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「マグロの惑星」発見譚 第二章「男子高校生、新惑星を発見」

実力主義社会

Nemesisは悩んでいた。やることがないのである。

僕が通っている高校は普通科コースプログラミングコースに分かれており、僕はゲームが作りたいので当然プログラミングコースに所属している。

プログラミングコース(以下プロクラ)はプログラミングに特化したコースであるが、別に先生が前に立って講義などを行ったりするのは極めて稀なことである。では何をするのかというと、朝は普通に登校し、終業時間まで自由に作業を行い、放課後に友達とゲームをして、下校時間になったら帰る。生徒個人の意思で特別授業などに参加したりもできるが、基本はこれだけである。そう、行って作業して帰って来るだけなのだ。

これだけだと別にいかなくてもいいんじゃないかという人もいるかもしれない。しかし、プロクラには技術書や3Dプリンター、電子工作のための電子部品や貸し出しモニターなどの機材がそろっており、生徒はこれを使うことができる。プログラミングや電子工作など、そういった分野に関して学びやすい環境がそろっているのである。

しかし、上にも書いたとおり、先生はわからないところがあればサポートしてくれるだけで前に立って講義などを行ったりはしない。つまり、生徒自身が主体的に学ぶ必要がある。

加えて、プロクラは実力主義の世界である。実績を尊ぶ世界であるので、いくら努力をしようとも、実績を出せなければあまりいい評価はもらえない。それゆえに、プロクラはとても厳しい世界であるのだ。
僕はそれまでも大会などに応募してはいたが、結果は惨敗。あまりいい結果を出せず、ただだらだらと過ごしてしまっていた。

そんなある日、一枚のチラシを見つける。それは「日本ゲーム大賞 U-18部門」のチラシだった。この大会は、18歳以下を対象としたゲーム制作のコンテストで、かなり規模の大きい大会である。18歳以下が対象であるため、挑戦できるのはたった一回きり。どんな結果になろうとも、その一回で終わり。しかし、やることのなかった僕が、こんな面白そうなものに興味を示さないわけがない。

よし、出てみるか

人生でたった一度の挑戦が、そんな軽いノリで始まったのである。

新惑星を発見、そこはマグロが支配する星

さて、挑戦を決めたはいいものの、何をするかは決めていない。本当に勢いだけで挑戦することを決めたのだ。

ここはやはり十八番のシューティングゲームだろうか?いや、さすがにマンネリ化してきている。では、ウケやすいホラーゲームがいいか?いやだめだ、シリアスなゲームが自分にはほとんど向いていないことは今までの経験で分かっているはずだ。では一体、どうすれば...

「...うん?」

そんな悩める男子高校生は、ある一枚の写真を目にする。

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突然何の画像を見せるのだ、と困惑する人も多かろう。しかし、僕はありのままのことを話している。

さて、この意味不明な謎の画像、これが一体何なのかというと、「ハロウィンの日にマグロのコスプレをした自分の画像」である。
もう一度言おう、「ハロウィンの日にマグロのコスプレをした自分の画像」である。

マグロのコスプレ、と言ってもただのマグロのコスプレではない。頭だけがマグロで、首から下はカジュアルな服装の人間という自分で説明していてもよくわからない謎のコスプレである。

もっと言ってしまえば、そもそもなぜマグロなのかもわからない。別にマグロが好きなわけではない。どちらかといえば鯛やフグの方が好きだ。おそらくは、完全にウケを狙って文字と見た目のインパクトだけで採用したのだろうが、周りから「狂人」と呼ばれるような男の考えることなど、予想できないししたくもない。

しかし、そんな狂気にまみれたこの画像が、この時の僕にはまるで砂漠のオアシスのように見えた。

これをゲームに落とし込めば面白いんじゃないだろうか...

発想力には自信がある。一つ思いつけばそこからどんどん連鎖するので、何か一つ「これだ!」というものを思いついてしまえば、あとは深く考えなくてもいい感じにアイデアがまとまってしまう。長年、ゲームを作ってきた末に会得した便利な能力である。

「マグロか、これを一体どう使おうか...
そうだ、前から一度サバイバルゲームを作ってみたいと思っていたんだ...
では、マグロが登場するサバイバルゲームを作ろう!
しかし、ただマグロが登場するのでは面白くないな...
じゃあ、マグロに足や翼をはやしてみよう。ついでに首も長くして、恐ろしいかぎ爪もつけて...
でも現実にこんな生物いないよな...地球にこんな奴らがいたら恐ろしすぎるし...
ならば、他の惑星の生命体ということにしよう!大体のことはそれで説明できるようになる!
恐ろしいマグロが支配する星から脱出するサバイバルゲーム”...よし、面白そうなのができたぞう!」

とまあ、こんな感じに。
そうして僕は、自らの頭の中の宇宙に、ユニークで恐ろしい新惑星を発見したのであった。

今回はここまで。続きは第三章で。

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