきやりそうなことを45年以上前から淡々とこなしているのだ。

そして、達郎さんの詞は非常に独特だ。

やたらとオシャンティなカタカナ語の並びや、発音の良い英語詞の数々。シティポップというジャンルでくくられるだけあって、都市の孤独や不安、そしてせわしなさを歌った曲が多い。

その雰囲気からは、渋谷から松濤、代官山にいるかのような気分を味わえる。

この圧倒的なシティ感、アーバン感。
かっこいいんだわ…。


さて、ファン以外からしたら意外かもだけど、達郎さんの曲は夏をテーマにしたものが非常に多い。
単なるクリスマスシーズンに印税を稼ぎまくるおじさんじゃないのだ。

その曲のひとつが、「踊ろよ、フィッシュ」。

わたしはこの曲が昔から好きなんだけども、ただひとつ気になって夜しか眠れない歌詞がある。

今日も インディゴの ほら アラベスク
さあ もっと優しくなれ 心を写し出す程

インディゴのほらアラベスク…?

インディゴはまだわかるとしても、アラベスクってなんだっけ…?

ググってみよう。

weblio辞書によると、

インディゴ:藍色の染料、 または藍の青い成分を抽出したもの。インディゴ 、またはインジゴとも呼ぶ。

転じて、藍色じたいのことをインディゴと呼ぶようになったとか。

アラベスク:アラビア風の装飾模様。文字・蔓草(つるくさ)・幾何学図形などを図案化したもの。唐草模様。

なるほど、だとしても「インディゴのほらアラベスク」ってなんだ…?


ここで連想したのは、「青の都」の異名をもつ、ウズベキスタンの都市サマルカンド。

旅行サイトの写真をもとにすると、おおよそこんなところらしい。

出典:「トラベルブック」https://www.travelbook.co.jp/topic/14092

キレイだな…。行きたい。

達郎さんがサマルカンドを知っているかどうかはわからない。だけど、歌詞ひとつで異国の都市を連想させてくれるなんて、とても幸せだ。


その真意について、どこかの媒体で達郎さんが発言されてるかもしれない。とくに深い意味はなかったりして。

でも、こんなにわけわかんない歌詞なのに伝わる圧倒的さわやかさ…。すばらしい。

なんでもかんでも、わかることがすべてじゃないってことだ。きっとそう。

たくさんのことを連想させてくれる、答えのない歌詞ほど良い歌詞だと、わたしは思う。

とにかく、達郎さんの音楽はいろいろなんかもうすごいところだらけだ。
しかしながら、音質を確保するためか配信サービスには一切対応していない。
そのため、音源に接するにはまずYouTubeの違法動画頼みになっている状態だ。

CDを大切にする達郎さんらしいとも言えるが、このご時世で手軽にひとに薦められないのがなんとももどかしい。

おすすめ曲のリンクを貼ることはできないけど、とりあえず昨年YouTubeに公開されたMVを貼っておきます…。

山下達郎さんと米津玄師さんの共通点ってけっこうあるねって、かれこれ何年も提唱しているんだけど、誰にもわかってもらえない。

これはまた別の機会にでも書こう。


この夏はぜひ、山下達郎さんの音楽とともに。

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