雀魂キャラに学ぶ馬将(令和麻雀)入門その3

陽菜「あれ?馬将は役が全部で100個あるって聞いたけど、絶対できない役があるぞ?」

杏樹「ええ。単に四色目の数牌を採用するだけでは、自(他)同刻と、四門の筋順(刻)を構成することが出来ません。馬将の制作過程で最初に考えたのが、『字牌の代わりに四色目の数牌を導入する』ことで、そこから前回紹介した得点体系に行き着きました。しかしそのままでは採用役がちょうど100種になりません。何とかして100種とも採用できるようにしようとして考えたのが、『赤5筒や青5筒があるように、四色の数牌を更に赤青黄緑で区別する』というものでした。」

陽菜「それで馬将札は1つ1つが違う札になったんだね。」

杏樹「雀魂でも赤ドラが採用されていますが、雀荘では青ドラや緑ドラや金ドラなるものが採用される場合があります。同種牌同士を色分けするアイデアはここから来ました。しかし徒にドラを増やしては得点がインフレするばかりです。確かに麻雀コミュニティなどではよく『インフレルールの方が楽しい』という意見を聞きますが、誤解なさらないで下さい。楽しい理由はインフレルールだからではなく、ドラによって得点に多様な幅が生まれるからです。インフレも度が過ぎれば何を和了しても高打点になり、ただ和了回数を競うだけのゲームになってしまいます。」

陽菜「日本の麻雀にリーチとドラがあるのって、得点に幅を持たせるためだったんだね。」

杏樹「ええ。役や符計算、積み棒なんかもそうですね。四麻以上にインフレ度が高い三麻では、他にも様々な得点に幅を持たせる要素が存在します。本題からずれるので省略しますが、最近の三麻愛好家によって遊ばれているルールの中にはこうした要素が非常に多く、初心者が全容を把握するのは難しいものも存在しています。」

陽菜「ベテランは新しいルールを追加したがるけど、そうすると初めて遊ぶ人が覚えるのが難しくなっちゃうんだね。」

杏樹「そういうことです。ですから初めての人でも覚えやすいようにルールを簡単にしようという動きも生まれるのですが、最初にお話しましたように、そうすると熟練者にとっても面白いゲームとはなかなかなりません。麻雀を嗜むようになった人が、わざわざドンジャラで遊んだりしないのと同じことです。」

陽菜「陽菜も小学校でみんな知っているトランプ遊びしたり、お泊まり会でドンジャラ大会やったりするけど、やっぱり麻雀で遊びたいな!」

杏樹「更に言えば、麻雀は初心者の方でも、麻雀以外の娯楽活動では初心者とは限りません。むしろこれまで麻雀に時間を割いてこなかったのですから、麻雀愛好家よりよほど他分野に対して造詣が深い人が多いのではないでしょうか。」

陽菜「陽菜は麻雀はまだまだ初心者だけど、アイスバーのことだったら誰よりも知ってる自信があるよ!」

杏樹「全世界7億人の麻雀ファンというのは、いささか数字が大袈裟(7億人の内訳は中国3億人、日本3000万人となっているが、日本の麻雀人口3000万人というのは最も麻雀人口が多かった頃の記録である)な気がしますが、麻雀が世界で最も遊ばれているテーブルゲームの一つであることは間違いないでしょう。全世界70億人の潜在的麻雀ファンとは、これだけ世界中で愛されてきた麻雀を敢えて趣味として選んでこなかった人達なのです。初心者向け、子供向けのコンテンツは必要ですが、それらが既存の麻雀愛好家にとって楽しめない『子供騙し』なコンテンツであってはなりません。」

陽菜「…今日の杏樹お姉ちゃんはいつにも増してお話が長いな〜。」

杏樹「KR-976は客観的な事実を伝えたつもりですが、少し熱くなってしまいましたか。本題に入りましょう。馬将は完成門(馬)の円の色、赤青黄緑の組み合わせによって、門を別の色や数のものとみなして役をつけることが出来るようになります。『出来る』と言いましたが、馬将は麻雀同様『高点法』を採用しているので、実際には『色や数を変えて高得点にできる場合はそうするのが義務』となります。」

陽菜「トランプのジョーカーみたいなものかな?」

杏樹「そうですね。麻雀にもマイティ、百搭と呼ばれるオールマイティ牌がありますが、門を作る段階でオールマイティ扱いの札が複数あるとややこしいことになるので、馬将の特別門は和了が成立した後で他の門としてみなせるだけのものとします。特別門には馬将規則の第28条から第31条までの4種類があります。規則には見たままの名前を掲載しましたが、折角なので別名として、『光馬』と名付けてみました。」

陽菜「雀魂でドラが光る演出があるみたいに、価値あるメンツだから光馬なんだね」

一光(一色順)

例:青1空青2空青3空

杏樹「青=空、赤=日、黄=月、緑=星。一色で構成される順のことです。最も得点が高くなる順として数字を入れ替えることができます。10以上の数字にもなるので、空の三筋順が完成しているところに空の一光があれば、10空11空12空として四筋順になります。」

陽菜「これで四筋順ができるようになったけど、1枚ずつしかないから完成させるのは難しそうだ」

杏樹「そうですね。64通りの組み合わせのうちのたった1通りです。」

二光(二色順)

例:赤1空赤2空赤3空

杏樹「一色順以外で円の色が同じ、二色で構成される順ことです。円の色が青なら空、赤なら日、黄なら月、緑なら星とすることで得点が高くなるならそのように入れ替えます。例えば123の日の一色三同順が完成しているところに赤1空赤2空赤3空の二光があれば一色四同順になります。」

陽菜「軽庫お姉さんが麻将で一番難しいと言っていた一色四同順も馬将だったらアガれるかも?」

杏樹「64通りのうちの3通りなので、それでも難しいことには変わらないですね。」

三光(四色刻)

例:赤1空黄1空緑1空

杏樹「円の色が四角の色とは別の三色、四色で構成される刻のことです。空日月星のいずれかの色にすることで得点が高くなるならそのように入れ替えます。例えば1日の刻があるところに赤1空黄1空緑1空の三光があれば日の二同刻になります。」

陽菜「これで自(他)同刻ができるようになったね!」

杏樹「順の組み合わせは64通りでしたが刻は4通り。そのうちの1通りなので比較的完成させやすいですね。馬将は同列の順役と刻役で5点しか差がないので順役が優遇されているように見えますが、これによってバランスを取っているとも言えます。」

四光(四枚刻)

例:青1空赤1空黄1空緑1空

杏樹「麻雀で言うところの槓子です。最も得点が高くなる刻として数字を入れ替えることができます。10以上の数字にもなるので、空の三筋刻(258)が完成しているところに空の四光があれば11空の刻として四筋刻になります。」

陽菜「これで100個の役全部可能になったよ。陽菜馬将でも100個の役全部アガってみたいな!」

杏樹「最高点の四自同刻でも、手札が三光と四光ばかりなら完成させられる組み合わせが多数存在するので、天和や四槓子がある日本麻雀よりも全役コンプリートは難しくないと思われます。ただし最高点の100点でも三色同順(35点)の3倍以下なので、和了できても日本麻雀の役満ほどは決定打になりません。」

陽菜「高い手をアガっても最後まで油断できないんだね」

杏樹「役を1点〜100点までの100種類としたのは、極力覚えやすくするためというのが当初の狙いでしたが、得点に幅を持たせることでゲームを面白くする役割も果たしているのではないでしょうか。得点が1点刻みなので、逆転手を狙った手作りも面白くなると考えられます。」

陽菜「役の他に得点要素は無いんだね」

杏樹「そうです。得点は全て役固有の点数だけで決まります。日本麻雀の点数計算は無駄に複雑と言われることもありますが、KR-976は得点に幅を持たせるという観点から、複雑ではあっても無駄ではないと考えます。複雑さを排除したうえでゲームを面白くするためには、従来とは全く異なる得点体系の構築、更には麻雀牌が数牌27種108枚、字牌7種28枚であるという固定観念からの脱却が必要と考えました。」

陽菜「リーチにドラ、符計算に積み棒、雀魂には無いけど焼き鳥とかチップとかアリス。馬将ではそのような得点要素の代わりに、『光馬』があるんだね。」

杏樹「その通りです。和了前から特定の牌として使えるマイティ、百搭に関しては、麻雀が34種136枚で遊ばれるよりずっと前から存在するのですが、光馬に相当するルールは類似のゲームを探しても見当たりません。斬新であればよいというものでもありませんが、馬将特有のルールとして紹介させていただきました。」


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