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「マグロの惑星」発見譚 第三章「無い袖は自分で作る」

半袖のシャツ

マインクラフトやRaftのようなサバイバルゲームはかなり前から作りたいと考えていた。
死というリスクが当たり前のように存在する世界。プレイヤーには常に最適なものを選択する判断力や、死の危険から遠ざかるための発想力が求められ、死なないためにありとあらゆる努力や工夫をし、生きていくために冒険や挑戦を行う。そんなスリルやロマンがたっぷりつまった世界を自分で創ることが楽しくないはずがない。そう考えていた。

こういった世界を表現しようとすると、それまで作っていた2Dの世界ではどうしても限界がある。横だけではなく、前や後ろにも広い世界が必要だ。
そこで僕は人生初の3Dゲームに挑戦してみることにした。

...のだが。
3Dゲームはおろか3Dのモデルもなにもかも、そもそも3Dという世界に触れたことすらない自分の実力では、有名どころのゲームようなクオリティの高いモデルを作ることは不可能だ。イラストであれば今まででもそれなりに描いてきたのでどうにかなるが、3Dモデルとなると勝手が違う。
コードはかけるので中身を作ることは簡単だが、結局動かすものがお粗末な物体だとテンションが上がらないし、モチベーションも続かない。

メディアが発達した今では3Dモデルなど探せば無料でも有料でもいくらでもあるのは当然知っている。しかし、「頭がマグロで首から下が人間」「四足歩行のマグロ」といったとち狂った3Dモデルを一体だれが用意しているだろうか。
無ければ自分で作る。しかし僕には理想通りのものを作るだけの技術がない。発想に技術が追い付かないというのは実に悲しいものだ。

上着を着るという発想

どんな絶望的な状況でも、打開策は少なからず存在する。
3Dゲームを創りたいけど3Dに関する知識はない。今から習得するにしても人に見せれるレベルにしようと思うと時間が足りない。まさに「ない袖は振れぬ」という状況であった。

しかし、それでも解決策は確かに存在していた。今着ている服に袖が無いなら、今の状態にこだわらず、服屋にでも行って袖のある上着を着ればいいし、布を買って袖を付け足してもいい。これを読んでいるあなたが今抱えている悩みも、実はそういった発想の変え方で解決できる問題だったりするかもしれない。
そして僕は一つの解決策を見出した。

そう、3Dドットである。

ビッグバン

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3Dドットというのは、字の通りドット調の物体を3D世界に起こしたものだ。カクカクした物体や世界、という認識でかまわない。

3Dドットの利点。それは、

・解像度が低いため、モデリングがしやすい
・解像度が低いわりに表現が伝わりやすくよさげな雰囲気が作りやすい
いびつな形になりづらく、きれいなモデルが作りやすい
・モデル一つ当たりの容量が軽い
・今の時代でも割とウケやすいビジュアル

といった点である。
3Dモデルをデザインするにあたっては、「MagicaVoxel」というソフトがある。このソフトは3Dドットに特化したモデリングソフトで、モデリング自体も絵を描くようにブロックを置いていくだけなので直感的に使いやすい。しかも無料である。
このソフトを利用して作られた作品も多いので、暇があればTwitterなどで「#magicavoxel」などで様々な作品を見てみるのも良いだろう。

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解像度が低いので表現の難易度や限界などデメリットは当然存在するが、ドット絵そのものの難易度はそこまで高くないし、今まで2Dゲームを制作し、イラストなどを描いたりもしてきた僕にとってそんなことは問題ではない。
少しのセンスさえあればだれでもきれいなモデルが簡単に制作でき、表現がしやすいので解像度が低くても見た目のクオリティ自体は低いものになりづらく、モデリングもしやすい。
僕が抱えている問題をすべて解決できるこの3Dドットという選択はまさに絶望的な状況を覆す究極の一手だった。

こうして、3Dドット調のマグロたちが闊歩する独特な雰囲気の世界が、ここに誕生したわけである。


さて、今回の話もここまで。
次からはいよいよ製作段階に入ります。

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