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SUNABACO東京イベントで感じた、人生を乱すことの価値

6月の東京にしては、異常に涼しいんじゃないか。

東京は広いから一括りにするなと言われそうだが、東京駅の正面でそう感じているのだから文句を言われる筋合いはないだろう。


6月8日午前10時の東京駅は、すでに多くの人たちで溢れている。僕は、皇居へ続く道の途中で木陰に腰を下ろした。

日差しは強めだが、日陰に入ると涼しい風が通り過ぎていく。汗ばんだ体が乾いていくのがわかる。湿度がほとんど感じられない穏やかな風は、首元を絹のような滑らかさで通り過ぎていく。

皇居ランをする一団だろうか、20人ほどのランナーがコーチにいろいろ教わりながらウォーミングアップをしている。色とりどりのシューズが揺れている。

東京駅を背景に何かの撮影をしている人がいる。雲ひとつない優しい陽光の中、モデルらしき人の水色のワンピースが光って見える。世界との境界線が、光で曖昧になっている。

僕はハンカチで乾き切らない汗を押さえながら、そんな景色から現実味を引き出そうとしていた。


今日は土曜日で、昨日は金曜。僕は、有給を使って前日から東京に来ていた。

東京は近くない。とても日帰りできる距離じゃないから、完全に旅行になる。

旅行ではあるが、家族の了承は必要がない。僕は、時間さえあれば好きなところに行けるようになっている。

もちろん費用はかかるが、その分副業で稼いでいるから問題ない。子ども達ももう大きくなったから、お父さんが家にいなくとも平気だ。そして、働き方改革によって有給を好きに使えるようになった。

自分の意思で、好きなところに行ける。

僕は、そんな生活を夢見ていた。

そして、それはほぼ叶っている。

前日から休みをとり、こうして東京駅にいる。それが何よりの証拠で、現実だ。

「じゃあ、これからどうしたらいいんだろう?」

そんな声が聞こえてくる。もちろん、そう言ったのはランナーでも撮影モデルでもない。自分だ。

どこまでも理想的な朝。

東京の真ん中で迎える朝。

でも、どこかに現実を置き忘れてきた居心地の悪さがある。


ランナー達はまだ準備運動をしている。モデルとカメラマンは、日陰で何やら話している。

僕は、ぼんやりと東京駅を眺めている。

僕はいま、真ん中にいる。

どちらにも傾いていない、真ん中だ。

恐ろしく、居心地が悪くなってくる。

それは、昨日のイベントのせいだ。


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2024年6月7日に開催されるSUNABACOのイベントに、最初は行くつもりはなかった。

入場者数の上限がかなり少なかったので、実質的に関係者である僕は遠慮しようと決めていたのだ。その前に出張続きでもあったので、体力的な不安もあった。

でも、途中で枠を増やすとのアナウンスがあり、会いたい人たちもエントリーするのを見て我慢ができなくなったのだ。

SUNABACOの共同代表であるなかまこさんにDMすると、快諾していただいた。本当にありがたい。

僕は単身、東京へ行くことになった。



イベントは、なかまこさんの基調講演「人口減少社会の中、勝ち残る会社になるため今日からできること」が第一部。そして第二部は国内大企業に勤務するKitaさんのトークセッションとなっている。

会場は満員御礼。初めての方、顔馴染みの方、会いたかった方など、今回も多くの出会いをいただくことができた。

なかまこさんの基調講演は、相変わらず心に響いてくる。

ただの事例や数字の紹介ではなく、それらファクトを総合的にみた場合、われわれが何をすべきかを明確に提示してくれる。これが劇的に刺さる。

皆、それなりに知識や見識はあると思う。僕にだってある。

でも、それらを体系的に消化できているかといえばそうではない。それぞれの知識は単体のままで活用可能な状態になっておらず、脳の片隅に積み上がっているのではないだろうか?

なかまこさんの講演は、それらを連結していき、たどるべき道を指し示してくれる。これが刺さらないわけがない。

そして、SUNABACOはそれを講座として提供している。


僕は昨年、SUNABACOのアントレプレナー講座を受講したのだが、これは衝撃的な体験だった。

これまで蓄積したものが、綺麗に整列していく感覚。

知識の使い方がわかる。というよりつなげ方がわかる。

これまで得た知識がぜんぜん活用できていなかったという喪失感がやってきた後、世界を包んでいた薄い膜が取れたような感覚に襲われる。

花嫁のヴェールを上げ、その美しさにやっと触れられたような、そんな快感に包まれる。

アラフィフにして、これまで感じたことのない喜びに触れることができた。それがSUNABACOの講座の恐ろしさだ。


なかまこさんの講演を聴きながら、講座を思い出す。

皆、真剣に聞き入っている。だれも注意を緩めない。

皆、何かのヴェールが上がりつつあるのを感じている。

僕も、改めて覚醒していくのを感じる。


そして、今の自分が不安になっていく。


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第二部は、JTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー:伝統的な日本の大企業)に勤務されるKitaさんとなかまこさんのトークセッションだ。

KitaさんはSUNABACOの卒業生で、DX人材育成講座を2回受けており、また同僚や部下も講座を受けていたそうだ。

彼は、優秀な会社員だ。それは僕も知っている。

JTCでありながら、同世代では最速で出世をしてきており、社内では出世頭と言われるなど、間違いなく優秀な人物であると言える。

そんな彼が、不安に襲われる。

順風満帆の人生において、何が不安だというのか。


会社は同質化を求める。それを上手にやれたやつが出世していくのはある意味当然の結果だ。

会社の意向に沿った人物が昇進する。そうでなければ会社は無秩序状態に陥るだろう。同質化の強要は、組織が組織であるための前提条件だ。

同質的な組織において評価されるのは、「お前は正しく代替可能な人物になってくれている」と言われているのと同じだ。

そして、優秀な人が社内で上がっていこうと思うと、より代替可能な人物になるべく努力することになる。

これは仕方のないことだ。でも、優秀だからこそ、この状況に耐えられなくなる。

自分の能力を、均質化するために使用していく。

若いうちは仕事に夢中で気が付かないかもしれないが、ある程度仕事に慣れ、会社を俯瞰的に見るようになると本質が見えてきてしまう。

自分であることの意味を失い続けるには、会社員人生は長すぎる。迷いがでてくるのは当然だ。

彼は、そんな中SUNABACOのDX人材育成講座に参加した。そこで、ある経験をする。


SUNABACOのDX人材育成講座では、最後に卒業制作がある。3〜4名でチームを組み、協力して一つの成果物を生み出すのだ。

卒業制作の中で、彼はチームメンバーからとても褒められたのだそうだ。それが嬉しかった。

当たり前に聞こえるが、同質化を求める組織において仕事の成果はそこまで褒められない。やって当たり前とは言わないが、やるのが普通という空気がある。それは僕もよくわかる。

彼はメンバーから感謝されることで、自分の価値を客観的に感じることができた。

彼は、擬似的に自分を会社から剥がし、市場に投下したのだ。


彼は安定の中にあった。

円盤の中心点を支えて安定している状態。それまでの彼は、綺麗に回転はしていたかもしれないが、その場所で止まったままだ。

しかし、SUNABACOを経験し、中心軸がズレるのを感じた。

これまでの回転とは違う感覚が彼を包んだ。

乱れた回転は、徐々にその振れ幅を拡大していく。

そして、彼は転職活動を始めることになる。


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彼は転職活動を開始し、1社から内定をもらった。それも、大都市の成長企業だ。

しかも条件はかなりいい。年収も上がるし、責任あるポジションを準備するとのことで、断る理由など見当たらない。

しかし、彼は内定を辞退した。

今の会社に残ることにしたのだ。それはなぜか?

彼は実質的に転職に成功することにより、自分の人生の主導権を得たのだ。

いや、そもそも持っていたはずの自己決定権を、本当に自分のものとしたと言った方が正しい。

自分はもういつでも転職できる。それは客観的に証明された。なら、別に転職しなくたっていい。

彼に生まれたのは、自分で自分の人生を変えられるという確信だ。

そして、自己決定権こそが、彼が本当に欲しかったものだ。転職の過程は、その手段でしかない。


おそらく、彼の世界は変わってしまったのだろう。まるでヴェールが上がったように。

そして、転職はしなかったとはいえ、彼の中心点はズレたままのはずだ。これまでの回転とは違い、ブレが生じ続けている。

ブレは次第に大きくなり、彼をここではない場所へ運んでいくだろう。その証拠に、会いたい人が増え会いにいくようになったと彼自身が語っている。

彼は、転職活動により自分の価値を知ったことで、自分の人生の中心をズラした。

どこからも等距離である状態を捨てた。

それは、意図的に偏りを持つ選択だ。

いつまでも中心にいては、どこにもいくことができない。どこからも等距離であることは、どこからも遠いと同じことだ。

彼は、どこかに近づこうとしている。中心に戻ったと思っているかもしれないが、それは違う。

一度中心からズレることの感覚を覚えると、もう戻ることはできない。自分の意思で動くことは、生の実感を強烈に認識させ、虜にしていく。

彼は優秀な男だ。そんな男が、自分の市場価値を認識してしまったら、中心点でじっとしているわけがない。

軸をズラし、あえて不安定にして、新たな点に近づいていく。

中心点からズレるほどに、円盤は傾き、角度が上がっていく。いつまでもしがみついていられるはずはない。


彼は、きっと走り出すだろう。それは間違いない。

彼自身の欲求に加えて、彼は一人ではないからだ。

もう、社外に多くの友人がいる。SUNABACOを介し、均質化から程遠い世界で生きる同志たちとつながってしまった。

SUNABACOは、彼の世界をズラし、世界のヴェールを上げた。

それは、生まれ変わるのと何が違うというのだろう。


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日本の中心の東京駅。そこで感じる穏やかな6月の朝。

どこまでも盤石に見える世界の中で、僕が感じたものは迷いだった。

意図的に中心軸をズラし、回転を乱し続けてきた4年間。その結果、かつてとは違う点にたどり着いている。

そこは自分が望んだ点ではあった。しかし、どうやらこの点を中心として綺麗な回転が始まってしまっている。

かつて求めた点が、あらたな中心点となる。そこにあるのは、新たな停滞だ。

回転を乱し、新たなステージに入るKitaさんを見て、自分の回転が綺麗になっているのを感じた。

「俺は、何をやっているんだろう」

東京駅を見ながら、そんなことをつぶやいた。


また、回転を乱す日々を選択しよう。その楽しさは、もう知っている。




12時24分、東京発はくたか563号富山行き

騒がしいホームを抜け、新幹線に乗り込む。

疲れていたのか、席に座ったらすぐに寝てしまった。

寝ている間に、僕は日本の中心から徐々に離れていった。

《終》







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