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SDGs×ビジネス(66):IPCC 6th と日本の二酸化炭素排出

みなさんこんにちは!

私はエネルギー企業で事業開発をする中で、エネルギー×SDGs×ブランディングについて考えています。

このnoteは、読んでいただく読者の皆様と共に学び、知識の整理と共有を目的に継続していきます。

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今回は、前回に引き続きIPCC 6thについて見ていくとともに、パリ協定との関わり、世界における二酸化炭素排出量との観点で考えていきましょう!


◇前回のまとめ◇

・温暖化は人間の影響によるもの(断定)
・ここ数十年の平均気温の上昇が異常=前例のないこと
・2040年ごろには1.5度の気温上昇が起こる

IPCC1.5℃特別報告書に基づけば・・・

・気候変動問題を抑えるには平均気温上昇を1.5℃に抑える必要がある
・2030年〜2050年にかけて平均気温上昇が1.5℃に到達する可能性が高い
・温暖化を1.5℃に抑制するには2050年頃の二酸化炭素排出量実質0が必要

⇒温暖化による気候変動問題は予想以上のスピードで進行している。2050年ごろ世界における二酸化炭素排出量0に、さらにはネガティブエミッション(吸収量が排出量を上回り、排出がマイナスになる)にする必要がある。ということが分かります。

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この水色のラインが、2100年において1.5℃の気温上昇で抑える二酸化炭素排出のシナリオになります。今回は、この水色のシナリオが世界で要請されていくという可能性のお話をしていきます。また、IPCC 6次報告書原文では二酸化炭素の他に、温室効果ガス、エーロゾルなど他の物質についても言及されているので、詳細については原文を参照ください。


カーボンバジェット

ここでカーボンバジェットについて学んでいきます。カーボンバジェットは、目標温度以内に気温上昇を抑えるために残されている、残りの二酸化炭素排出量のことです。この考え方には、累積の二酸化炭素排出量と地球の平均気温上昇が比例しているという事実が背景にあります。

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上のグラフで横軸が累積の二酸化炭素排出量、縦軸が気温上昇を示しています。グレーで示されている範囲が今までに排出してきた二酸化炭素量と気温上昇の関係を示しています。水色以降の部分が上の図で示されている各シナリオに対応するもので、累積の排出量が少なければ少ないほど気温上昇が抑えられることが分かるかと思います。

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上の段が、1850年から2019年にかけての温度上昇1.07℃であること、1850年から2019年にかけての累積二酸化炭素排出量2,390Gtであることを示しています。下段がカーボンバジェットを示しており、左の列から、目標とする気温上昇残りの気温上昇温暖化を抑える可能性における残存二酸化炭素排出量となります。温暖化を50%の確率で1.5℃に抑えるには、残りの二酸化炭素排出量は500Gtという見方になります。


パリ協定において日本が目指す温室効果ガス削減目標

NDCとは、自国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution)のことで、パリ協定において各国が温室効果ガスの排出削減目標をNDCとして5年ごとに提出・更新する義務があります。日本はNDCの草案に当たるINDC(国が決定する貢献案)を2015年に提出しました。INDCはパリ協定の成立をもってNDCとなります。

INDCの内容は、「国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比-26%(2005年度比-25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)にすること」というものです。

その後、2020年に更新した内容として、「2030年度に2013年度比-26%(2005年度比-25.4%)の水準にする削減目標を確実に達成することを目指す。また、この水準にとどまることなく、中期・長期の両面で温室効果ガスのさらなる削減目標を追求していく」というものです。


日本の温室効果ガス排出の現状

「温室効果ガスインベントリ報告書2021年」によると、日本の総排出量(LULUCF分野を除く。間接CO2を含む)は12億1100万tであり、準排出量(総排出量ー吸収量)は11億6100万tとなっています。

ここでLULUCF分野とは、土地利用・土地利用変化および林業における温室効果ガスの排出・吸収を指しており、日本においては国土の多くを占める森林により2019年においては5000万tの温室効果ガスを吸収しています。


カーボンバジェットの項目にて、残りの排出量が500Gtという記述をしました。ここでGt(ギガトン)と、日本における排出量で用いられている億トンについて整理しておきましょう。

1Gt(ギガトン)=10億トンであり、世界の残りの排出量500Gt(ギガトン)=5000億トンということになります。

これを見ると、日本の2019年の排出量およそ12億トンというのが大きなインパクトを持つ数字であることがお分かりいただけるかと思います。


IEAによる2021年の見通し

IEA(国際エネルギー機関)は2021年4月に、今年のエネルギー動向をまとめた「Global Energy Review 2021」を発表しました。

その中で、2021年の二酸化炭素の排出量について、パンデミックの流行から経済回復の兆しを受け世界におけるエネルギー需要の増加を背景に、増加すると見ています。2020年は31.5GtCO2(315億t)だったものが、2021年は33.0GtCO2(330億t)の見通しとなり、1.5GtCO2(15億t=日本1年間の総排出量よりも多い量)の増加となると予想しています。

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こう見ると、世界におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量はその増加スピード自体は低下してきたものの、まだまだ増加傾向にあることが分かります。現在の世界における二酸化炭素排出量の3分の2は新興国・途上国が占めており、先進国においては経済回復に伴う排出量の増大も、これまでの削減幅の中に収まると予想されます。

とはいえ、残り500Gtとも言える残りの排出枠のうち、約7%に当たる33Gtwを2021年に排出してしまい、来年以降急激に減少するとはいえない状況です。それどころか、この排出量増加の流れが継続することさえ予測できます。そうなると1.5度の平均気温上昇に抑えるための500Gtの枠はすぐになくなってしまうことさえ予測できます。

パリ協定において各国が二酸化炭素排出削減目標を掲げていても、その野心度には大きく差があります。これまでの排出の大部分を占める先進国と、現在排出を伴いながら成長する途上国との間で差があるのは当然かと思います。

ただ、ともに地球上の国家として地球全体での二酸化炭素排出0を目指していくならば、先進国は早々にネガティブエミッションを達成することが必要になってきます。


今回はIPCC 6thを受け、世界の二酸化炭素排出の現状と日本の貢献について見てきました。次回は、日本のエネルギー政策などより具体的な部分との関わりを見ていきたいと思います。


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