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2024.5.2 たりないふたり


 今日は仕事中にお客様から忘れ物の問い合わせがきた。問い合わせ内容に該当するものが見つかって引き取りの方法を聞いて、ご自宅に届けることになったため住所を確認することに。

私「ご住所とお名前とご連絡先をお願いします」

お客様「岐阜県」

私「岐阜県」

お客様「奈良市」

私「奈良市」

お客様「サンクチュアリー」

私「(!?)」

え、そんなことある‥?住所に突然の英単語‥?
おかしいとは思ったのよ自分でも。でも否定するのも心苦しくて、とりあえず聞こえた単語を繰り返してみることにした。

私「さ‥サンクチュアリー‥?」

お客様「えっwwwwいやwwwww三口有(さんくちあり)wwwwwですwwwwwwww」

 過呼吸を起こすほど大爆笑させてしまった。隣に座ってた後輩ちゃんも受話器から漏れ出た会話が全部聞こえていたらしく、肩を震わせていて。両脇が崩れるほど大爆笑している。そしてわたしは生粋のゲラである。全然無理なのである。笑いの渦に我慢できなくて、3人で笑うだけの謎の時間が過ぎた。もうね、何度も何度も立て直そうと整えたり我慢するんだけど、全然立て直せないの。ピンと張り詰めた糸が、喋り出すだけでいとも簡単に切れんの。張り詰めるとは?

 ひとしきり爆笑し終えて、もはや絆すら生まれたんじゃないかと錯覚するほどだった。言葉なんかなくたって、きっとみんな同じ気持ちだ。そう自信を持って言い切れるほどだった。
 でも大切なお客様の私物を送り間違えるわけにはいかないから、住所の間違いがないか再度確認するという最大にして最恐の任務が待ち構えていた。


『避けたい』


 わたしの心が絶えずそう呟いていたけれど、こんな笑うだけの時間に通話料を払わせておいて住所を間違えるなんて、絶対に許されないのだ。今年度に入って初めて、ゴミみたいな小さなわたしの女優スイッチを入れた。

私「では、住所の確認をさせていただきます‥」

お客様「wwwwwwwwwwww(過呼吸)」

私「wwwwwwwwwwww(過呼吸)」

後輩「wwwwwwwwwwww(過呼吸)」

ゴミと呼ぶのも烏滸がましいくらい、女優スイッチなんてそもそもなかった。
もはやわたしたち、ソウルメイトじゃね?

いやーまぢで寛大なお客様でよかった‥

※住所はスーパーフェイクです。

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