初めての恋愛の思い出

1.はじめに

私は、「恋」と「恋愛」は別物だと勝手に思っている。「恋」は一方的に好きになることで、「恋愛」は好きかどうかはともかく彼氏彼女として、いや同性どうしの可能性もあるけれど、恋愛関係を築くことだと思っている。

今から話すのは、「初めての恋愛」の話であり、決して「初恋」の話ではない。

身バレはしたくないので、隠し味程度に嘘を交えるけれど、これから書くことの90%以上は本当に起こったことだ。

割と赤裸々に書くつもりなので、苦手な自覚がある方はここでブラウザバックすることをおすすめする。



2.出会い

私と彼が出会ったのは、2年半と少し前くらい、秋の終わりだか冬の初めだか、そんな時期だったと思う。
同じゲームで同じくらいの実力、さらに同学年だったこともあって彼とはすぐに仲良くなった。
最初はゲームの話とか世間話とかが多かったけれど、気付けばTwitterのDMで個人的な話をするようになっていった。

初めて顔を合わせたのは、年が明けて1月だか2月だか、それくらいだった気がする。
日付は全く思い出せないのだけど、その時着ていった服と、ネットの知り合いと会うのがほぼ初めてだったことと、女子校育ちで男性に耐性がなかった故か緊張して全く話せなかったことだけは覚えている。

付き合った後に聞いたのだが、彼も会う相手がまさか女の子だなんて思っていなかったのでめちゃくちゃ緊張したそうだ。そういえばほとんど言葉を交わさなかった気もする。



3.初めての彼氏

時は流れて7月。私と彼は中3だった。相変わらず、TwitterのDMで毎日やり取りをしていた私たち。
彼から、「実は好きだったんだけど...付き合うの、ダメかな?」みたいな感じで告白をされた。

私は他に好きな相手がいなかった上に彼は異性の友人で1番仲が良かったので、断る理由もないと思ってとりあえず付き合ってみることにした。

彼の住む街までは在来線を1回乗り換えて1時間くらいだった。
中高生からすればそれでも十分遠距離なのかもしれないが、ちょうど中間地点くらいに大きい街があったこと、私は学校まで電車通学で1時間程度の乗車には慣れていたことを考えると、近くこそないが全然遠くはなかった。

私は彼と月に1度か2度くらい会っていた。

制服着てデートとかはしなかったけど、カラオケやゲーセンに行ったり、映画を見たり、ショッピングモールをふらふらしたり、その辺の中高生カップルがしていることの大半はした、と思う。


4.深まる関係

最初はなんとなく話が合うな〜くらいに思っていただけだったが、季節が流れるのと同じように私たちは深みにはまっていった。

実は私と付き合った裏で、彼は友人関係に悩んでいた。細かい話は割愛するが、彼の友人に社会人なのに彼にいつも奢らさせたり夜中に呼び出したりするような人がいて、彼は縁を切りたいと思っていたらしい。そのことを私に話してくれた。

「その友達に嫌なことも色々付き合わされて、そのせいで自分は高校受験も妥協に妥協を重ねてしまって、でもその人は軽い知的障害を持っていて、それで前にも友達に離れられて辛い思いをしたって言っていた、自分は縁を切りたいし切った方が自分のためになるんだけど相手のことを考えるとやっぱり迷ってしまう」

大方こんな感じだろうか。

私はその話を聞いて、とても優しくてその優しさ故にたくさん傷ついてきた人なのかな、と彼のことを少し理解できたのだと思う。


それから、私と彼は色々な話をした。

家族のこと、学校のこと、人間関係のこと、昔あったこと。

自分の人生はなんて酷いんだろう、と思っていたけれど、彼の方がよっぽど酷いことを知った。寄り添っていたいと思った。


当時の私たちの感情は、恋とかもう通り越していて、愛だとか依存だとか、そういう言葉の方が似合っていたように思える。

辛かったことは1番に話したし、泣きながら電話をかけたこともあった気がする。LINEの履歴にはたくさんの「好き」「愛してる」があった。


中高生で付き合った相手が、結婚相手、生涯のパートナーになる人なんてそうそういないだろう。それに、私は、もしこのまま大学生になって社会人になっても彼とお付き合いを続けても、結婚は親に反対されるだろうと思っていた。

私は多分、社会一般から見ればそこそこ良い環境で育ったと思う。父も母も大学を出ているし、祖父は医者をやっていて今でも私や弟たちの学費の援助をしてくれている。

気に入らないところもあるが、両親、祖父母のことは尊敬している。


学歴が全てではないと思っているけれど、やはり分かりやすい肩書きであることに変わりはない。

彼の親は離婚していて、大学を出ていなかった。彼が色々あった末に入ったのは定時制高校で、「名前書ければ入れるからね」とか「どうせ高卒で工場勤めだよ」とか自虐的に語っていたことを覚えている。

正直、返す言葉が見つからなかった。

心の底でなんとなく、そういう人は違う世界の人間だと、ずっと思っていたのだ。


話が合わなくてギャップを感じたこともあった。

例えば数学が難しすぎると嘆いた時、夕飯までに帰らないと怒られるからと言った時。


彼のことは人間として本当に好きだった。遊びじゃない、本気の愛だった。

でも、その反面、お互いの家族や将来のことを考えたらいつか終わらせなければならない関係だと薄々気付いていた。


でも、当時色々悩んでいた私は、彼の優しさに、彼がくれる愛に甘えていた。



辛いことがあって彼の前で泣いてしまった時、涙を堪えきれなかった私の頭を撫でてくれた手の優しさは、別れた今も忘れられないでいる。


大好きだった。書いていて涙が流れてくるあたり、今でも好きなのかもしれない。


5.結末

始まりがあるものには、どんな形であれ終わりが必ずある。


その日は、急にやってきた。


3日前くらいにはデートに出かけて、季節柄浮かれた街を2人で歩いて、水族館に行ってお土産にペアストラップを買ったばかりだった。


彼と私にはそこそこの人数共通の友人がいて、15人くらいのLINEグループに入っていた。

彼はそこで周りとトラブルを起こした。


前にも1度、彼は同じようなことをしていた。
私はその時、「次はこんなことしちゃダメだよ」と言った。


でも、止められなかった。

彼は周りに構って欲しくて気を引くようなことをすることが以前から度々あって、それがエスカレートしたものだった。


私のせいだ。彼は私といても幸せになれない。悪いのは止められなかった、支えきれなかった私だ。


そう思って、私は彼に別れを告げた。


もちろん彼のことだから、何回もメッセージを送ってきた。

「本当にごめん」「反省してるから」「もう一度やり直させて」


でも、私の心はもう決まっていた。

彼のLINEとTwitterをブロックして、「もう関わらない」と明確な意思を表した。


それでも、彼は人づてに私にメッセージを送ってきた。仲介してくれた人には申し訳ないような、ありがたいような、そんな気持ちだった。


「今更そんなことを言われても困る。私たちはもう、ただの知り合いだよ」

その返信をして、私たちのやり取りは完全に終わった。




どちらにしろ、大学受験を控えた私がいつまでも彼と甘ったるい関係を築いている訳にはいかなかった。

あの日のことがなくても、どこかできっと私たちは終わっていた。


しばらくしてからLINEとTwitterのブロックは解除し、残った履歴も全部消した。

消す前に見たら「好き」のメッセージだけで400件以上あった。


簡単に忘れられるわけがなくて当然だ。


彼は決して顔が良い訳でも頭が良い訳でもなかったし、ぶっちゃけて言えばタイプではなかった。

でも、優しくて不器用で、そんなところが好きだった。


別れて半年以上が経ち、彼の記憶はだんだん薄れていくけれど、首筋に顔をうずめた時のあの優しい香りは今でも覚えているし、元気かなと気になって時々彼のTwitterアカウント(今はフォロワーですらないけれど)を見に行ってしまう。



認めたくないけれど、まだ好きなのだ、多分。

でも、私が好きだったのはきっと「あの時の彼」で、「今の彼」じゃない。





もう彼とは話すこともないし会うこともないだろう。

でも、彼以上に誰かを愛せる日が来るのかはまだ分からないままでいる。


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