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初めてのリサイタル。


2歳9ヶ月。なかなかの腕前だと思う。


僕が、初めて音楽に触れたのは、確か6歳くらいの時。

地元のピアノ教室は、確か二階にあって、窓越しに陸橋をかけあがる車がぼんやり見えた。


家には1台のピアノ。

グランドピアノでは無いけれど、黒くてカッコいいYAMAHA製。両親はきっと「音楽のできる子」に育って欲しかったことだろう。

ピカピカの楽器は、やがてインテリアに成り下がり、やがて従兄弟の家に渡った。それから、もう二十年近く経つ。



子供が一歳になる頃、ピアノを買った。

鍵盤を押すとアンパンマンのキャラクターが飛び上がる、愉快な玩具。8つしかない白鍵が、音を聴いてケラケラ笑う子供の歯みたいで、何だかおかしい。


白鍵だけで弾ける曲。実はそれなりにある。

「おかあさんといっしょ」で流れてくる曲。オクターブで我慢すればアンパンマンマーチも弾けないことはない。

小学校のリコーダーの授業で習ったルパン三世。黒鍵が2つ足りないけど、白鍵で代用してもそれらしい仕上がりだ。



今では、すっかり僕の玩具。楽しいから良いのだけど。

なんて思っていた先日。



「ド~。レ~。ミ~。」


伸びやかな声と電子音。少しずれた音程で、確かに弾いている。


「シシシシ~。」


軽快に飛び出すジャムおじさん。そういえば、最近物まねにはまっていたっけ。


親の気も知らないでケラケラ笑う息子。つられてこちらも笑ってしまう。


「子供が大きくなったら、本物のピアノを買おうかな。」ふと、そんなことを考えてしまう。

案外、両親の動機もそんなものだったのかもしれない。そう考えると、また笑えてきた。


僕の歯は、彼の目にどう写っていただろうか。

何かのお役に立ちましたなら幸いです。気が向きましたら、一杯の缶コーヒー代を。(let's nemutai 覚まし…!)